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2017年02月24日05:46

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2月22日 鈴本演芸場下席昼の部

 関東に春一番が吹いた17日、江の島に向かう湘南モノレールの車窓から遠く鎌倉の海を眺めると、荒れた海には白い波頭。駅を降りて海に向かうにつれ、猛烈な風圧に倒れそうになる。こんな日でもウインドサーフィンのセイルは見えるのだが、ありえない速度で横移動しているのが怖い。当然ながらというか空にトンビもいない。そしてこういう天候に血が騒ぐ人が多いのね。浜には結構人がいる。台風を見物に行って高波に持っていかれちゃう的なニュースが絶えないわけだ。

 この日は江の島落語会でわん丈独演会。高座に上がるとまず会場(ビルの七階で江の島が一望できる)のロケーションに驚いたこと、江の島に始めてきたこと、などを語り始めた。関東有数の観光地・江の島に今まで来たことがなかったのは生まれが滋賀、大学は九州でずっと西の方にいたからだそう。ちなみに滋賀出身の落語家(上方ではなく江戸落語で)は彼一人しかいないんだとか。わん丈を見るのは初めてで、一時期同門のふう丈と区別がついていなかったのだが、落協にも宮治並みの漫談上手の二つ目がいたのかと驚かされた。しかも円丈一門とは意外な伏兵。
 ●わん丈「祖父の部屋」
     「新・蝦蟇の油」
     「プロポーズ」(新作)
   <中入り>
     「おせつ徳三郎 花見小僧」
 最初の「祖父の部屋」は漫談で、強烈なキャラクターの祖母、その祖母と不仲の母などをネタにしつつ、自身の家族への愛情が感じられるイイ話。「新・蝦蟇の油」はお馴染み「蝦蟇の油」の口上を新しくしたもの。ネタ帳を見たら少し前に「蝦蟇の油」が演じられていたから(12月に市弥がやったか?)思いついたそう。最後の「花見小僧」は「過去のネタ帳を見ても、いままで誰にも演じられていなかったので」。その意気や良し。

 2月の下席は日数が少ないせいか、結構若手が主任を任される寄席が多い。真打昇進後あまり見ていなかったさん助主任の鈴本昼席へ。前座には間に合わず、来月真打昇進を控えた時松「牛ほめ」から入場。入場するときもぎりで「大変込み合っておりますので」と云われ、平日の昼でしょ?と思っていたら本当に満員。おそらく団体客がいくつか入ったのだろう。なんとか見つけた下手二列目の空席に座る。ここは上手から舞台に上がる前の噺家がよく見える。そういえば今日の昼席、微妙な出番入れ替えや交替で何気に良い顔付けになっていた。

●漫才 ロケット団
 三浦のケガは知っていたが、倉本も胃に穴が開いて、この16日まで入院していたのだとか。痩せすぎで心配。この日はストレート松浦と出番交替。

●一之輔「桃太郎」
 最初に投げ遣りな父親による通りいっぺんの「桃太郎」読み聞かせをやって「こんなもので納得するのは昭和4年生まれ程度、せいぜい金馬師匠の年代まで」。今席は中トリだが、本日は文蔵が出るはずのこの出番。

●一九「親子酒」
 「祇園小唄」の出囃子は誰かしら・・・と思ったらあまり色っぽくないこの人。数年前に横浜で見て以来久しぶりだと思う。

●ジャグリング ストレート松浦
 ニュージーランドの「ハカ(ウォークライ)」は有名だが、新体操のようにリボンをあやつる踊りは知らなかった。なかなかダイナミックで楽しいが、「あまり面白くない」んだとか。いや、面白かったですよ。

●文蔵「目薬」
 肌の色が赤黒過ぎて、毘沙門天とか怖い系仏像みたい。落語の方は少ない持ちネタだが確実に深化、進化させている。お尻を出せと迫られて恥じらうおかみさんの仕草が可愛い。今席はこの出番は菊之丞。

