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2018年03月03日03:19

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ある挺身の兵の語る 5/8 − 吉田嘉七 「ガダルカナル戦詩集」より


ある挺身の兵の語る       吉田嘉七

行き行けど、行方もわかぬ
木の下闇のいつの日か
果つる日やある、昼ひそみ、
夜のみ歩む南冥の
ガダルカナルの森深し


負い来し米はつきはてて
名も無き草を喰らいつつ、
辿れる尾根や、断崖や
つもる朽葉にふみまよい、
幾度もまろびし、つまずきし。

靴は破れぬ、趾裂けぬ。
背嚢遂に追いきれず、
装具もすべて捨てはてぬ。
抱くはわずか短剣と
菊の御紋のつきし銃。

泥にまみれす、にじむ血に
纒くべき布もなくなりぬ。
血による蠅を追うことも
ものうくなりて、たおれ伏し
幾度自決を思いしか。

今日斃れんか、明日死すか。
重き務めのなかりせば、
つとに死にたる身なりけん。
死なん命はやすけれど、
奮いたち生きてぞ行かん。



                 < つづく >


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