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2020年04月12日09:24

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ファスト・アンド・スロー あなたの意思はどのように決まるか?

ダニエル・カーネマン

ここのところのウィルス禍に伴うデマ、風評被害、マスクの高額転売、日用品のパニック買いはプロスペクト理論で説明できるのでは再び手にとった。

目に見えることが全てだと判断しがちな利用可能性バイアス。可能性の効果が低い確率の事象を過大に評価させる。これが、マスクに予防効果ありと信じる人たちの心の動き。もはや信仰の域ではと考えていたが、わたし自身も損失回避的であることを考えに含めればその判断を笑い飛ばすことはできない。同じことが欧米では起こっていないのは、彼の地では普段からマスクをつける習慣がないため利用可能性バイアスが発生していないからか。ネットの書き込みを見ていると自由主義諸国で日本だけ飛び抜けて死亡率が低いことをマスクの着用習慣に結びつけようとするものすらある。まったく本書は示唆に富み再読の価値がある。

北朝鮮との非核化交渉もプロスペクト理論で説明できる。彼らは核兵器を手放すと高い確率で体制が崩壊すると信じている。そんな事態を防ぎたいため長距離ミサイルや核実験など高リスクの行動に出る。彼らにとって有利な交渉条件すらも却下する。それに対し米国は体制の維持を約束することで、その保証を失うわけにいかないために北朝鮮が核を手放し、彼らにとって若干不利な調停案でも受け入れるようにする、または、北朝鮮に巨額の経済支援を約束することで、その経済支援を失うわけにいかないために北朝鮮が核を手放し、彼らにとって若干不利な調停案でも受け入れるようにする、と、このどちらかを選ぶように仕向けているように見える。行動を変えさせる、その背景をプロスペクト理論で説明できる。

ただし前提として両者間の信頼関係がなければならない。だからトランプさんがジョンウンはいいやつだと言っているのは正しい振る舞いだ。もっとも、米国が体制の保証や巨額の経済支援を本当に実施するかはほとんど無理だろう。彼らが暴発すれば互いに失うものが大きいことは理論が示している。だから日本海に空母打撃群を浮かべ静かに圧力をかけ続けることで彼らの暴発を抑制し、交渉の努力を続けるのは時間はかかるが正しいやり方だ。それに今回のコロナ禍のような外的要因で前提条件が変わるかもしれない。

いやプロスペクト理論を応用して、複数の取引を組み合わせた上でを使って北朝鮮側に選好の錯誤を起こさせることができないだろうか。その具体的な組み合わせはよくわからない。オバマ政権には行動経済学者がスタッフに加わっていたという。簡単なものではないのだろう、としか言えない。
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