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2015年12月19日01:31

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イタリア映画の顔

 イタリアのヴィットリオ・デ・シーカ監督の1970年の映画「ひまわり」は、日本でも人気の高い作品で、タイトルを聞いただけで、ソフィア・ローレンや、地平線までも一面に広がるひまわり畑、さらにはヘンリー・マンシーニのテーマ音楽を思い出す人は多いことでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=2O6-LLRdwmQ

 ただ、その一方で、ソフィア・ローレン演じるジョバンナが探し求めたアントニオを演じたマルチェロ・マストロヤンニを最初に思い出す人は少ないのではないでしょうか。
 ストーリィ上も登場場面がソフィア・ローレンよりも圧倒的に少ないので、致し方ないところではあるのかもしれません。でも、よく観ると、あの作品が名作になり得たのには、マストロヤンニの好演が欠かせなかったことが分かります。
 無邪気に惚れた腫れたとやっておればいい若い時だけを演じればいいわけではなく、戦争で引き裂かれて何年も別れ別れになった男女の悲哀や機微といったものを観る者に堪能させなければならないわけですから、これは生半可な演技力ではとても務まるものではありません。いくらソフィア・ローレン一人が頑張っても、それをしっかりと受け止めてくれる相手がいなければ、観る者に不自然さ、無理を感じさせたはずです。そうならなかったのは、やはり、マストロヤンニの優れた演技力があったからに他なりません。

 この「ひまわり」での好演に限らず、マストロヤンニという人は、性格俳優として非常に高く評価された人でした。そのためもあってか、主要なイタリア映画には出まくっていた感があります。フェリーニ、デ・シーカ、ヴィスコンティ、アントニオーニ等のイタリアの名だたる巨匠の作品の多くで活躍し、まさにイタリア映画の顔ともいうべき存在でした。しかも、生涯を通じて、スランプらしいスランプがなかったという点でも稀有な俳優さんでした。
 二枚目でありながら、どこか三枚目的なおとぼけ感があり、だから性格俳優が務まったともいえるのですが、シリアスな演技も上手で、とにかく人間的な存在感を感じさせてくれました。
https://www.youtube.com/watch?v=CmFcCxaovT4

 個人的に忘れられないのは、エットーレ・スコラ監督の撮った映画「マカロニ」(1985)での好演です。
(予告編)https://www.youtube.com/watch?v=VgerJYHnhDM

 これは、終戦直後のイタリアに進駐したアメリカ軍の男と、その男と恋仲になった女の兄が主人公の話です。
 この兄の方を演じていたのがマストロヤンニです(アメリカ軍の男の方は、これも名優だったジャック・レモンが演じてます)。
 実は、映画の中で、この兄は最初、アメリカ軍の男(といっても、戦後何十年も時が流れて今では大会社の重役になっているのですが)にとっては少々迷惑な存在として登場します。でも、それは人並み以上に妹思いであったことに端を発したものであり、どこか憎めないところがある、そんな人物をマストロヤンニは見事に演じてくれたのです。
 この兄と接していくうちに、アメリカ軍の男が(いい方向に)変わっていく様子もジャック・レモンの好演もあって、自然に頷けます。
 もちろん、シナリオや演出の妙ということもあったのでしょうが、あの映画では、この老優二人の好演が断然光っていたと思います。ある程度以上年輪を重ねた人間にしか描き出せない暖かくて人間らしい素敵な世界をいっぱい観せてもらった気がします。
 「これを見た後は友達と家族に優しくなりますよ!きっと」とコメントをしてた人がいましたが、まさにそんな感じです。機会があったら是非ご鑑賞ください。

 今日(19日)は、マルチェロ・マストロヤンニの19回目の命日です。
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