映画『風の電話』☆☆☆☆☆
(以下、物語のプロットに少しふれています)
”生き残ってしまった”者が持つ痛みや空虚は癒えることはない。でも、やわらいでいく。人のやさしさ、温もりによって。きっと生きていける。
途中、フラッシュバックも起きたけど、観て本当によかった。涙腺崩壊。一日たっても、思い出すと涙があふれてくる。
2011年津波で両親と弟をなくした少女ハルが、伯母と暮らす広島の呉から、福島、岩手の大槌町へと旅するロードムービー。豪雨被害の被災地から、原発事故と津波の被災地へと向かう。
モトーラ世理奈(ハル)愛らしい。9歳のときに時が止まってしまった脆く幼い感じが、涙をさそう。世理奈ちゃん、TVドラマ『透明なゆりかご』から好きで、『ブラック校則』も見ちゃったくらい。
彼女のすばらしい沈黙の演技なしに、この映画はできなかったと思う。
キャスティングがとにかくいい。
渡辺真起子(伯母の広子さん)と三浦友和(公平)は昔から好きなんだけど、二人とも超絶すてきだった。宏子さんのハグに、涙。公平さんの「死ぬなよ」「食わないとな」に涙。
別府康子(公平さんの母)が語るお骨の話、原爆投下後の広島 . . . 壮絶で息が止まりそうだった。
山本未來(臨月近いシンママ‐to‐be)の明るさにも、西島秀俊(森尾)の最後の「だいじょうぶ」にも、涙、涙だった。
俳優の即興が多いからか、ドキュメンタリー・タッチ。でもドキュメンタリーとは違う。得も言われぬ雰囲気のある映画。砂ぼこりやぬかった泥、潮の匂いもした。諏訪敦彦監督. . . 不思議だ。翌日になってもこんなに泣いているの、たぶん『ディア・ハンター』(マイケル・チミノ監督、1978 )以来。
震災当時9歳のハルの級友、あすかちゃんのお母さん役は、占部房子さん。写るのは横顔だけなんだけど、鳥肌がたつくらいリアルだった。
あとね、ハルが埼玉で、入管施設に長期収容されたクルド人(難民認定してほしい!)の家族と打ち解けあうシーンにも胸を打たれた。やっぱり一緒に食事をして、初めて家族の写真を見せるところ . . . 。
どの共感も励ましも一方向じゃない。Mutual、それぞれ相互に影響しあっている。
森尾の固く閉ざされた心がほどけていくのも、ハルの気持の動きと連動している。
ハルの靴下の色や柄がだんだんに変わっていくのが、とてもうれしかった。
西田敏行(森尾の旧友の父親、今田さん)の福島弁の怒りと悲しみの表現、静かに唄う「新相馬節」、すばらしかった。
映画『警察日記』(久松静児監督、1954)について語る。森繁久弥、三國連太郎への、そして福島へのトリビュート . . 西田さんは子どもの頃、郡山でこの映画のロケ風景を実際に見たそうだ。
そういえば、『虹をつかむ男』(山田洋次監督、1996)でも、西田さん(活ちゃん)は『警察日記』のこと、身振り手振りで熱く語っていたっけ。
その大切な福島が原発事故で帰れないような事態になってしまって、今田さん、「生まれ育った故郷で死にたいと思うのが人の摂理」って言うの。ごめんなさい、映画の中に入って謝りたかった。
人災だもの、わたしにも責任がある。
ごめんなさい、ほんとうにごめんなさい。
もう、目が腫れてヨーダのよーだ!
それでも――
『風の電話』、大好きな人といっしょにご飯が食べたくなる。毎朝、行ってらっしゃいのハグをしたくなる、そんな映画です。
ぜひご覧ください。
P.S. 見ちゃうとつらくなるかな、と躊躇していたわたしを、新宿ピカデリーまで連れて行ってくれた、
「茗荷谷せんべいさんの日記」(友人の友人まで)に感謝します。
◆ 映画『風の電話』公式サイト
http://www.kazenodenwa.com/
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