ノーベル平和賞を受賞した指導者の下で、血なまぐさい内戦が激化している。
5年前に訪れたエチオピアである。
2日、エチオピア政府は、全土に非常事態を宣言した。内戦が激化し、首都アディスアベバにまで戦火が迫りそうになっているからだ。
◎ティグレ族主体のTPLFが反乱
内戦は、昨年11月に始まった。連立政権を構成していたティグレ人民解放戦線(TPLF)が政権を追われ、中央政府との内戦が勃発した。TPLFは、北部ティグレ州に拠点を置くティグレ族主体の有力武装組織で、かつてメンギスツ共産政権を倒した有力組織だ。政党でもあり、武装組織でもある。
その時はアビ・アハメド首相率いる中央政府は、3週間あまりでティグレ州都のメケレを制圧し、いったんは内戦は終結したかに見えた(地図)。
しかしTPLFは、メンギスツ共産政権を倒した歴戦の組織だ。州都を追われても地方に逃げ、勢力を立て直して今年6月、州都メケレを奪還した。
◎南隣のアムハラ州にまでTPLF進出
中央政府も負けじとメケレの空爆を繰り返すなどしているが(写真=エチオピア軍の空爆で煙が上がるメケレ市街地、10月20日)、TPLFの勢いは止まらず、10月からはティグレ州を越えて南隣のアムハラ州に攻め込み、同州東部のコンボルチャやデセを制圧した。首都アディスアベバまで400キロの地点にまで迫っている。
この内戦で、数十万の難民が出ており、戦火の拡大でさらに難民が増える恐れがある。
◎アビ首相、ノーベル平和賞授賞の矢先に内戦
エチオピアは、地下資源に乏しい内陸の農業国だが、近年、繊維産業などを中心に年率10%の高成長を達成し、「アフリカの成功事例」の1つにも挙げられていた。長年、隣国のエリトリアとの紛争に悩まされていたが、それもアビ首相が解決し、その功績で同首相は2019年のノーベル平和賞を授賞している。
その矢先の内戦勃発である。
エチオピアは多部族の寄り集まったモザイク国家で、TPLFとの内戦は国家統一の難しさを露呈したとも言える。
◎貧しい国なのに内戦とは
ティグレ州都のメケレには、僕はダナキル砂漠のダロール火山などの見学に2晩宿泊した。ティグレ州農村の貧しい暮らしと電気も通じていない2部制の学校も観た(写真=上から朝のメケレ市街地。馬車が走り、トタン囲いの貧民の小屋もあった。下は電気も無い2部制の学校。2016年1月)。
学校にも行かない10歳くらいの女児が頭にバケツを載せて、近くの涸れ川の水たまりに水汲みに行く姿も見た。
こうした国が離陸していくには相当の歳月と努力が必要だと認識したのだが、それが内戦ですべてご破算になりそうだ。
なおWHOの事務局長として武漢肺炎で名を売ったテドロスもTPLF出身だ(写真=TPLFの集会。前列右から3人目がテドロス)。
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