mixiユーザー(id:40224526)

2016年09月08日23:41

263 view

妄想物語

〜 夏の終わり 〜

カラン コロン

おっ 鈴というか 鐘というか 直ってる

「マスター こんばんは」
仕事が早く片付いた日は この店に寄る
そして毎回 同じ質問をする

「誰か来てる?」
マスターが首を奥の二人席の方に
くいっと傾げる
このパターンは誰かが来てると心逸り
二人席まで進むと テーブルに花

「マスター 先客ってこのお花?」
と言いながら振り返ってカウンターを
見ると マスターがいない

ははーん これはサプライズに違いないと
顔を二人席の方に戻す
すると予想どおり背後に人の気配がした
わざと振り返らずに 次のシーンを妄想する

《素敵な花でしょ 店に来る途中の花屋さん
で 一目惚れで買ってきちゃった》
〈鱒尾さんが二人いるみたいだね〉
《あら お上手ね うふふ この花の花言葉って
ご存じ?》
妄想が暴走しつつある
〈知らない 教えてよ〉
《それは…》
〈それは?〉
現実の気配を後ろに感じるけど振り向かない
《あなただけを…》
〈うん あなただけを?〉
気配が真後ろに来た
《ずっと…》

パンッ!!

破裂音に驚いて腰を抜かし またしても
仰向けにひっくり返った

正気に戻りつつある意識の中で これは
ひょっとして と頭の後方を見上げる
上下完璧に赤いジャージを着た はやちゃんが
破れた大きな紙袋を片手に持って僕を見下ろし

ニコッと微笑んだ
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する