今日は、午前中バイクに乗ろう、と思っていたのだけど……天気がよくない。
結局、午前中ぐうたら、午後から映画を観に出かける事に。
大岡川には鯉のぼりが泳いでいました。
まずは、シネマジャック&ベティで、
「希望の灯り」
を観ようと思ったのだが……この日はメンズデイと言う事もあって、劇場大混雑。こんなに混んでるジャック&ベティも久しぶり……と言うか、メンズデイ(=木曜日)日中になど、滅多に来ないからなぁ。
さて、これは、旧東ドイツのライプツィヒ近郊にあるスーパーマーケットを舞台とした人間ドラマ。
新入社員のクリスティアンはスーパーの在庫管理の飲料担当として試験採用され、年配の頼れる先輩社員のブルーノと働き始める。
隣の菓子担当の年上女性マリオンに一目惚れしたクリスティアンは、不器用ながらモーションをかけるが、マリオンには夫がいて……
「美しき青きドナウ」の流麗な響きと共に幕を開ける物語は、いかにもドイツらしい殺風景な巨大スーパーマーケットを舞台に始まる。
登場人物は何れも寡黙で、訳アリの過去を容易く口にはしない。特に無口なクリスティアンは、周囲の人間関係大丈夫か、と危ぶむ程に口を開かない。
物語は、そうした寡黙な空気の中、日常の出来事を積み重ねてドラマを作り上げて行く。
静かで地味とさえ言える映画だし、小さな気づきを繊細な演技の中から拾い上げて行く物語は、現在の主流である「判り易い」ものではない。
それでも、そこに微かな灯火があれば、人は寄り添い合って生きて行ける……映画の描こうとするものは判るのだけど、期待し過ぎたせいもあって、何となく食い足りないと言うか、物足りない印象。
これを見終えて15:15。
次は――チケットを買ってあるのは、ヒューマントラストシネマ渋谷の特別上映2本、時間は19:00から、と言う事でまだ時間がある……何処で時間を潰そうか、と言うのもあって、そのまま、ジャック&ベティで映画をもう1本観る事に。映画は、
「誰がために憲法はある」
これは、「止められるか、俺たちを」の脚本を手掛けた、井上淳一監督によるドキュメンタリー。
芸人・松元ヒロによる一人語り「憲法くん」をモチーフに日本国憲法の原点を見つめ直す映画だ。
松元ヒロに代わり、名優・渡辺美佐子が「憲法くん」を演じる他、渡辺が中心となって33年間、続けられてきた原爆朗読劇に出演した女優たちが未来へ託す思いを語るものとなっている。
これは日本国憲法の根幹に、太平洋戦争の敗戦を踏まえた「戦争反対」があるとし、それを代弁するものとして渡辺美佐子らによる原爆朗読劇を生み出し、続けて来た想いを語ると言う映画だが、これはいささか的の絞り過ぎ。むしろ憲法を卑小化しているようにも思えるのが気になる。
日本国憲法は9条だけではないし、そもそもは主権を国民が取り戻す、と言う理想がある。それを、明治時代の大日本国憲法に押し戻そうと言う、時代に逆行する動きこそ非難されるものであり、憲法を題材に戦争反対と言う1テーマで映画1本にするのはどうにも納得し難いものがあった。
確かに、渡辺美佐子らによる原爆朗読劇、それを渡辺が引き受けるに至った想いとして、原爆の犠牲者14万人のうちに、特別なひとりが含まれている、と言う事実には胸を突かれるものがあり、「数字」や「記録」ではなく「人」がそこにいた、と言う事、そして、「人」である為には、そこに繋がる「人」の想いがなければならないし、だからこそ、これは人が人として語り継ぐべきものである、と言うのにははっとさせられる。
このエピソードに力があるが故に、それだけで映画をまとめられたのだろうけど、前述したように、「憲法を語る」映画としてはどうにも納得出来なかった。
また、「戦争反対」をメインテーマとするならば、映画コピーの
「わたしたちは世界でいちばん強くて素晴らしい武器をもっている」
と言う日本国憲法――第9条に代表される“平和憲法”としてのあり方についての言及も必要ではないのだろうか。
井上淳一監督としては、昨今の憲法改正議論について、主張したい所も垣間見られるだけに、この映画は何を主張し、誰に何を訴えたいのかを強く打ち出して欲しかったようにも思った。
