人生に於ける2大ヒルと云えば、ジョージ・ロイ・ヒルとウォルター・ヒルだろう。異論は認めない。
前者は既に故人で所謂名匠、後者は「48時間」「ウォリアーズ」「レッド・ブル」等で知られるアクション映画職人監督で、昨年新作？「レディ・ガイ」（2016）もロードショーで見てきましたともさ！ これが「ミシェル・ロドリゲスって女優なのに漢じゃね？」「じゃあ男から性転換して女になった設定で映画一本撮る？」みたいなイージーな設定。情婦役（最初は相手が男だったのに途中から女になるという状況）のケイトリン・ジェラードの疲れた色気に味があったから見れたようなものの、何がつまらないってほとんど万事銃で解決、あのアクション演出のキレはどこへ行った！という予算の無さ加減が寂しかった。製作費の多くは、さして必要な役柄とも思えないシガニー・ウィーバーやトニー・シャルーブへのギャラに消えたのだろうか。
そんなウォルター・ヒルが30数年前に撮った青春映画「ストリート・オブ・ファイアー」の応援上映＠新宿に参加してきた。映画館に入ると、チケットと引き換えに渡されたのがエレン・エイムとアタッカーズのライブチケット。エレンを演じるのは、本作とジョージ・ロイ・ヒルの「リトルロマンス」でヒロインを演じ、2大ヒル映画ヒロインを制覇したダイアン・レイン。
応援上映は音量高目でタンバリン等鳴り物持ち込みOK。オープニング、エンディングのライブシーンではスタンディングで大盛り上がり。主人公のトム・コーディことマイケル・パレ登場シーンでは、ロングコートの下の袖カットデニムシャツがあまりにダサくて笑ってしまった。衣装担当ジョルジオ・アルマーニだったのに！
自分が一番好きなのは。コンサート会場から拉致されたエレンをボンバーズのアジトから奪還するシーンのアクション演出。マイケル・パレは決して今風のマッチョではなく、むしろだらしない体形なのだが、そんな彼が見せるアクションのキレの良さが良い。もちろん女バディのマッコイを演じるエイミー・マディガンのカラッとを通り越してパサパサした魅力も生かされている。敵役ボンバーズのトップ、レイブンがウィレム・デフォーで、この映画で初めて見た時、「なんて爬虫類顔の俳優だ！」と思ったが、その後「プラトーン」で売れっ子になり、今もオスカー候補とか大したもの。逆にマイケル・パレはすっかりB級俳優になってしまったが･･･。
この二人のサシでの最後の戦いで取った武器がスレッジハンマー。トムが振り下ろそうとしたハンマーに明らかにビビったレイブンを、一瞬で手下たちが（あ、コイツ終わったな）という顔で見る、あのわかりやすい敗北感がイイ。
日活アクションみたいとも云われるが、そもそもこんな薄汚れた下町（設定は架空だが撮影は高架鉄道があるシカゴ）を制覇したところで、どこにそんなウマミが？と思われる場所で、やたら抗争が激化するのは「ハイ・アンド・ロー」や「クローズ」の「閉じられた世界でスポーツのように暴力でぶつかり合うしかない状況」の嚆矢でもあるのだろうなぁ。一緒に見に行った「ストリート・オブ・ファイアー」初体験の人に感想を聞いたら「この映画、絶対『北斗の拳』に影響受けてるよ！」 確かに「北斗の拳」の方が若干時期的に先んじてはいるのだが、さすがにそれは無いだろう。むしろ「北斗の拳」に影響を与えたのは「マッドマックス」･･･って、結果すべてのアクションは「マッドマックス」に通じてしまうじゃないか！ そこは一旦離れようよ！
座・高円寺で「三題噺とらいあんぐる」。
わさびと吉笑のレギュラー二人に毎回ゲストが加わって、三人が持ち寄った三つのお題を最初に公開。お題が書かれた色紙をトランプのようにシャッフルして、各人一枚づつ取る。つまり出演者全員が�，錣気咾里�題��吉笑のお題��ゲストのお題を手にして、それをもとに三題噺を作るという趣向。
わさびは自分の会で定期的に三題噺を、その場ですぐ演じるわけではないが作っているそうで、吉笑も経験はあるとのこと。三三は「作ったことはあるが、いつやったかも忘れた。多分忘れたいような出来だったから」と云っていた。かなり前になるが、GWにたま、遊馬、兼好、一之輔と日本橋亭でやる「大日本橋亭落語祭」で客からもらったお題でその場で作っていたが、確かに全員グダグダだった。でも三三はその中では、客をたのしませようとがんばっていたと記憶しているけれど。
それぞれ持ち寄ったネタは わさび「高齢化」「良い意味で」「＠」
吉笑「√3」「レントゲン」「断ち物」
三三「尿検査」「ゼロ戦」「蝶ネクタイ」
これがシャッフルした結果 わさび「高齢化」「ゼロ戦」「√３」
吉笑「断ち物」「蝶ネクタイ」「良い意味で」
三三「尿検査」「＠」「レントゲン」
前半は普通に落語。
●三三「粗忽の釘」
●わさび「手水廻し」
●吉笑「黄声」
わさびの落語を聞いたのは寄席で何度かという程度。ただこの人夜中にNHKBSを見ていると、突然始まる5分間番組によく出てくるので、妙になじみがある。吉笑に「アニさん」と云われても、何かフワフワ頼りない感じだが、人気があるのはわかる気がする。「手水廻し」は以前雀々のとんでもないのを見ているから、それに比べれば大人しい。吉笑は新作。マクラで話した3月に亡くなった左談次の葬儀の際、参列客の案内を担当した時のエピソードをそのまま使っていた。
中入り後にいよいよ三題噺。
●三三「人造人間？」
舞台は病院、「尿検査」と「レントゲン」で楽な展開だが、冒頭のシャッフルから一枚引く際、三三がわさびから「取りたくない」と云っていた「＠」を引くのが前列客席から見えてしまい、客席から「アアーッ」という声が漏れた。まあ、でも＠は、割とどうとでも使えるお題だよね。わさびは自分が三題噺を作り慣れているせいか、割と使いやすいお題を心がけて選んだようだ。人造人間に？が付くのは、登場する患者が一文字隼人だから。本来は「改造人間」だろうということで。人造人間はキカイダー。絽の着物の下に手ぬぐいをかけて人造人間感を演出するなど、相変わらず芸が細かい、というか負けず嫌いだね。
●わさび 「ムダに頑張ってきたこと浄化屋」
人生に於いてムダに頑張ってきたことにカタルシスを与えてくれる･･･というか、愚痴を聞いてくれるおばさんのところに集う疲れた人々のお話。√３の使い方は面白かったけれど、ちゃんと聞いていなかったのかな、どこでゼロ戦使ったのかわからなかった。
●吉笑「あんちゃん、やってるね」
常々吉笑には次男坊の余裕みたいなものを感じる。長男がいろいろつまずいているのを見て、その轍は踏むまいと楽そうになんでもこなすイメージ。今回もちゃんと前半の落語のマクラからこの三題噺で輪が閉じるような構造に作り上げている。「蝶ネクタイ」をあの芸人につなげたところは可笑しかった。
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