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2019年09月27日22:54

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はるか信州より  謡(うたい)の会

 神楽とは別に、謡の会にも誘われたのでひょいひょいと入った。謡の会は今の地区の長さんが主催してる会なのだが、こちらは神楽と違って人数は少ない。それでも、この前第一回目に顔を出したら、知らない顔が一人増えていた。どうやら公民館の色んなことを仕切ってる人らしい。へー。

 それはともかくとして、謡、つまり謡曲である。能のバックで歌われるのが通常らしいが、謡は謡でまた独立して歌われるというような文化があるらしい。特に、信州の北部、北信地域では『北信流』という形で、現在の須坂市辺りを中心に盛んだったらしい。

 それでまず本を買ってみて教えてもらうのだが、なんか小難しそうな歌の文句がずらずらと並んでいる。で、その歌詞の右側に、漢文の『レ点』のような感じで、色んな記号が書いてあるのだ。それが『 」 』を、90度回転させる、つまり縦書きの時の 「 のような感じものがあったりする。

 この縦書き 「 は、「伸ばす」のだ。と、言ってもさっぱり伝わらないか。まず、大きなことから書いてみると、謡(うたい)というのは、メロディラインは『ない』。メロディのようなものはないが、節回しと抑揚はあるのだ。

 で、その上げ下げとか、伸ばす切る等の調子は、歌詞の横にメモ書きされているのである。原理的に言えば、初見の歌でも、その記号の意味がtyなんと理解されているならば歌い上げられる原理である。

 ちょっと外れるが、神楽の方でも笛をやってる人がいる。僕は「それ、ドレミファで覚えるんですか?」と聞いてみた。すると、「いや、昔の人はえれぇよな」と言いながら、鞄から何かをごそごそと出して見せてくれた。それには、カタカナがビッシリと書かれている。

「これ、ここ。『ピーリリリ』って書いてあるだろ?」
「書いてますね」
「ちょっと聞いてみ」

 と言うと、笛を吹いてくれた。ピーリリリと、聞こえる!

「あ! ピーリリリ」と聞こえますね!」
「だろ、他にもチッテテとか、色々あるわけだよ。そうやって吹くわけだ」
「なるほど〜」
「けどな、この本、指使いは書いてねえんだ」
「え? じゃあ、口伝かなんかですか?」
「いや……見て覚える!」

 芸は盗むものかよ! しかも何処を強調するとか、そういう事は全然書いてないらしい。つまり、ここは「見て覚える」領域である。話によると、どうやら舞も、そういう文書になった覚え書があるらしい。どういう伝授法なのか凄く興味があるが、とりあえず僕らはDVDで見て学習してしまった。

 謡も笛もそうだが、やはり日本文化に特有の伝授法というものがあったのが興味深く思われる。武術にも伝書というのがあるが、概ね「後は口伝なり」みたいな感じで、中々詳細までは言語化されてないのが通常だ。

 そういう中で驚くほど文書化されている武術書が宮本武蔵の『五輪書』、柳生宗矩の『兵法家伝書』で、この二冊はずっと武術家の指南書となってきた。これに少し時代をくだり、千葉周作の剣術に関する原稿なんかが、重要なものとして取り上げられている。

 しかし謡や笛の伝授法から鑑みるに、昔の日本の伝達法というのは、やはり圧倒的に口伝および「盗む」というのが、主流だったのだなと思う。僕もそれに倣い、神楽のや謡は盗むことにするか……


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