mixiユーザー(id:2490213)

2018年11月10日21:30

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一年

ある地方都市を訪れた。
一年ぶりのことである。
目まぐるしく街並みの変わる東京とは異なり、一年間が一週間であったかのように、何もかもが昨年のままのように見えた。
仕事の目的も、一年前と同じだ。
その街の中でもとりわけ外れの方で、飲食店も数えるほどしかない。
結局、一年前と同じ店で昼食を摂った。
メニューブックもそのままだ。
去年はこのボロネーゼを食べたな。
バイキングでおかずが取り放題なのも変わっていない。
驚いたことに注文を取りに来た女の子も一年前のままだ。
デジャビュか?!と不思議な感覚に包まれそうになったとき、いきなりそれが破られた。
一年前に来られた方ですよね?
正直驚いて椅子から腰を上げかけてしまった。
本当に覚えているのですか?
雰囲気が去年と同じだったので。
いくら客商売とはいえ、驚嘆に値する。
〇〇へ仕事で行かれる方でしたよね。
ドンピシャだ。
時がゆっくり動き出した。
ああ、去年はほとんどの席が埋まっていて、私が最後の一つのテーブルに着いたのだ。
だが今年は私以外誰も客がいない。
やっぱり一年は過ぎていたのだ。
なら、今年はボロネーゼではいけない。
結局カルボナーラを頼んだ。
暇なのか、女の子は何度か話しかけにきた。
いつの間にか彼女の身の上話になり、私は熱々のパスタをフウフウ啜りながら彼女の境遇を聞くこととなった。
店を出て、坂を上り始めて改めて気付いた。
やっぱり一年は過ぎていたのだ。
去年よりも、坂を上る私の息は確実に苦しそうになっていた。
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