mixiユーザー(id:411965)

2020年04月22日02:14

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「黒武御神火御殿」本

『黒武御神火御殿』
<ストーリー>
 おちかに変わって三島屋で変わり百物語を聞くことになった三島屋の次男富次郎。彼の元に不思議な事件が語られる・・・
<コメント>
 おちかが嫁に行って変わって百物語を聞くことになった富次郎のキャラクターが段々はっきりしてきた。つめり人は良いけれども少々優柔不断という絵に描いたようなお坊ちゃん。前のシリーズがおちかのトラウマを克服するためのものだとしたら、新しいシリーズは富次郎が成長するためのものだろうか。
 しかし、つくづく“時代劇”というジャンルは本当に便利なものだと思う。虚実をまぜこぜにしてリアリティのあるフィクションを成立させることが出来るのだ。特に宮部みゆきの恐ろしいまでに江戸時代を調べつくした書き込みによってまるで本当にあったかのような臨場感が伝わってくる。
 そんな中で第一話「泣きぼくろ」はぞっとする怪談話で第二話「姑の墓」第三話「同行二人」はどちらかというと奇談に近いだろうか。タイプでいうと第一話、第二話が『トワイライトゾーン』で、第三話が『世にも不思議な物語』(『ワンステップビヨンド』)という感じ。
 で、第一話から第三話までは短編でロッド・サーリングとジョン・ニューランドかな、と思っていたら、いきなり最後の第四話「黒武御神火御殿」は長めの中篇でこれは完全にスティーブン・キング。いわくつきの半纏が持ち込まれた三島屋で昔博打打ちだった男が語った物語は恐怖の幽霊武家屋敷に誘い込まれた六人の男女を次々と怪奇現象が襲うまさに恐怖談。常識の通用しない謎の武家屋敷の異次元さも凄いけれども、屋敷を逃げようとした一行に襲い掛かるのがまさにキング的な異形のモンスター。人間の目をした鯨であるとか、どうみてもハーピーのような鳥であるとか普通の時代小説には絶対に出てこないようなモンスターが次々と現れる様はまさにキングのホラー。そして1人死ぬごとに引き戸ががたんと開いて脱出への道が見えるなど最近のホラー映画の怖いポイントも押さえている。
 そして襖絵に描かれた実際に活動している火山であるとか、異形の館の出現した理由もキング的な単純な怨霊ではなくいかにも宮部流時代劇としてあるところに感動させられる。クライマックスの部分など実際に映像化したら今まで誰も見たことのないスペクタクルな画像が成立すると思うのだけれども。
 このシリーズはまさにハズレのない傑作。

黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続
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