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2016年09月18日01:04

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妄想物語

〜 ハンパない驚愕の事実 〜

「あのさあ 今日 屋上で練習しない?」

僕の突然の提案に 何となく教室居残り組
女子達が小声でキャーっとざわついた
そしてざわつきが鎮まる頃を見計らって
バンドメンバーで一番冷静な でも一番天然な
鱒尾さんが反応した

『怪しい曇り空だけど いいの?』

こう真っ先に疑問をストレートにタメ語で
投げかけてくるのを他のバンドメンバーは
期待している節がある というのも鱒尾さんが
バンドメンバーの中で唯一僕と同じ最上級の
三年で しかもクラスも三年間を同じだから

「その曇り空がいいんだ レットイットビーの
アップル社の屋上の演奏シーンみたいで」

また教室の隅にいる女子グループが小声で
キャーっというのが聴こえた
僕は HELPのシーンで ゲレンデで四人で
ふざけていた黒マント姿のジョンレノンが
駅のキップ売り場までスキーのまま滑り込んで
駅員にカウンター越しに《ロンドン!》と
行き先を告げる場面で 暗い映画館の全体で
キャー が響き渡ったのを思い出した
僕はまんざらでもなく思い ちょっとニヤけた

そんなプチ騒ぎの中 1年のはやちゃんが黙々と
ドラムセットの移動準備を始めているのを
見てふと気が付いた

「はやちゃん そのドラムセットってプロがよく
練習で使うコンパクトなやつじゃない?」

ドラムが薄っぺたくて 他のも何となく小さくて
でも音はちゃんとしてて エレキといっしょかな
高いだろうな それにしても何で1年のはやちゃんが
と疑問が沸々として 訊いてみた

『あっ これですか 音桶先輩の店で買って貰いました』

はやちゃんはあっさりと答えたけど 疑問はさらに増幅した

「まず確認したいんだけど 音桶さんの店って?」

音桶さんって バンドメンバーで唯一女子コミック誌から
飛び出して来たような音桶さんの事?どういう事?
?が7,8個 頭の上で飛び交う

『汐ゐ先輩知らないんですか? 銀座のサウンドボックス
って音桶先輩のお爺ちゃんがソウギョウしてたんです』

ソウギョウの使い方が違う 操業じゃなくて創業だろ…
そんな事はどうでもよくて サウンドボックスくらい知ってる
僕だってCDはそこで買うし でも音桶とどう結びつ…ん?

「えーっ! サウンドボックスって《音の桶》って事?」

僕が驚くと 音桶さんが真っ赤な顔して頷いた

「それはわかった たまげたけど でもさ なんではやちゃんが
銀座の一等地の大楽器店でプロ仕様を買える訳?じゃなくて
買って貰える訳」

なんか ぶったまげ第二弾の予感がして訊いてみた

『汐ゐ先輩 ご存じではないんですか? はやちゃんの家って
町では御殿って呼ばれるくらい大きくて 外車が何台もあって
お父様はミュージシャンのプロモーションしているんですよ
文化祭の音楽コンテストに1年生ながら出場した時 お父様も
見にいらして 演奏を聴き終わったらすぐに銀座のサウンド
ボックスに向かったんですって』

マンガキャラから財閥令嬢に変わった音桶さんが説明し 更に
驚きの発言をした

『お父様は ベストボーイズのリーダーでドラマーの鱒尾さん
と仕事がらみで懇意にしてて 店から携帯で連絡とって あの
プロ仕様のドラムセットをはやちゃんの為に購入したんですって』

来たあー 第三弾も間髪入れずにさりげなく でもわかっていても
訊かなくては

「鱒尾さん 君のお父様って あのベストボーイズのリーダーで
ドラマーの鱒尾さんなの?」

『はい そうです』

鱒尾さんがいつもの癒し系の微笑みであっさりと答えた

「あのさあ 三人ともそんな凄いなんて今日初めて知ったけど
今までクラスで話したり噂になったりしなかったの?」

ふつう これほどの驚きを知ったら 誰だって同じ事を訊くだろう

『三人がそれぞれの身の上を話したのはさっきです』

やはりお姉さん格の鱒尾さんが 優しくとんでもない事を答えた

「ふーん」

人間 極限まで驚き続けると ビックリ神経がマヒして ふーん
となってしまう
そして これまでの僕と三人の会話を傍らで一言も発せず驚かず
聞いていた 転校して来て新メンバーの ストップひばりくんの様
に中性的容姿と言葉遣いのギャップに魅力がある 外堀さんが呟く

『この人たち かなりヤバいっす…』
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