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2017年10月08日11:58

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「白鷹伝 戦国秘録」/山本兼一

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この作品、
宮部さんの「三鬼」を読了後、
“北村さゆり挿画展 – 宮部みゆき『三鬼』の世界 –”を観に行って、
幸運にも北村さんにお会いし、お話をさせて頂いた中、
本作の表紙を描くにあたってのエピソードも伺い、
(その表紙の原画がこれ。)
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内容にグンッ!と興味が出て、手に取った、というもの。

日々、世にあまた発行され続けている本…
その中で出逢える本の数などたかが知れている。
こうして出逢えたのは。正に幸運な偶然である!



からくつわ/網懸け(あがけ)/詰め/体震(たぶる)い/
初鳥飼(しょとりかい)/箔濃(はくだみ)/塒入り(とやいり)/
鶴取/病鷹(やみたか)/富士/鷹柱(たかばしら)

時代は戦国時代。 
物語の主人公は、浅井久政・長政、信長、秀吉、家康と
5人の名将に仕えた天才鷹匠「小林家次」(後の家鷹)である。

彼は若い時から一途に、一度出逢っただけの白鷹に
恋い焦がれ…
その血筋と思われる鷹をやっと捕獲することができた。
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捕えた白鷹は大きな雌。
 ※ 鷹は、雄を兄鷹(せう) 雌を弟鷹(だい) と言い
   雌のほうが雄より2割〜3割大きいそうだ。
彼女は「からくつわ(唐轡)」と名付けられた。
名の由来は、
唐の国で王の馬具の重い轡をさらって、遠い巣まで持ち帰った
白い大鷹の故事に依るものだ。
彼女は素晴らしい鷹に育っていき、
鷹狩好きの信長の、お気に入りとなる。
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こうして後、鷹匠「家鷹」は
歴史の流れに巻き込まれ、翻弄されながらも、
二代の「からくつわ」と生き続けた。
そして、
共に翻弄されながら、危急の折現れ、家鷹を助けてくれる
韃靼人の名鷹匠「エルヒー・メルゲン」の存在も好もしかった。


紀元前4000年頃、モンゴルの大草原が発祥とされる
鳥を使った「狩り」
それが日本に伝わったのが古墳時代。
その時代の埴輪には、手に鷹を乗せたものも存在するそうだ。
権威の象徴的な意味を持つ鷹狩は、時代時代の支配者に愛され、
殊に、鷹狩を好んだ武家の頭領たちは多かった。
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それほどのものであるにも拘らず、
時代小説の中で、深く「鷹狩」が描かれた事が無かったのは
なぜだろう? 不思議である。
山本さんは、そこを見事に描き切った!

もちろん、
鷹狩という、戦を想定し展開される狩猟時、
最も傍近く仕える鷹匠の眼を通して語られる、
名将たちの素顔と性格、そしてその衰亡の物語はとても面白かったが、
歴史資料を調べ、現在の鷹狩を現場で実地に学び、
飼育形態による鷹の性質の違いから
 ※ 網掛:野生の成鳥を捕える罠、
      及び、それによって捕獲し訓練した鷹。
      なかなか慣れにくいし、逸走することもあるが、
      危険を知っているので無茶はしない。
      慣れ、調教(?)できれば、名鷹になる。
      ◆初代 からくつわ。

   巣鷹:巣から取ってきて人が育てた鷹
      よく慣れるが、危険を知らず、無茶な狩りや事故で
      命を落とすことも多い。
      ◆二代目 からくつわ。
月齢による調教方法、季節によって変わる飼育方法まで、
本当に詳細に描かれる、鷹と暮らす日々に、
<生き物好き><猛禽好き>は、心を、正に“鷲掴み”にされる。
特に、
毒を盛られた、初代 からくつわ が命懸で産み落とした卵を
家鷹、自ら抱いて孵し、
二代目 からくつわ を得るくだりは、もうもう… うるうる…

鷹狩に使う道具、
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や、
鷹狩の用語
 ※ 止まり木とそれに止まる鷹を合わせて
   「1据(もと)」と数える。 など…
も、本当に、とても興味深く、
時代小説として以外にも、
「鷹狩」の入門書としても、優れた作品だと思った。
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