ベーリンジア陸橋を経てシベリアから南北アメリカ大陸へ人類が拡散したのがいつだったのかは、北米考古学界では議論が尽きない課題だが、このほどメキシコ中北部高原のチキウイテ洞窟で、3万年前を遡る人類の痕跡を発見したという報告が、メキシコの考古学者らにより英科学誌『ネイチャー』7月22日号で報告された。
◎石器包含層最下層は3.3〜3.1万年前
荒れた険しい山岳に開口するチキウイテ洞窟(写真=洞窟内で調査するチームと洞窟外側の景観)に、ヒトの痕跡がうかがえてから約10年の発掘調査の結果、人類居住層とされたのは厚み3メートルの堆積層。この堆積層は、最終氷河期最寒冷期(LGM:2.65万〜1.9万年前)を含み、最下層は3.3〜3.1万年前に達した。
調査団は、堆積層内から50以上の放射性炭素年代とルミネッセンス年代値を得た。また堆積層から、約1900点の石器を発掘した。
石器は、緑がかった石灰岩の結晶から出来ている尖頭器様のものもあり(写真)、石材は洞窟内に存在しないという。つまり人類が外で石器を製作し、洞窟内に持ち込んだと見られるという。
◎獣骨見つからず、石器も2万年間にほとんど様式変化なし
この最古の年代が正しければ、北米考古学界で公認されている南米チリのモンテヴェルデ遺跡の1.45万年前をさらに1万年以上も遡る人類の存在の証拠となるが、考古学界では異論も出ている。
まず洞窟内からヒトが食料にしたと思われる獣骨がほとんど見つからない。また石器とされるものも、最下層から最上層まで約2万年間もほとんど様式の変化が見られない。2万年という長い時間軸では、人類は石器を洗練化させることが当然考えられ、変化の見られないのはおかしい、とも言える。洞窟内では崩落などの作用で石が自然に割られ、石器に似たものも出来やすい。
また調査団は環境DNAを調べ、ヒトがいたことを確認しているが、それは現代人の汗などによる汚染の可能性もあるという指摘もある。
◎LGMの直前にも人類の移住か
また同一号に掲載されたイギリス、オックスフォード大のグループは、上記の発掘調査とは全く別に、北米とベーリンジア周辺の考古遺跡42個所から得られた年代値をベイズ推定年代モデリング法で解析し、小規模ではあるもののLGM(2.65〜1.9万年前)の直前、その間、その直後にすでに人類が北米大陸に定着していたことを明らかにした。
しかしより大規模な拡散は、その後のグリーンランド亜間氷期1(ベーリング−アレレード亜間氷期:1.47万〜1.27万年前)になされたことも示された。
◎ベーリング−アレレード亜間氷期に人類の急拡散と大型動物群の絶滅
この頃、クロヴィス文化など文化伝統が始まり、この時期は北米で絶滅した18属の大型動物相の最後の年代とも重なっていた(写真=北米最大の絶滅動物のコロンビアマンモス)。
この結果から、北米各地への人類の大規模かつ急激な拡大が大型陸生哺乳類の絶滅に重要な要因であったことを示唆しているとしている。
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