『さぼうる』 千代田区神田神保町
いわゆる老舗・名店の部類に入る喫茶店である。
かつて一度閉店したような記憶があるが、現在は相変わらずの盛況ぶりである。ちょっと雰囲気が昔と違うような気がするが、建て替えなどあったのかもしれない。
さて、今は通じる人も少なくなっただろうが、こちらは「学生街の喫茶店」というやつの好例であった。
私より古い世代の方に聞くと、金も無く彼女もいない学生たちが、珈琲すすりながら屯していたのだと。世は学生運動の余波で、まだまだ根性のある若者がゴロゴロしていたと聞く。
私の世代、つまり学生運動も忘れ去られ、世の中がバブルへ向かって上昇機運に乗せられていた頃は、勉強できるくせに出版社などに就職して新人作家とここの狭いテーブルで打ち合わせ…そんな夢を見る学生が多かったのではなかったか。出版が斜陽産業となった今日では想像できない話である。
さて現在はというと、たまに利用してみるが、やはり今風のお洒落な若者が多い気がする。もちろん私の年代のお客も多いのだが、全体的にハイソな雰囲気になったようだ。これはこれでいいのではなかろうか。
でもたまに思い出す。
昔、ここで珈琲飲みながら、壁の煉瓦に意味も無い落書きをしていた時代を。
画面のタップではなく、白インクのペンで書く言葉には、何だか独特の重みがあったのだ。
地下鉄神保町駅A7出口を出た瞬間に左を向けば見える。
並びに2号店もあるので、混んでいたらそちらへ(雰囲気はまるで違うけど)。
左:コーヒーとチョコレートケーキ。
右:落書き。
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