ある人が「美味しい美味しい」と言いながらチビリチ
ビリと舐めて酒の肴にしたほど、私が作る魚醤は美味
しい。自家製魚醤については何度かつぶやき、マイミ
クさんからも好評だったので、ここに詳しく作り方を
伝授する。
魚醤作りは味噌や醤油より簡単だ。だが、生の魚が香
ばしい魚醤に変化する原理は十分に知っておく必要が
ある。
市販の魚醤数種類と私の魚醤を舐め較べたが、私のも
のが断然美味しい。理由は多分、市販品は一種類の魚
を原料としているからだろう。ナンプラーもニョクマ
ムもカタクチイワシ、秋田のしょっつるはハタハタ、
能登のいしるはイワシやイカが原料だ。一種類では、
その魚のクセが出るのではないか。
また長期間熟成させると生産コストがかかるので、か
なり短期間の熟成で製品化しているのではないか。だ
から、旨味成分が豊富なはずの魚醤に化学調味料(ア
ミノ酸等)を加えた製品も出回っている。
私の魚醤の原料は様々だ。釣れた小魚のアジ、イシダ
イ、クロダイ、マダイ、メジナ、コノシロなどに加え、
さばいた魚のアラや投げ売りの安い魚も原料にする。
他にも、焼き魚の骨や頭、カニの殻などで、これらは
水を適量加えて生魚と同じくらいの水分にする。気が
向いたら熟成促進のための麹を加えることもある。
魚醤について調べると、「発酵と熟成により」という
説明をしていることがある。魚醤は塩分25〜30%
で仕込むので、ほとんどの微生物は死滅するはずだ。
好塩菌と呼ばれる微生物も存在するが、死滅しないの
は塩分10〜20%の範囲のようだ。すべての発酵で
ガスが発生するとは限らないが、塩分25%で仕込ん
でガスが発生したことは一度もない。
生の魚の肉や内蔵が香ばしい魚醤になるのは、酵素の
働きによるものだ。酵素は微生物ではなく、肉や内蔵
などに含まれる化学物質だ。これが分解と熟成に関与
する。酵素が含まれない蒸留酒であるウイスキーが熟
成するのはオークの成分によるものだ。
作り方は、上記の原料をぶつ切りにして塩分25%に
なるよう塩を加えて良く混ぜ、ガラス瓶に投入するだ
け。魚が300グラムなら加える塩は75グラム。厳
密な重量比では塩分25%とはならないが、簡易的に
この方法で計量している。
私は4リットルと8リットルの梅酒用のガラス瓶を使っ
ている。もちろん一度に満杯とはならない。原料が手
に入ったら順次瓶に投入して記録をつける。絞る目安
は最後に投入した日から最低4ヶ月で、かつ熟成が進
む夏を経過することだ。
冒頭の写真の左の瓶は昨年10月に投入を開始し、最
後の投入は今年の4月だ。この瓶の魚醤は今年の10
月頃には絞って良い。もちろん、もっと寝かせれば風
味はさらに良くなる。投入を開始した頃は生臭い匂い
だったが、今では魚醤の香ばしい香りがする。この4
リットルを絞れば、ほぼ一升の魚醤となる。
今年の10月に絞れば、後半に投入した魚は6ヶ月程
度しか経過していないが、これでも構わない。前半に
投入した魚が十分熟成しているため、これが後半に投
入した魚に影響を与えて熟成を促進させるからだ。
右の瓶は今年4月に投入を開始し、今月8月中には満
杯となる。まだ生臭い匂いがする。最後に投入した魚
が完全に夏を経過するのは来年の10月で、絞れるの
もこの頃だ。ちなみに、新しい魚を投入したら前のも
のと混ぜるが、熟成の過程で特に混ぜる必要はない。
次の写真は絶対にやってはいけない魚醤の作り方で、
塩と塩に挟まれた内蔵は腐るだけだ。
http://portal.nifty.com/2006/07/12/c/
もちろん腐ってしまい、非常にひどいものができたよ
うだ。魚の内蔵の腐り汁を舐めればこのような表情に
なる(笑)。
http://portal.nifty.com/2007/05/23/c/3.htm
絞り方だが、ステンレスのボールの上に丈夫な菜箸を
渡してその上にステンレスのザルを置き、そこに熟成
した魚醤を入れる。その上にさらにステンレスボール
乗せ、両手でザルとボールを強く圧縮する。その後二
日ほど自然落下させれば、液体成分をほぼ取り分ける
ことができる。これをドリップ用の紙フィルターで漉
せば完成。
塩分25%ではかなり塩辛いので、私は20%になる
よう水を加える。塩分20%ならカビが生えたり、腐
敗することはないが、夏場に産膜酵母が発生すること
がある。漬け物液の表面に白い膜を張るあれだ。有害
ではないが、魚醤の旨味成分が産膜酵母に食べられて
風味が落ちてしまう。
対策として、魚醤のアルコール濃度が2%程度になる
よう、柿の渋抜きに使う47度の焼酎を加えている。
焼酎を加えるようにしてから夏場に産膜酵母が発生し
たことは一度もない。
ちょっと不思議に思うのは、熟成過程の絞る前の魚醤
には一度も産膜酵母が発生したことはないのに、絞っ
た魚醤には発生することがあることだ。発酵や熟成の
奥深い機構は分からないことが多いが、経験を重ねた
ので失敗することはまずない。
余談だが、秋田の十年もののしょっつるは200mlで
3,240円もする。そのうち私の魚醤と舐め較べてみよう。
根拠ある自信だが、私の魚醤の方が美味しいはずだ。
私の魚醤を「美味しい美味しい」と言いながら舐めて
肴にした某氏に上げるため「完成品」を150mlほど瓶
に詰めた。味と香りが十年もののしょっつると同等だ
とすると、2,500円ほどの価値がある。決して恥ずかし
くないプレゼントだ(笑)
今年3月に絞り、水もアルコールも加えていない魚醤
が一升ある。十年間寝かしてさらに熟成させれば十年
もののしょっつるよりはるかに美味しくなるはずだ。
二倍の価値があるとすると一升が約六万円。幸福な気
分になれるね(笑)。
この日記を読んだ人は幸いなり。私が開発した方法で
魚醤を作れば幸せになれるのだ(笑)。
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