去年も一度足を運んでいる。毎月17日に行われる若手の会。立川流と云えば談志が協会にいたころからの直弟子のベテラン、志の輔、談春、志らくの別格売れっ子、それ以降のいろいろ若手・・・と三層構造になっている感じだが、その三層目の、さらに混ざり合った底辺の領域から出てくる個性派がしのぎを削るのがこの会。
●前座 談州「真田小僧」
談笑のところの前座さんだが、まったくどういう経緯でこんな人材が入門してくるのかね(W。名前の読みはダンスで、ヒップホップダンスの講師免許をもっているそうな。前座なのに初々しさの欠片もないが面白い。
●かしめ「目安箱」
「仮面女子」だったこしらの弟子。「前座が二人続きます」と云っていたが、二つ目トライアルを終えて昇進内定のようだ。談州より入門は一年早いが、歳は談州の方が上で、仕事の呑み込みも早い。「デキる後輩に突き上げをくらって、アニさんだけど微妙な立場・・・」で、最近は開き直って雑事は後輩に任せきっているらしい。暴れん坊将軍こと吉宗が市中に置いた目安箱。そこに届いた民草からの要望にいい加減に応えるという噺。
●吉笑「桜の男の子」
夢オチが何度も繰り返されて入れ子構造になるという、いかにも吉笑らしいパラドックス系。「1月と2月の動員を合わせても今日の入場者数には負ける」くらい今日は入ってるそうだが、この人が出るから足を運んだ人も多いでしょうね。
●寸志「豆腐の佐藤」
居酒屋でついつい自己流の哲学を語ってしまうサラリーマンの悲哀。前の二人が新作だったのに刺激を受けて新作・・・だったようだが、前の二人と比べるとアプローチが古い。今日聞く限りでは古典演ってる方がずっといいな。
●談吉「天災」
決して悪相ではない、むしろにこやかな童顔なのだが、何かただならぬものを感じさせる顔だと前座の頃から思っていた。黒目勝ちで、目が顔にうがった穴みたいにみえるからだろうか。けんかっ早く怒りっぽく、妻へのDV癖もあるあぶない男・八五郎がハマり過ぎ。正式には孫弟子ではないよね。
<中入り>
●らく兵「粗忽長屋」
死んでいるのか、生きているのかは関係ない。だって俺もお前もいつかは死ぬんだから・・・というメタフィジカル。主観を超えた死生観。談志だなあ。
●笑二「風呂敷」
旦那の留守中に招き入れた男とは何もしていない、というおかみさんの説明に反して、押し入れの中から出てきた男は全裸、しかも縛られていた。亭主の顔を覆う風呂敷には穴が空いていて・・・というハレンチな「風呂敷」。後からでてきた志ら乃が「快楽亭の遺伝子を継いでいる」。
●志ら乃「子別れ下 子は鎹」
個性的な若手ばかりが出てくるので、締めは真打でということ。今日は同じ会場で立川流の昼席もあり、そちらでも主任。実に力の入った、聞きごたえのある「子別れ」だった。ただ、この志ら乃の熱演ですらオールドファッションに思えるほど、新しい力に満ち満ちた楽しい会だった。
〇もう語りつくされていることだろうが、「電気=卓球」と思っていた自分にとってまりん脱退後、瀧は「漫才コンビのネタを考えない方、でも必要な相方」。俳優として評価されて活躍して良かったねという認識だった。お仕事ベースの販促活動はゲストを予告されながらもすっぽかし、かわりに「強面だけど家庭的な常識人」の瀧が謝るという往年の談志と松岡兄かよ!みたいな構図、いま考えるとなんなんだ〇瀧が関わっていた仕事の現場が対応に追われている中、知らなかったとは考えにくい卓球が何もアクションを起こさないのは、仕方ない(そしてどうでもいい)と思いながらも腹立たしい〇
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