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2019年03月15日12:49

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小川一水「天冥の標 10 青葉よ、豊かなれ PART3」

完結した。シリーズ刊行は10年前。当初から第10部までの構想があると知っていたが、
10年経過してみると長かった。途中で2度の震災があり数人の友人とお別れした。
この長丁場を破綻なく乗り切った作者の力量に敬意を示す。ストーリーは800年程の
期間で展開する。21世紀のパンデミックからどのように恒星間移動を実現するのかと
読者に想像させながら、植民先は太陽系外ではなく太陽系内だったという斜め上の
結末に驚愕した。更に、実は居住する小惑星が単体で太陽系を飛び出していた、と
ひっくり返る。ダイナミックな展開に眩暈がしそうだった。
作品の魅力のひとつには地球人類以外の知的生命体の描写がある。多くは人類より
長命で、個体単位に固執しない集団である。知識の蓄積にはこのような形態が
有利だろうと想像できるし、宇宙のスケールの中では民主主義は種族を滅ぼしかねない。
ということで、我々人類がユニークな種族として扱われるようだ。
異星人ものとして物語を眺めると、何時もそうなのだが、人類以外の存在でありながら
人間臭く描写される点が気になってくる。これはほぼ必然で、あまりにかけ離れると
何が描写されているのかが理解不能で、何も書かれていないと同じ結果になる。
異種族の表面的な部分は翻訳された近似値であり、彼らの行動原理なども本来は
人間の想像を超えている筈なのだ。感情にあたる部分もあるのかどうか怪しいので
彼らに其れを期待するべきではないと常々考えている。が、其れも些末なことだ。
本作品の特徴は人類の愚かさや力強さの記述にあり、歴史は如何に紡がれているかを
読者が知るきっかけとなっている。

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