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2016年01月15日20:13

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「フランス組曲」

1942年にアウシュビッツで亡くなった女性作家イレーヌ・ネミロフスキーによる未完の小説をソウル・ディブ監督が映画化した、イギリス・フランス・ベルギー合作映画です。

1940年、ドイツ占領下にあるフランスの田舎町を舞台にした、フランス人女性とナチスドイツ将校の切ないラブストーリーですが、それだけではありません。
戦闘場面はほとんど無いけれど、戦争の悲惨さを描いているし、身分差、経済格差の大きい田舎町の人間模様を描くヒューマンドラマでもあります。

ヒロインのリュシルは出征中の夫の帰りを待ちながら、地主で資産家である義母と立派な屋敷で暮らしていました。
義母は小作人から厳しく取り立てをするだけでなく、リュシルに対しても厳格で、ピアノを弾くことも禁じ、リュシルは窮屈な日々を送っていました。

町にドイツ軍が駐留し、リュシルたちの屋敷に住むことになったのは、礼儀正しく紳士的な将校、ブルーノでした。
作曲家だった彼はピアノで美しい旋律を弾き、いつしか二人は惹かれ合うようになります。同時に、狭い世界に生き、義母の言いなりだったリュシルは自分の意思で行動していく女性に変貌していきます。

もちろん品性下劣なドイツ軍将校もいましたが、隣人を密告する手紙をドイツ軍将校に書くフランス人も大勢いました。
強者のすべてを悪、弱者のすべてを善と単純に描いていないのがいいです。

ドイツ語も使われているのですが、大半は英語で、主人公二人の間に言葉の壁が皆無なのは不自然で、その点は残念でした。
でも良い映画ですし、リュシル役のミシェル・ウィリアムズ、将校役マティアス・スーナールツ、義母役、クリスティン・スコット・トーマスが皆、素晴らしいので、大目に見ましょう。

残された娘が託されたトランクの原稿は作者の死後、60年以上たってから出版され、全世界で350万部を超えるベストセラーになったそうです。
そういう背景を思うと、いっそう心に残る映画になりました。
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