「書店ガール /碧野 圭
5 ラノベとブンガク」
「宮崎彩加」は茨城県の取手駅構内の駅中書店「本の森」の店長となり半年。
アルバイトスタッフを募集し、ニートの田中幹を採用した。
ライトノベル(ラノベ)の注文があったり、常連客から品揃えの偏りを指摘されたり
悩むが、沼津の「太田英司」のアドバイスにより
地域に根ざした品揃えに特化することを決めた。
「小幡伸光」は「疾風文庫」(コミックで有名)の編集長となるも、早速存亡の危機に!
やっと切り抜け、新人賞の大賞作家「原滉一」を担当、取手に通うようになり、
構内書店に疾風文庫の新刊があることに気づき、彩加が亜紀の知人と知り、
「取手出身の新人作家」の売出の協力を約す。
後日、原滉一が田中幹と知った彩加は、
常磐線沿線の系列店と協力し田中の作品を売り出そうと動き始める。
そして、田中のデビュー作「鋼と銀の雨がふる」が発売されると、
協力体制が功を奏し、新人では異例の反応が表れ大ヒットに!
出版を記念したパーティーが開かれ
田中と父の間にあった溝を埋める。
6 遅れて来た客」
駅中書店の店長になって1年半の彩加。
藝大生手作りの冊子を店に置いたり、良い流れになっているさなか、
4ヶ月後に閉店になると告げられ衝撃を受ける。
そして、自分の行く末も定まらないのに、従業員の行く末まで考える彩加。
静岡で本屋を営む伯母の店を引き継ぐ方向に心は傾いていく。
そんな折、独特のパンを焼く大田英司と出逢い、
パン屋と本屋のコラボも選択肢に挙がる。
一方、伸光は「鋼と銀の雨が降る」のアニメ化決定で喜ぶがトラブル続く。
「アニメの世界は金を儲けようと思って入ってくる人はほとんどいない。
その分、好きな仕事かどうかとか、やりがいがあるかってことに
こだわる人が多い気がする」
「アニメの制作費は本人が負担するわけではないのだから、
もう少し好きか嫌いかなどの気持ちに折り合いをつけて制作してほしい」
こんな、アニメの制作者と原作の製作者との、それぞれの作品への想いの違いが、
なかなかシビアで、興味深い。
こんな、宮崎彩加と小幡伸光の話が交互に進み、
逆境の中、働く意味、進むべき道に悩む2人が見出した答えとは?
本屋とその周辺の「本」に関わる仕事に携わる人々の言葉が、深い。
最近の本を読まない子供について、
「ネットをいくら見ても、知性が身につくわけじゃない。
ネットで手に入るのは、しょせん情報だけ。
ほんものの知性は、自分の頭で考えて、本を読んだり、調べたりして
はじめて構築されるものだというのに」
読書の役割について、
「読書って楽しいし、その楽しみを知ってる方が幸せだもの。
こころの偏差値はほかの人には見えないけど、
読書ってそういうものを育てる役割があるんだし」
伸光が語る編集長の仕事。
「どういう作品を載せると雑誌が面白くなるか、
売り上げが上がるかを考えて実行するのが編集長」
「各編集者は作家と作品のことだけを考える。
それをまとめた雑誌をどうするかを考えるのが編集長」
これにはなるほど!
全国の各地域で、書店員関係者の集いがいくつもあるらしい。
それぞれ、「本」という単純な商品とは言えない物を売る人々の
“今”抱える問題が話題に挙がるのだろう。
なんとしても、紙の本、これからも存続させて頂きたいものである。
※ 情報
・国分寺ブックカフェ「ねじまき雲」
http://nejimakigumo.bitter.jp/
・書物占い「ビブリオマンシー」というのがあるのね?