●しん平「時そば」
 長々まくらを振ることもなく噺へ。普通の「時そば」より倍速な進行だった。

●音楽 のだゆき

●白酒「茗荷宿」
 まくらでリーダー論について触れ「松曳き」かと思わせ、「抜けている人が〜」と続いて「粗忽長屋」かと思わせた流れでのこの噺。今席中トリは一之輔だったが、巡り巡って菊之丞の代演ということになるのかな。

<中入り>

●漫才 にゃんこ金魚
 金魚ちゃんの頭の菱餅と立ち雛可愛かった。

●圓太郎「強情灸」
 「豆っ粒ほどの」もぐさをほぐして山盛りにするところがいちいち細かい。

●小満ん「粗忽長屋」
 白酒で出るかと思った「粗忽長屋」がこの人。寄席の尺で、かなり飛ばして演じていたように見えた。この噺の熊は、本来の熊(って何?)と比べると、生き死にが関わっているせいか、かなり神妙なのだが、この人が演じるとさらに繊細さが加わる。

●紙切り 二楽
 久しぶりに見たが、この人も痩せたのでは? はさみ試しの「桃太郎」の後は「桃見酒をしている桃月庵白酒」(いつも割と強引な落語家お題頼むお客さんだろうか)、「花粉症」と「寅さん」の二つが出たのだが、それを一緒にして「花粉症の寅さん」。

●さん助「按摩の炬燵」
 高座に上がり、まずは今日の一番手・時松が来月には真打に昇進することをアナウンス。「ワタシもおととし真打になったんですが・・・」と、主任でありながら、今日の顔付けの中ではなじみが薄いかも・・・な自分もアピール。いや、今日はさん助を見に来たんだよ!と云いたいが、寄席にはいろいろな客がいるものね。
 冬の夜、あまりの寒さに眠れないお店の小僧さんたちが「布団を一枚増やしてほしい」と番頭さんに切実なお願い。それは本来奥さまが気付いてなさるべきことで、私からは出来ないと諫める番頭だが、一晩だけでもあたたかく眠らせてやろうかと思いついて、出入りの按摩に酒をすすめ、替りに「小僧さんたちの炬燵代わりになってくれ」と頼み込む・・・と、よく考えると実に一種異様で、ある意味猟奇な噺だ。喬太郎もよく演じるが、なんとなく変な味の方が勝った展開になり、それはそれで面白いんだけど・・・と妙な後味になるのだが、この人が演じるとすんなり受け入れられる。それは外見がそのまま按摩さんだから? いやいや、それだけじゃない。
 日々我慢を強いられるお店のつとめ。小僧さんたちの辛さもわかるが、奥さまに気遣いの足らなさを指摘すれば角が立つ。そういう番頭さんも万一火を出してはいけないと、自分もこたつやあんかは使えない。だから酒をごちそうする替りに・・・という流れを無理からぬことと思わせるのは、この人の醸し出す雰囲気、フラの助けがあるからなんだと思う。このフラというやつ、本当に不思議なもので、稽古を重ねれば身に着くというものでもなし、落語はまずくてもフラがあるという二つ目もいれば、真打なのに全く感じられない人もいる。フラとはいったい何なのか。自分は佇まいから「可笑しみ」が感じられるか否かを基準としているが、たぶん落語を聞く人に同じ質問をしたら、聞いた人の数だけのメルクマールがあることでしょう。
 それにしても今日の客席、ほぼ7、8割が年配者ではないかと思われるほど老人客が多かったが、昼席の長丁場でもさほどヘタらず、要所々々で笑う良いお客さんだった。最後に緞帳が下り、主任が座布団を外して頭を下げるまで拍手が長く続く、良い寄席でした。
 そして最後の最後、上手袖の幕を開けたあおもりの昭和の学生みたいな私服センスがちょっと微笑ましかった。

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