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2016年07月14日00:09

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7月12日 末廣亭7月中席昼の部

末廣亭の7月中席、昼夜ともに顔付けがよろしい。とは云っても、休日を一日寄席の椅子の上で過ごすわけにもいかず、三三主任の昼の部を見に行く。都内の定席の中では浅草の空気を落語より色物だの、招待客が多くて落ち着かないだの云う人がいるが、個人的には新宿の昼の方が、何か当たり障りのないところで収めようという作意を感じてしまう(池袋では通じない方法論ですね)。多くを望まないから、気持ちよく笑わせてくれればいい、それが新宿の昼の色かなぁと思う。

 湘南新宿ラインが大層遅延。のっけからかなりな入りの場内では前座が「豆屋」をやっていた様子。通路際の席が漏れなく埋まっているので、初めて最前列の中央に座ってみた。演者と目が合わなくて楽だが、首がつらいなぁ。

●わさび「動物園」
 そうか、さん生の弟子だからわさびなのか。BS笑点若手大喜利とか、NHKのミニ番組でも結構見かける。頼りなげな胃弱キャラでも、交替出演の小辰とはまた別な意味で人気ありそうなのはわかる。

●漫才 ホンキートンク
 今日は代演がゼロという珍しい日なのだが、色物は出番がかなり入れ替わっている。本来は小猫の出番。

●文雀「真田小僧」
 先月池袋の独演会で演じた「撞屋幸兵衛」良かった。今日はポピュラーな噺を寄席の尺で丁寧に演じた。

●左龍「肥瓶」
 もはや「百川」と並んで十八番ですね。

●三味線漫談 紫文
 すごく久しぶりに見た。

●歌武蔵 漫談
 漫談でこれだけ引っ張れるというのも圓歌一門の面目躍如。

●正雀「鼓ケ滝」
 浪速千恵子豆知識、毎度のことながら笑ってしまう。

●奇術 アサダ二世
 鈴本上席「落語の仮面祭り」以来、今月はほぼ一日おきにこの人を見ているような気が。

●小燕枝「権助提灯」
 今日はそこそこ入りが良い日の末広昼席特有「ウケたもん勝ち」的雰囲気。その雰囲気を崩すことなくちゃんと落語を演じてしっかり笑いを取る。

●川柳「パフィーde甲子園」
 若干干からびたとは思うが、これだけ元気なんだから。

●動物物まね 小猫

●権太楼「長短」
 今年は中トリでばかり聞いており。「代書屋」「町内の若い衆」・・・あとなんだっけ。今日はザッツ柳家な噺。

<中入り>

●時松「牛ほめ」
 先日N研で見たときはわからなかったが、近くで見たら少し五郎丸に似てる。もうすぐ真打、ろべえと交替

●漫才 ロケット団
 今日はホンキートンクとロケット団が見られるという嬉しい日。春先に三浦の骨折は聞いていたが、半月板損傷でいまだに治療中とはかなり重かったんだね。このところホンキートンクの勢いが強かったけれど、今日はルーティーンネタから時事ネタへの展開のスマートさでロケット団に一日の長あり。

●歌司 漫談
 もはや落語をやるより・・・ですな。圓歌一門ここにありの大爆笑。「楽屋でなんと言われようが、いま仕事をしてるのはあたしだけ」そりゃそうだ。

●禽太夫「替り目」
 白鳥、遊雀、文左衛門と同時昇進の一人だったと思うが、寄席で見たのがたぶん8年前くらい。ちまちま寄席に出るより師匠のお供で全国ホール回りかしらん?と思っていたが、寄席の尺で長くしない分、酔ったご亭主の件もくどくなく、しっかりもののおかみさんもすっきりした良い味わい。

●太神楽 仙三郎社中
 親子プラス仙成。

●三三「粗忽の釘」
 なんとなく今日はこの噺に当たりそうな気がしていた。この噺ではなくても、後を引かないすっきり笑える噺で昼の部を終えるという流れかなと。鉄瓶もってぐるぐるとか、似顔絵を回覧板で回すとか、杉の木で「杉ドン」とか、初席でも見た通りの三三なりの「粗忽の釘」。


  『暮らしの手帖』と大橋鎮子が話題になっているので、積ん読状態だった津野海太郎の「花森安治伝」を手に取った。作家の森村桂が暮らしの手帖社に勤めていたことも思い出し、図書館から彼女の著作「違っているかしら」を取り寄せて「花森安治伝」と同時進行で読み進める。

 女子大生の就活日記でもあるこの作品は65年の発表当時話題になり、吉永小百合主演で映画化もされたはず(花森役は宇野重吉)。森村桂は人気作家だったが、現在はニューカレドニア滞在記「天国に一番近い島」が、角川映画のタイトルやら、原田知世の主題歌やら、あらゆるパンフの惹句に使われる「天国に一番近い○○」の元ネタとして人々に記憶されている程度だろうか。
 「違っているかしら」の後半部分は憧れの婦人文化社(暮らしの手帖社)に入社して、あまりの不器用ぶりで社長(大橋)に「昔の自分を見ているようで放っておけない」と心配され、編集長(花森)に「君は他の人とモノサシが違う」と言われ、就職して社会人になるという呪縛から放たれてフリーランスの道を選ぶまでの物語。その中で森村は社会になじめない自分を認めながら、来る日も来る日も商品テストに明け暮れ、花森を妄信して外の世界を見ない編集部の将来に疑問を感じ始める。

 「尊敬する編集長を上に持って、こよなく良き風景には見える。でもどんなに頑張ったって編集長以上の人間にはなれない。それを今いえば、この人々は笑うだろう」

 花森の死後、編集部で彼の仕事に接していた人たちがその仕事ぶりを書いた本を出しているが、日本人へのライフスタイル提案雑誌として絶大なる支持と部数を誇っていた当時に、外様だからとはいえ編集部に疑問を呈した彼女の勇気は大したものだと思う。例えば花森を宮崎駿に、暮らしの手帖社をスタジオジブリにしても通じるし、名人の下に集った弟子たちが名人に育つとも限らない、落語の世界でも通じる話じゃないだろうか。

 森村桂は“体験行動型”の書き手だと思う。始まりはお嬢さん目線の女子大生就活日記だが、自分を巻き込もうとする新卒→就職というシステムに対してはすごく辛らつなのだ。辛口ではなく辛らつ。それが毒吐きにならないのは、自分のダメなところも素直に認めて書いているから。正直すぎて現代のネット社会だったら滅茶苦茶叩かれそうなタイプ。配偶者の借金問題で苦労しているところは二世女流作家の先輩格・佐藤愛子と重なる。最も佐藤はそれをバネにしたが、森村桂はそれを契機に世捨て人のようになってしまった印象がある。

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