・「読書で見つけた こころに効く「名言・名セリフ」」/岡崎武志
7 旅立ち」
シリーズの最終巻。
これまで様々なシーンで主役を務めてきた4人の女性たちのその後。
愛奈
私立の学校の図書館司書として働き、読書クラブの顧問を務めている。
生徒達は、文化祭でビブリオバトルをしようと言う。
(ビブリオバトルとは、推薦本を5分間で紹介し魅力を伝え、
誰の推薦本が1番読みたいと思ったか、聴衆の票によって決める競争)
掲載本:
「トトロの住む家」/宮崎 駿 「脳に悪い7つの習慣」/林 成之
「オオカミたちの隠された生活」/ジム&ジェイミー・ダッチャー
「ピンクとグレー」/加藤シゲアキ 「ネバーランド」/恩田 陸
「きみの友だち」/重松 清
その中で、生徒は本を通して感じた本音を他人に伝える術を知る。
彩加
取手の駅中本屋の店長だったが、
閉店に伴い地元の沼津に戻って伯母の本屋を継ぐことにした。
パン屋と本屋を合体させたブックCAFEにする予定だ。
しかし、自分が地元に戻って働くことになるとは思いもしなかった彼女。
地元の友人達にも会い、久々の地元にはしゃいだ。
「このレトロな感じ素敵!!」
「この趣のある感じ良い!!」
と興奮するが、その言葉は友人を傷つける。
自分としては褒めてるつもりなのに…
そして、友人達の気持ちを知ることになる。
理子
東日本エリアマネージャーとして、
仙台の歴史ある書店「櫂文堂」を閉店し、駅前ビルにリニューアルする段取りを
上司から命じられ、それを店長「沢村」に伝える。
理子は、まず新店舗にスタッフをきちんと移動出来るよう最善を尽くすが、
櫂文堂の店長もスタッフも、お客様までもリニューアルに反対し、
場所も名前も変わってしまってはそれはもう櫂文堂ではないと訴える。
かつて自分が本部からの閉店命令に対抗して力を尽くしただけに、
現場の人間の想いは分かり過ぎるほど分かるのだが、
理子の力ではどうにも出来ない・・・
櫂文堂を残す運動が派手になると、今のスタッフを新しい本屋へ移動することも
難しくなるかもしれない。
そして不本意ながら、なんとか要望が取り入れられた形の決着は、
苦い現実を伴うものだった。
亜紀
本部から吉祥寺店店長となって、
やはりお客さんの求める本を、直接選んだり並べたりする仕事の方が
自分は好きだと感じる亜紀。
以前の職場で働いていると、昔のことを思い出し…
今、理子は懲罰人事の結果か、九州博多へ。
それでも福岡の書店員集団「ブックオカ」に馴染み活躍しそうだ。
何があっても本と本屋が好きな4人の「書店ガール」は、
今日も特別な一冊をお客様に手渡し続ける。
すべての働く人に送る、
書店を舞台としたお仕事エンタテインメント、
完結まで、本当に興味深く面白く読ませてもらった。
「あるかしら書店」/ヨシタケシンスケ
『「作家の木」の育て方』『世界のしかけ絵本』
『2人で読む本』『月光本』
>「本にまつわる道具」ってあるかしら。
『読書サポートロボ』『カバー変更器』
>「本にまつわる仕事」の本ってあるかしら?
『カリスマ書店員養成所の1日』さんざん本の仕事をして、
その自由時間に本を読んでいるのがかわいい。
『読書履歴捜査官』
>書店員スキルアップ選書
『ほんのタイトルと、その正しい並べ方』『ほんのつつみ方』
『文庫犬』『本とのお別れ請負人』
>「本にまつわるイベント」の本ってあるかしら?
『本のお祭り』古本道中 春追い ヨメヨメ鬼
『書店婚』書店さんを会場にした結婚式
『想像力のリレー』『世界一周読書の旅』
>「本にまつわる名所」の本ってあるかしら?
『本の降る村』『読書草』『お墓の中の本棚』『水中図書館』
>「本そのものについて」の本ってあるかしら?
『本が四角い理由』『本のつくり方』『本のその後』
『本が好きな人々』『ゆっくりめくる本』
『ひとりの本』『本のようなもの』
>「図書館とか書店について」の本ってあるかしら?
『ラブリーラブリーライブラリーその1〜4』
『本屋さんってどういうところ?』
『大ヒットしてほしかった本』
>『必ず大ヒットする本のつくりかた』
あーーー。それはまだ 無いですー。
素敵な、本好きさんのための絵本!
こ〜んな本屋さんがあったら楽しいだろうね〜。
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