大人しい子だった。
母親に、「噛んでもらいなさい」と優しく促されても
小さく頭を振る。
獅子を近づけると、小さくお尻をずらした。
目の前には、彼女には大きすぎるようなざるそばが置かれている。
余りしつこくすると、彼女、食べなくなるかな、
ここは羽生PA鬼平江戸処、
14日はあいにくの雨となり、屋内の食事処で人形を遣うことになった。
昼食時を過ぎても、意外と人が集まった。
獅子を遣い終えた後は、客席内を頭を噛んで回る。
その客席の一番奥に、彼女はいた。
手をいっぱいに上げると、獅子はテーブルの上に立った。
獅子が話しかける。
「頭、噛ませてくれない?」
彼女は獅子を見つめたまま、また頭を振った。
獅子が淋しそうにうなだれると
彼女はスーッと寄ってきて、頭を差し出した。
獅子は身を伸ばして、優しく頭を噛む。
「元気に、大きくなりますように」
ちょっと胸がドキドキした。
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