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2020年11月26日02:56

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不純度100パーセントの感傷

不純度100パーセントの感傷


帚(ほうき)を逆さまにして 部屋のすみに立たせてある
文化の日はとうに過ぎた
今年は 父が死んだ 母との 音信も途絶えた

来週は十二月だ
淋しくなって 珈琲を淹れた

濃いめに淹れたのを啜ったら
街をそぼ降る涙のなかを歩んでいた
ずぶ濡れになって 靴下までぐしょぐしょに濡れた

部屋のテーブルの前に写真が立ててある
うしろ姿のうつくしい制服の少女が
コスモス畑の径(こみち)を歩んでゆくのだ

自分の前に人生が立ちはだかっている
いつかかならず人は死ぬ その宿命を幻日のように感じた

自分は人間の気持ちがわからない
涙にずぶ濡れになって 靴下までぐしょぐしょに濡れた

生まれる前 自分はどこにいたろう
おれをきらっている母親の子宮の中だ

帚が逆さまになって 部屋のすみに立っている
そうかおまえも胎のなかにいたいか

不純度百パーセントの感傷は
人間(ぶた)の涙のようにむなしい。


指田悠志
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