mixiユーザー(id:15312249)

2018年10月09日20:23

272 view

八大龍王伝説 【556 ゴンク帝國の復活】


 八大龍王伝説


【556 ゴンク帝國の復活】


〔本編〕
 龍王暦一〇六一年三月三一日。元ゴンク帝國領フエテン地方の府フエテン城において、スーコルプアーサー帝王戴冠の儀が執り行われた。
 この儀の執行によってゴンク帝國は復興を果たしたのである。
 同月二〇日にツイン城落城並びにニーグルアーサー帝王の死により、ゴンク帝國は滅亡したが、それからわずか十一日間という短期間で復活したのである。
 それも、聖皇国の姦計によって、強引に移されたツイン地方でではなく、元々のゴンク帝國の地であるヘルテン地方を始めとする五地方を基盤として復活を果たしたのであった。
 本来、スーコルプアーサーと名前を変えたスーコルプ自身は、ゴンク帝國の王族でもなんでもない。
 しかしスーコルプアーサーは、帝王に即位して初めてそれが小事あることを悟った。
 むろん、前帝王ニーグルアーサーとリュカオン老の画策により、本物の帝王の冠と、スーコルプが書き加えられた系図によって王族の一人ということにさせられたが、それよりもスーコルプが地下組織の長として、ゴンク帝國とその民のために、数々の尽力をしていたと実績が、ゴンクの民を結集させ、結果、ゴンク帝國が復活したのである。

 ゴンク帝國の新帝王スーコルプアーサーは、フエテン城での戴冠の儀式後、二つのことを宣言した。
 一つが、ゴンク帝國の仮の帝都をフエテン城とすること。そしてもう一つが、ミケルクスドのラムシェル王が提唱する八カ国連合に正式に加わるということであった。
 これにより、偽皇国との敵対を明確にさせ、同時にジュリス王国のイデアーレ将軍が奪取した元ゴンク帝國領の五地方も全て、ゴンク帝國の領土として返還されたのである。
 ミケルクスド國領であったヒールテン地方、並びにバルナート帝國領であったロモモテン地方についても、形の上ではイデアーレがそれぞれの國から奪ったことになっていたが、それについても、イデアーレがザッドを騙す方策として行っていた。
 そしてそのことについては、ジュリス王国のユンルグッホ王に報告されており、ユンルグッホ王からミケルクスド國のラムシェル王とバルナート帝國のネグロハルト帝王にも伝わっており、両王もそれを黙認という形で了承していた。
 したがって、イデアーレ将軍の行為は、聖皇国に領土を奪われないための方便という扱いのため、ヒールテン、ロモモテンの両地方は、一旦、ミケルクスド並びにバルナートの両国に返還され、即日、新ゴンク帝國の領土としてゴンク帝國に返還されたため、なんの支障もなくスーコルプアーサーはゴンク五地方の帝王となったのである。
 今、この五地方の中で唯一ゴンク帝國の領土で無いのが、ヘルテン地方の一部ヘルテン・シュロスのみである。

 このスーコルプアーサー帝王の戴冠により、この地に潜伏していた民や、他国に流浪していた民は続々と参集し、当初ゴンク帝國の人口三百万人には至らないものの、それに近い二百五十万人となり、兵も三万を数える規模にまで膨れ上がっていた。
 実際まだこの地には、ジュリスのイデアーレ将軍もとどまっており、その兵数はおよそ二万。つまりは、五万の兵が揃ったことになる。
 ゴンク、ジュリスの連合軍は、まず手始めに聖皇国宰相ザッドの籠るヘルテン・シュロスを完全包囲したのであった。

 場所(ところ)が変わる。
 ヴェルトの南方に浮かぶフルーメス島。
 龍王暦一〇六一年四月二〇日。聖皇国から離反した元黄狐将軍こと、現在は正統王国の高人将軍ノイヤールは、滅亡したフルーメス王国の首都コリダロス・ソームロの一室で軍議を開いていた。
 今、フルーメス島は聖皇国の七聖軍の一つ蒼鯨軍を中心とした聖皇国軍によって海上封鎖され、熾烈な攻撃にさらされていた。
 蒼鯨軍一万に、それ以外の兵が一万なので計二万の軍勢となる。
 元々フルーメス島に駐在していた黄狐軍は一万人いたが、二月(ふたつき)に近い戦いと、敵の巧みな切り崩し策により、今は五千程度となっている。
 ノイヤールは四倍もの数の敵兵に囲まれ、不利な戦いを強いられていたのであった。

