千葉県民なので、関西スーパーというスーパーマーケットは知らなかった。少なくとも、この夏までは。
◎エイチ・ツー・オーリテイリングが傘下に置く計画にオーケーの介入
その関西スーパー(写真)が一躍、株式市場の注目を集めたのは、阪急百貨店などを傘下に置くエイチ・ツー・オーリテイリングが傘下の食品スーパーとの経営統合をもちかける一方、関西スーパーに7.69%出資する首都圏に展開するスーパーのオーケーストア(非上場)がTOBに踏み切る方針を表明したからだ。
オーケーは、TOB表明に当たって、関西スーパー株を1株当たり2250円で購入するとした。この価格は、それまでの関西スーパーの株価の2倍近かった。オーケーがTOB価格を2250円にしたのは、1992年2月につけた同社の上場来高値と同じだった。株主に誰1人として損失させないというオーケー側の配慮だ。
それからは、同社株はストップ高を含めて連日の棒上げとなった。9月8日には前週末より約900円も高い2213円の年初来高値をつけた。
つまりTOB価格にさや寄せする形で、多くの投資家が群がり、買いを集めたのだ。
◎臨時株主総会での議案否決で一気に売り
ところが関西スーパーが10月29日に開いた臨時株主総会(写真)で、エイチ・ツー・オーリテイリング傘下に入る議案が僅差で可決され、オーケーによる買収案は否決されてしまった。
つまりオーケーの提示したTOB価格は、無意味になったのだ。
それからはオーケーによるTOBを当て込んで買った向きの売りが殺到した。翌週月曜日の11月1日は殺到する売りで場中に根が付かず、ストップ安比例配分となった。
それでも、大量の売り注文が残り、翌日2日も大きく下げた。
結局、元の価格に近い1220円台に戻った。
◎わずか0.01%の僅差
TOBを当て込んで買い進めた向きは大きな損失を被ったが、オーケーのTOBには、エイチ・ツー・オーリテイリング傘下の食品スーパーとの経営統合が否決されれば、という条件が付いていたから、それは仕方がない。大損を被った投資家は、「まるで『やるやる詐欺』にあったようなもの」とぼやいたというが、思惑が外れただけでまさに自己責任である。
1つ、注目したいのは、この事実上のTOB否決になった差である。
臨時株主総会で議案の可決には、重要事項なので3分の2以上の議決権の賛成が必要だった。賛成票は66.68%で、反対と棄権は33.32%だった。つまり3分の2以上の66.67%のわずか0.01%の僅差であった。
◎運命を分けたたった議決権46個、株数で4600株
議決権数にすると、わずか46個、4600株だ。個人投資家でも、1人でこれくらいは持つ人はけっこういる。だから個人投資家が数人でも反対票を投じれば議案は否決され、オーケーとのTOB案が蘇ったことになる。
そうなったらまたも暴騰していた。
暴騰と暴落、この天と地の差を分けたのが、たった4600株だったとは。
◎異例の逆転劇にオーケー側が差し止め訴訟
ところで、この一件には、後があった。
1度は引き下がったオーケー側が、関西スーパーとエイチ・ツー・オーリテイリング系スーパー2社との株式交換の差し止めの仮処分を神戸地裁に求めたのだ。
4600株を分けた株主が、初めは棄権と判定されていて(棄権は、賛成でないから、否決と同じ扱いになる)、65.71%の賛成比率で3分の2の可決用件に達せず、いったん議案が否決されたものが、その後に賛成にカウントし直され、前記のような66.68%で議案可決となったことに、オーケーが異議を申し立てたのだ。
いずれにしろ僅差が生んだ騒動である。
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、
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昨年の今日の日記:「日米株式市場、驚異の株高:マーケットは武漢肺炎からの解放を期待」
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