映画の後、東急東横線で渋谷へ――
夕食の後、ヒューマントラストシネマ渋谷で、
「ザ・ウェイブ」
「ザ・クエイク」
の2本立て特別興行。
「ザ・ウェイブ」。
これは、第88回アカデミー賞外国語映画賞ノルウェー代表に選出された災害パニック映画で、ノルウェーでは大ヒットとなった映画。
監督のローアル・ユートハウグは、この大ヒットにより「トゥームレイダー:ファーストミッション」の監督に抜擢される事となった。
世界屈指の絶景スポット、ガイランゲルフィヨルドで研究に取り組んできた地質学者のクリスチャンは、ある日、フィヨルドを囲む岩盤層に異変を察知。
岩盤崩落は、狭いフィヨルドで海面上昇を引き起こし、フィヨルドの最奥部では波高80mもの巨大津波となる。
崩落から津波の到着までは10分。災害センターでは、無用な騒ぎは引き起こしたくない、と警報発令に消極的で、様子見の調査を継続するが、その直後、岩盤が崩落して……
なるほど、地震国ではなくとも、フィヨルド地形にはこうしたリスクがあるのか……と言う視点が目新しく、災害パニックものとしても、咄嗟の判断の重要性や、正常性バイアスによる初動の遅れなども描かれた内容は見応えあり。
また、如何に観測を続けながらも、警報を出す事を難しさなども描かれ、災害パニックものとして、なかなかリアルでよく出来ており、これは大ヒットとなったのも判るなぁ、と。
津波被災地の様子は、東日本震災の状況をリサーチしたのでしょう、これまたリアルに再現され、泥まみれの溺死体が転がる凄惨な現場の描写を逃げない辺りも力の入れ様が判ります。
津波後は、一家の主でもあるクリスチャンが家族を救う描写となるのですが……ホテル地下の津波避難所からの脱出劇がいささか冗長で、ドラマを過剰に盛り上げようとしたせいで、却って白けてしまったのが残念……
むしろ、家族をほったらかしにしてもみんなを救う為に頑張る父クリスチャンと、息子の為に他人を殺してしまう事も厭わない妻と言う対照的なキャラクターを対立させた方が面白くなったのではないでしょうか。
15分の休憩後、
「ザ・クエイク」。
これは、大ヒット作「ザ・ウェイブ」の続編として、更にスケールアップ。今度は、首都オスロを巨大地震が襲う、と言うもので、2018年、ノルウェーでNo.1ヒットとなった大作。
地質学者のクリスチャンは、3年前の巨大津波で多くの人を失った経験から、家族と離れて単身研究に没頭していた。
そんな彼は、事故死したかつての同僚から送られた資料を見て、新たな地殻変動の予兆を察知する。
だが、オスロに乗り込み研究機関に連絡するも反応は鈍く、クリスチャンは独自に調査を進めるが……
「ザ・ウェイブ」は、実際に過去災害を起こしたフィヨルドの岩盤崩落による津波を描いていたが、こちらは大地震。
しかし、ノルウェーは地震が少なく、マグネチュード5以上の地震が数度しか起きていないと言う国柄。
そんな状況故、クリスチャンがいかに騒ごうとも研究機関の責任者が取り合わないのも判るし、今回はクリスチャンが余りに利己的に過ぎ、どうにも感情移入出来なかった。
しかも、地震の描写が噴飯もの。まるで津波のように土煙を上げながら地震の震動が迫る……などと描かれても日本人としては白けるばかり。
クライマックスとなる、地震で半壊したビルからの脱出劇もいささかやり過ぎだし、幾棟もビルが崩壊して、多数の被災者が出ているのに、家族にしか感心がないクリスチャンと映画の描写にも納得出来なかった。
確かに、スケールアップした内容には見応えがあり、徐々に盛り上げ、そして次から次へのサスペンスの連打で手に汗握らせる……と言う演出の完成度も高いのだけど、地震に対するリアリティの欠如、それからキャラクターを生かし切れず、尚且つ人間ドラマとしても弱い物語のせいで、映画としての完成度は「ザ・ウェイブ」よりも大幅に下落したのではないだろうか。
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