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2016年04月23日05:23

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4月21日 池袋演芸場4月下席夜の部「落語協会特選会」

 いまのJポップアーティストは、洋楽よりミスチルとかドリカムとか聞いて育ってきた人が多いんだとか。とはいえミスチルもドリカムも洋楽の影響下にある以上、間接的にはそれに続くミュージシャンだって洋楽と無縁ではいられないんだけど。だけど確かにここ数年のアメリカの音楽って総体的に面白くない。そこへ来てプリンスの訃報である。
 現時点ではインフルエンザをこじらせてあっけなくとしか情報がないけれど、突然消えるのはらしいといえばらしいのか。失礼ながら欧米人にとっては畸形っぽい体躯だったんじゃないかと思うが、それだけにちょっと長く下界に居すぎた音楽好きの天使みたいだった。R.I.P.

 午前中に藤沢で髪を切り、急いで上野東京ラインで上京。巣鴨の獅子座に直行する。一番手の花飛には間に合わず、

●橘也「茄子娘」
 見る度に腕を上げている。茄子娘が「なすのあおい」って、このくすぐりを昼間の巣鴨の客にぶつけるのもどうかと思うが、この人は客に受けようが受けまいが、ばしばしギャグを挟んでくる。圓橘門下はどうしてみんなこう自由に育っているんだろう。

●鯉津「禁酒番屋」
 この人も同じく。初めて連雀亭で見た時は年は取っているが香盤は一番下・・・と云っていたが、その時も今も安定感が半端ない。マクラもふらず、主任らしい噺をぶつけてきた。

 雨が降りそうな空模様の下、いったん新宿に出て食事をしてからバスマニアにはたまらない新名所・高速バスターミナル「バスタ新宿」へ。隣接するファッションビルにサードウェーブコーヒーの「ブルーボトルコーヒー」が出来た。いっぱいづつ手で淹れるせいか長蛇の列。このビルの上にも手淹れコーヒー屋があるのだが、そこはエアロプレスで淹れていた。

 夕方からは池袋。喜多八門下のろべえと金時門下の時松。落語協会の香盤では朝也、文菊(真打)、ろべえ、時松、馬ることなっているが、ろべえと時松を挟んで、ほかの3人がNHK新人演芸大賞を受賞。序列でいけば真打昇進も近い二人だが、これではいかにも居心地が悪い、どうしても受賞したいということで立ち上げたのがN研。過去に受賞した噺家をゲストに呼んで、その傾向と対策を受賞者から直接伝授願おうという趣旨の会。どうにもストレート過ぎるけれど。


●前座 小かじ「二人旅」
 三三の弟子で高座でいろいろ話(正楽の切りくずを片付け損ねてとっちらかしたとか)には聞いておりますが、見るのは初めてでございます。前座の「二人旅」は初めて聞く。明光時代の竹三で「煮売り屋」を聞いているが、もとが上方の噺だからノーカウントで。

●ろべえ「もぐら泥」
 以前はイケメンっぽいというか、勿体振ったところが鼻につくように感じられたが、少々贅肉がついてその分親しみやすくなる。これで予選に挑戦するようだが、あまり誰もがする噺じゃないし、尺もちょうど良いのだろうし、ここで見ている分には悪くは無い。

●時松「茶の湯」
 ろべえがあんまりしゃべらないので、この後のトークでもこの人がほとんど司会進行をしていた。教科書通りの「茶の湯」だが、愛嬌溢れる定吉と、知ったかぶりをこじらせたご隠居さんの、息子への過ぎた対抗心が笑いを誘う。

●喬太郎「すみれ荘201号室」
 ろべえが農工大、時松が農大、自分が日大の落研出身・・・ということでこの噺。彼女も彼も五街道雲助ファンの恋人同志(形態模写付き)がおかしかった。「あ〜他人の会だと気がラクだわ!」

<仲入り>

●「どうすれば新人演芸大賞が取れるか」 講師 喬太郎
 喬太郎は1998年の受賞。その前に、小朝がNHKでやっていたバラエティ番組にレギュラー出演していたにも関わらず、「寿司屋水滸伝」で予選落ちしているそう。その後受賞した時も「午後の保健室」だし、大舞台に新作トライを繰り返したのは何故かという問いに、喬太郎は「自分の売りは新作落語だと思っていたから」と答えた。「もちろん尺がちょうど良いからというのもあったけれど、古典は自分より巧い人が沢山いるから勝ち目はないと思っていた。後輩だけれど吉弥くんとか、吉朝師匠仕込みの本寸法ですばらしかったし・・・」
 自分は喬太郎の新作が好きじゃない派だった。ル・ピリエの新作落語の会でも新潟やたい平、昇太の新作は面白かったけれど、喬太郎の落語は何か古くさかったり、小劇場っぽい演じ方で眠くなったり、聞いてて恥ずかしくなったりした覚え。「午後の保健室」も新本格の叙述オチみたいでそんなに好きじゃ無い。けれど、ことあるごとに自分にとっての新作落語の重要さを語る喬太郎を見るにつけ、これが自分の会を精力的にこなしつつ寄席にも出るという、自分の中にあるものを出す行為を続ける上で欠かせない、バランスを取るための作業なんだろうと考えている。他人を笑わせるって激務で重労働。その辺りが二つ目二人にも届いたのではないか。最も二人ともそんなこと十分分かっていると思うが・・・。
 また師匠のさん喬はなんと「締め込み」を演じて落ちているそう。「それって・・・十八番でしょう?」という喬太郎の言葉に、二つ目二人も大きく肯く。勝負は時の運、傾向も対策も立てられない。「たとえ落ちても、じゃあこの噺をオレの十八番にしてやる、この噺なら誰にも負けないというところまで完成度を高められればいいと思う」
 最後にろべえが「NHK新人演芸大賞を勝ち取るにはどうすればいいでしょうか」とストレートに聞くと「籾井(会長)さんに裏金を渡せば?」ちょっと! 上層部を狙いすぎて逆に届かないよ! 

●時松「五目講釈」
 これで予選に挑戦する予定。ちょっと声がくぐもっている。老人が主人公の「茶の湯」では気にならなかったが、若旦那の素人講釈はもう少し明朗闊達さが欲しい。それかいっそ本当に天然で棒読みな感じとか。「真田丸」でしめればNHK受けはいいかもしれないが、合間のくすぐりも含めて、もう少し練り直す必要がありそう。講釈というもの自体が審査員はともかく、今の視聴者には届きにくいだろう。

●ろべえ「花見の仇討ち」
 この人本当に師匠が好きなんだろう。余計なお世話だろうが心酔度合いの深さが心配になる。喜多八自身も師匠の小三治に「どうしたって似てきちゃう」と云っていたが。

 このN研、6月には彦いちを講師に迎えて再度催される予定だそうです。

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