大人の尚子ちゃん

〜長靴の音〜

雨の朝の 長靴の音は なんだか元気

水たまりを ちゃぷちゃぷと進む
三年３組の僕と尚子ちゃんが並ぶと
黒とピンクの お洒落なバク


雨上がりの長靴の音は 何だか軽やか

今日は 朝から強い雨
数路線が会する 都心の地下鉄の駅
最近は 通勤時の女性の足元も
カラフルな長靴でいっぱい

帰りの頃には夕陽もさして
同じ長靴 同じ女性 なのに音が軽い


君は絶対 大人の尚子ちゃん

改札口を出て 西から東に延びる道路を
またぐ歩道橋を上り始める頃から
僕の後ろに 軽やかな長靴の音

歩道橋の上から見える綺麗な夕陽を
眺めたくてゆっくり歩くと
長靴の音もゆっくりと僕に続く

歩道橋の階段を下りる時には
溜まった水が跳ねないようにそっと
ぴちゃっ ぴちゃっ と歩くと
長靴の音も 前にいる僕に水が跳ねないよう
ぴちゃっ ぴちゃっ と後ろに続く


尚子ちゃんでしょう？
と 心で呟くだけで 振り返りはしなかった

あの長靴の音は 確かに尚子ちゃんの長靴の音