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2021年02月07日11:03

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軍旗はためく下に

「軍旗はためく下に」という映画を見た。
監督は深作欣二、脚本は新藤兼人、出演は丹波哲郎、左幸子ほか、となっている。
深作欣二といえば東映やくざ映画(仁義なき戦いなど)で知られているが、こんな作品があったとは知らなかった。
しかも制作は独立プロで配給は東宝となっている。
すさまじい反戦映画だ。深作欣二は原作を読んでどうしても映画化したくなり自腹で映画化権を買い、独立プロで制作した。

内容は丹波哲郎(陸軍軍曹富樫勝男)の妻の左幸子(サキエ)が夫の遺族年金を受けられないため、不服申立書を毎年厚生省に提出するが26年間すべて却下されている。理由は敵前逃亡で軍法会議にかけられ処刑されたということになっている。軍法会議で処刑された者は援護法の対象外ということである。
妻は夫が敵前逃亡するなんて考えられないので厚生省にでかけその証拠を聞き出し事実を知ろうとするが、「戦没者連名簿」にそう書かれているということだけで、他の証拠書類はすべて失われている。しかし厚生省で富樫軍曹が居た部隊の引揚者に問い合わせの手紙を出したところ4名の返事がなかった。”奥さんが直接その4名にお会いになればなにかわかるかもしれませんよ”といわれ、その名簿をもらってくる。サキエはその4人をたずねる。だんだん戦争末期のすさまじい状態がわかってくる。

非常に衝撃的な映画で、とても簡単なあらすじというわけにはいかない。
ここに少し詳しいあらすじがある。
 https://ameblo.jp/eigajikou/entry-11910678271.html

妻のサキエが想像することもできなかった夫の戦争を追体験することで見ている我々観客もいやおうなくその場に立ち会わされる。
この映画の制作年度が1972年という”もはや戦後ではない”と言われだした時代というのも考えさせられる。
最後には事の真相が分かってくるが、サキエが出会った人物たちは最初は真実を話さない。が、うその話を含めて戦争の残酷さがあぶりだされる。

最後のサキエの言葉が印象的だ。
  映画の冒頭の方で厚生省の役人に、
  「私だって天皇陛下と一緒に父ちゃんに菊の花あげたいですよ」
  と涙ながらに語ったサキエでしたが、
  夫の死の真相を知ったラストでは、
  「父ちゃん、あんたやっぱり、
  天皇陛下に花をあげて貰うわけにはいかねぇだね。
  もっとも、何をされたところであんたはうかばれもしねぇだね」
  と、東京の人混みの中を歩きながら、
  もう涙もなく独白します。
 (上記あらすじより。)
 
国のために戦争に行き、国に裏切られ殺される、そんな理不尽さを”天皇陛下”という言葉で精一杯表している。

私はこの映画を見て数年前見た「野火」と「ゆきゆきて神軍」を思い出した。そのことについて書いたことがある。
野火 
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1956546134&owner_id=39904538
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1948320595&owner_id=39904538
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1948063173&owner_id=39904538
行きゆきて神軍
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1972922117&owner_id=39904538


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