mixiユーザー(id:5271665)
2020年02月12日23:33
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冬の修行
最近では何だかんだと言い訳をつけては採集をサボってしまうことが多い。冬場は寒いし、特に採りたい虫もいないし、と言い訳ばかりが先行して、つい暖かな部屋の中で標本整理に日和ってしまう。これではやっぱりいけないと自省し、たるみきった心身に渇を入れてもらうことにする。
今回の修行の先達は言わずと知れたP大明神。修行のテーマは小っさなゴミダマの稀種を倒木から割り出すこと。修行とはいえ、ホストの倒木の位置は確認済、すでに昨年にその倒木から複数頭採集した実績さえ有る。唯一の難関は2�个頬�たないムシを肉眼でとらえることができるか、というただ一点。しかし見えなければ材ごと持ち帰って暖房の部屋に座り込んで採集するだけの事である。これはもう現場到着30分で楽勝、修行とは単なる掛詞であることは疑いようが無い。余った時間で何を探そうかと行く前から皮算用を始めていた。
羊さんとともに先達氏を載せた車は10時過ぎには現場付近へ到着。暖房の効いた車を降りると空は鉛色の雲が垂れ込め、木立の間を抜けてくる風は刃のように冷たい。しかし歩き始めれば身体も温まり、目的の倒木に到着する頃には久しぶりの採集に血が騒ぐ高揚感いっぱいで気温の低さも忘れてしまう。
倒木は沢筋の斜面に横たわるモミの古い褐色腐朽材。一応先達氏の状況説明を受け、さっそくナタをふるう。しかし材はよく腐朽し、ナタよりも手のひらで細かく割り砕くという感じで進める。なにせ相手は２ｍｍ虫。おまけに腐朽材と同系色の光沢無し。力業より見逃さないような細心の注意が必要となる。最初に現れたのはこんな材にお決まりのデバヒラタムシで数頭単位の集団で出る。次はヒメムナミゾゴミダマ。これは初採集。普通種のムナミゾとほぼ同じように木目に沿った腐朽材の隙間に単発や数頭単位のコロニーで見つかる。ここまでは眼鏡越しの眼でも十分に対応できる。しかし目的のムシはさらに小さく目だないという。材にとりついて1時間ほど経過、まだ誰も本命の姿を拝んではいない。
いつしか空は灰色からかなり暗い色へと変化し、木枯らしが頭上の梢をごうごうと鳴らす。沢筋の湿度の多い材の上に座り込んでの作業。寒さが足元から這い上がり、身体の奥まで侵入する。指先や両足の感覚はとうに失せ、なにより原生林の下では暗くて一層手元を見づらくする。何か出るとお互い声をかけてこれは虫かｺﾞﾐかと確認し合う老眼虫屋の笑えない現実がそこにあった。
30分で楽勝のはずが、2時間どころか4時間が過ぎ、誰からも勝利の雄たけびは聞こえない。いつしかみぞれ交じりの冷たい雨がほほを伝い落ちてくるが、気が付かないふりしてひたすら湿って冷たい材に向かって悪戦苦闘を続けた。午後3時を回る頃、さすがに手元が不確かになり、何より寒さに耐えられなくなった。まだまだ諦めないぞとばかり散らばる大きめの材の破片を袋に詰め込めるだけ詰め込んで持ち帰ることにする。
家に帰り、さっそく土産の材の割り出しに没頭する。手元にライトスタンドを点け、一層神経を集中して材を細分化していく。翌日にかけて2日間、およそ8時間の延長戦にはかない望みを託した結果、現場よりさらにひどい成果にがっくりと首をうなだれたのであった。
修行とはやはりそんな甘いものでない！ということを身をもって体感できたのであった。
P様、大変お疲れ様でした。できの悪い弟子ですが、見捨てないようお願いいたします。羊様、長時間の運転ありがとうございました。
今回の修行の先達は言わずと知れたP大明神。修行のテーマは小っさなゴミダマの稀種を倒木から割り出すこと。修行とはいえ、ホストの倒木の位置は確認済、すでに昨年にその倒木から複数頭採集した実績さえ有る。唯一の難関は2�个頬�たないムシを肉眼でとらえることができるか、というただ一点。しかし見えなければ材ごと持ち帰って暖房の部屋に座り込んで採集するだけの事である。これはもう現場到着30分で楽勝、修行とは単なる掛詞であることは疑いようが無い。余った時間で何を探そうかと行く前から皮算用を始めていた。
羊さんとともに先達氏を載せた車は10時過ぎには現場付近へ到着。暖房の効いた車を降りると空は鉛色の雲が垂れ込め、木立の間を抜けてくる風は刃のように冷たい。しかし歩き始めれば身体も温まり、目的の倒木に到着する頃には久しぶりの採集に血が騒ぐ高揚感いっぱいで気温の低さも忘れてしまう。
倒木は沢筋の斜面に横たわるモミの古い褐色腐朽材。一応先達氏の状況説明を受け、さっそくナタをふるう。しかし材はよく腐朽し、ナタよりも手のひらで細かく割り砕くという感じで進める。なにせ相手は２ｍｍ虫。おまけに腐朽材と同系色の光沢無し。力業より見逃さないような細心の注意が必要となる。最初に現れたのはこんな材にお決まりのデバヒラタムシで数頭単位の集団で出る。次はヒメムナミゾゴミダマ。これは初採集。普通種のムナミゾとほぼ同じように木目に沿った腐朽材の隙間に単発や数頭単位のコロニーで見つかる。ここまでは眼鏡越しの眼でも十分に対応できる。しかし目的のムシはさらに小さく目だないという。材にとりついて1時間ほど経過、まだ誰も本命の姿を拝んではいない。
いつしか空は灰色からかなり暗い色へと変化し、木枯らしが頭上の梢をごうごうと鳴らす。沢筋の湿度の多い材の上に座り込んでの作業。寒さが足元から這い上がり、身体の奥まで侵入する。指先や両足の感覚はとうに失せ、なにより原生林の下では暗くて一層手元を見づらくする。何か出るとお互い声をかけてこれは虫かｺﾞﾐかと確認し合う老眼虫屋の笑えない現実がそこにあった。
30分で楽勝のはずが、2時間どころか4時間が過ぎ、誰からも勝利の雄たけびは聞こえない。いつしかみぞれ交じりの冷たい雨がほほを伝い落ちてくるが、気が付かないふりしてひたすら湿って冷たい材に向かって悪戦苦闘を続けた。午後3時を回る頃、さすがに手元が不確かになり、何より寒さに耐えられなくなった。まだまだ諦めないぞとばかり散らばる大きめの材の破片を袋に詰め込めるだけ詰め込んで持ち帰ることにする。
家に帰り、さっそく土産の材の割り出しに没頭する。手元にライトスタンドを点け、一層神経を集中して材を細分化していく。翌日にかけて2日間、およそ8時間の延長戦にはかない望みを託した結果、現場よりさらにひどい成果にがっくりと首をうなだれたのであった。
修行とはやはりそんな甘いものでない！ということを身をもって体感できたのであった。
P様、大変お疲れ様でした。できの悪い弟子ですが、見捨てないようお願いいたします。羊様、長時間の運転ありがとうございました。
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