 元々、ノイヤール率いる黄狐軍は、フルーメス王国攻略の主力では無かった。
 当初、聖皇国七聖軍の一つ蒼鯨軍が、フルーメス攻略にあてられていたが、フルーメス側の頑強な抵抗にあい、事がうまく運ばなかったのを、黄狐軍が援軍として参戦し、見事にフルーメス攻略を成してしまったのである。
 むろん裏でシェーレが動いた結果(※【顛末】を参照)ではあったが……。
 この結果に宰相のザッドは快く思わず、即、親衛隊を派遣し、それと交代にノイヤールと黄狐軍をフルーメスから撤収させようとしたのである。
 それが、龍王暦一〇五八年一一月に決まり、その一月(ひとつき)後の一二月に、黄狐軍はフルーメス島から撤収する予定であったが、ノイヤールが重病にかかり、今の今までこの島に黄狐軍と共に留まった。
 むろん、ノイヤールの病は仮病であり、ノイヤールは、このまま黄狐軍でフルーメス島を統治し、いずれフルーメス王国を復活させる足がかりとするつもりであった。
 これが、シェーレを介して、フルーメスの最期の王ヘルマンとかわされた約束であり、ノイヤールもむろんその意図で動くつもりであった。
 しかし、動くつもりと表現したように、事は上手く運ばなかったのである。
 その最大の要因が、一〇五八年一二月にノイヤールの後を引き継ぐために派遣された親衛隊長の存在であった。
 その時、ザッドの要請で派遣された親衛隊の隊長の一人で、フルーメス島の統治を任されたのは、ワクイロガイズスという名の三十代前半の女性であった。



〔参考 用語集〕
(神名・人名等)
 イデアーレ(ジュリス王国の将軍。ユンルグッホ王の叔父)
 ザッド(ソルトルムンク聖皇国の宰相。黒宰相)
 シェーレ(元ナゾレク地方領主。ヴェルト八か国連合東方戦線の指揮官の一人)
 スーコルプ(ゴンク帝國の地下組織の頭。今のスーコルプアーサー帝王)
 スーコルプアーサー帝王(ゴンク帝國の帝王)
 ニーグルアーサー(ゴンク帝國の前帝王。故人)
 ネグロハルト帝王(バルナート帝國の帝王)
 ノイヤール(正統ソルトルムンク聖王国の六将の一人。元ソルトルムンク聖皇国の黄狐将軍)
 ヘルマン(フルーメス王国の最後の王)
 ユンルグッホ王(ジュリス王国の王)
 ラムシェル王(ミケルクスド國の王。四賢帝の一人)
 リュカオン(元ゴンク帝國の副王)
 ワクイロガイズス(フルーメス島に派遣されたザッドの親衛隊長)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 正統王国(ソルトルムンク聖王国のこと)
 ソルトルムンク聖皇国(龍王暦一〇五七年にソルトルムンク聖王国から改名した國)
 偽皇国(ソルトルムンク聖皇国のこと)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 ゴンク帝國(南の超弱小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。滅亡)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 コリダロス・ソームロ(元フルーメス王国の首都であり王城)
 ツイン城・ツイン地方(ヴェルト大陸最南端の城とその城のある地方)
 ヒールテン地方(元ゴンク帝國の一地方)
 フエテン城(復活したゴンク帝國の仮の王城)
 フエテン地方(元ゴンク帝國の一地域)
 フルーメス島(ヴェルト大陸の南に位置する小さな島)
 ヘルテン・シュロス(元ゴンク帝國の帝都であり王城。別名『堅き城』)
 ヘルテン地方(元ゴンク帝國の一地域)
 ロモモテン地方(元ゴンク帝國の一地方)

(その他)
 黄狐軍(ソルトルムンク聖皇国七聖軍の一つ。ノイヤールが将軍)
 蒼鯨軍(ソルトルムンク聖皇国七聖軍の一つ。スツールが将軍)
 七聖軍(ソルトルムンク聖皇国の軍制度。七つの軍を置く制度)
 八か国連合(ミケルクスド國のラムシェル王の提唱によって実現した八大龍王によって建国された八か国による連合軍のこと)

【顛末】
 シェーレが動いた結果(【390 弱小フルーメスの意地(七) 〜前王から元王〜】以降を参照)
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する