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2021年11月14日03:56

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南大西洋の絶海の孤島に棲み19世紀に絶滅したオオカミ、先史ヤーガン族に舟に乗せられて孤島に連れて行かれたか、フォークランドオオカミ物語(後編)

 研究者たちはフォークランド諸島の3つの島を調査した(地図=赤い星印が調査地)。
 西部のニュー島の各地で多くの「骨の山」も新しく発見した(下の写真の左Aはフォークランド諸島のニュー島の「骨の山」の位置と後述の尖頭器発見地。右下Cの写真で、赤い矢印の先が泥炭に埋もれた「骨の山」)。オタリアとその獲物であるペンギンの骨が同じ場所にあり、オタリアの胃は空だった。

◎先史時代の尖頭石器
 これらの点は、「骨の山」が動物たちの自然死で出来たものではなく、ヨーロッパ人が到来する前にこの地に滞在した人々が動物を食べ、残骸を捨てた可能性が極めて高い。
 実際、骨の山のいくつかは、フォークランド諸島産の珪岩で作られた先史時代の尖頭器と同じ場所で見つかった。
 この尖頭器(前掲の写真のBの写真)は、1979年に見つかったもので、年代は分からなかったが、明らかに17世紀に島に入植したヨーロッパ人のものではない。彼らは石器などは使わず、立派な鉄器など金属器を装備していたからだ。

◎連れてきたのはヤーガン族か
 またフォークランドオオカミ(想像図)の残された骨の同位体分析から、これまでの想像を裏付けるように海棲哺乳類を主食としていたことも分かった。これは、彼らを飼育していたヒトが自分たちの食べた後の残骸を与えたものと考えられる。
 では、誰がフォークランドオオカミを連れてきたのか。
 フォークランド諸島に近い南米南端のフエゴ諸島には、ダーウィンも注目したヤーガン族が住んでいた(写真=1883年撮影)。見つかっている珪岩製尖頭器は、ヤーガン族の使っていたものと同じだ。しかも骨の山を構成するオタリアとイワトビペンギンの骨は、フエゴ諸島のヤーガン族の重要な食物だった。
 また近年、フエゴ諸島でヤーガン族が使っていたものと同じ木製のカヌーも発見されており、ヤーガン族渡来説を裏付けている。

◎海洋狩猟採集民のヤーガン族
 フエゴ諸島では2000年以上前からヒトと野生のイヌ科動物が密接な関係にあったことを示す考古学的証拠もある。フォークランドオオカミと思われる動物がヒトの埋葬場所に見られるようになり、人間社会に溶け込んでいたことを示唆している。
 しかし新しい証拠からも、フォークランド諸島に渡来したヒトは一時的にしか滞在せず、定住はしなかったことを示している。
 この推測は、ヤーガン族の生態ともよく一致する。ヤーガン族は海洋狩猟採集民であり、カヌーの製作技術に優れ、少なくとも1万年前からフエゴ諸島の各地を移動しながら暮らしていて、現在もそこに住み続けている(19年6月9日付日記:「亜南極の南米最南端の島に1万年前にヒトがいた! ナヴァリノ島の奇跡」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201906090000/を参照)。

◎ヒトに飼育され、絶海の孤島で細々と生き長らえたオオカミ
 なおミトコンドリアDNAの分析から、フォークランドオオカミは近縁な動物から1万6000年前頃に分岐したと見られる。その頃は、また南米南端に人類は来ていない。
 しかしほどなくやって来たヤーガン族の祖先が、フォークランドオオカミと出会い、彼らを手懐けて家畜にし、フォークランドオオカミは命を長らえたのかもしれない。彼らは人なつこく、知性も優れていた。1833年にビーグル号でフォークランド諸島を訪れたダーウィンが残した記録によると、船乗りが枕の下に肉を隠して寝ていたところ、その肉をちゃっかり盗んでいったことがあるという。
 そしてその子孫の一部が先史時代ヤーガン族に連れられてフォークランド諸島に渡り、そこで主人たちがいなくなってもなお生き続けた。南米本土では、フォークランドオオカミはとうに絶滅していたにもかかわらず、だ。
 それも、その数百年後に姿を現したヨーロッパ人植民者と遭遇するまでだった。
 孤島に生命を繋いだフォークランドオオカミの運命の酷薄さに涙、である。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202111140000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「窒息寸前、香港の民主主義:立法会から民主派議員が一掃され、ゴム印議会に;裁判所も『中国』化へ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202011140000/

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