mixiユーザー(id:18627182)

2015年11月09日12:51

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『一国の首都』を読んでみた。

一国の首都―ありうべき首都論と「水の東京」
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=18627182&id=3764464

<以下、レビューページより転載>

文豪・幸田露伴による首都論。
上梓されたのは明治32(1899)年と、前々世紀末――いまから100年以上も前の書物なので、さすがに「古い」と感じるところも多いんだけれども、その一方で、現代の都市論にそのまま通用する・適用できるような箇所もあって、よくもまあこの時代に、専門家でもない一人の文士が、ここまでの卓見をもって見事な論文を著したもんだ! と喫驚を禁じえない内容。
やっぱ当時の文士は昨今の小説家なんかと違って、スケールがデカかったんだろうか?

問題点を指摘したり、要求要望をするばかりではなく、具体的な改善案・提案が示してある各論は奮ってた。
土地の活用方法、交通網の整備について、消防や警察機構の制度について、幼稚園を主とする教育機関の充実、衛生面では上下水道の完備を訴え、平時は市民の憩いの場として有事は避難集合場所としての公園の設置を求めるなどなど、大した卓見だと感心した。
そんな中でもいちばん力が入っていたのは、賭博や遊郭など、風俗産業についての提案である。全文の5分の1、あるいは4分の1くらいの分量を、この項目に充てていた。
先ず、吉原だけを公の遊里として認めた江戸幕府のやり方に支持を表明する。何となれば、性風俗(売買春行為)を「根絶やしにする」ことは土台無理な話であり(幾つかの挿話でこれを例証)、ならば、そうした「いかがわしい」産業は一箇所に固めて許可制にすることで、町のいたるところに蔓延る可能性がある「風紀紊乱の種」を一極集中させ、監視・対応しやすくする、悪影響の及ぶ範囲を最低限に抑えるようにする。大意としては大体こんなようなことが書いてあったと思う。
この中で、露伴が解説する吉原以来の性風俗変転の歴史は、大変勉強にもなった。
また、先日見たテレビ番組『ブラタモリ』札幌編でも、やはり遊郭(現すすきの)は土塁(塀?)で囲って一箇所に固めて造ったらしいのを知って、「そのへんのことはさすがにわかって町造りしてんだなあ、どの時代の為政者も」と感心したりもしたものだ。

また、巻末には『水の東京』て掌編も併録されている。
執筆された当時(明治35年)には、まだかなり残されていたらしい江戸以来の運河・水路、そして河川。また、それらが注ぎ込む東京湾について書かれた随筆風の文章である。
江戸の町の水運が発達してたことは、知識としては知ってはいたが、これほどまでに水路が張り巡らされてたんだなあ。と感心してしまった。
埋め立てられたり、暗渠化されたりして、いまではほとんどお目にかかれない水路たち。失われてしまった「首都の水辺風景」が、釣りが趣味だったという露伴の文章によって蘇る。
こうした「いまは失われし河川」を訪ね歩くのもまた、『ブラタモリ』でお馴染みだ♪ と。

現代語訳を担当してるのは、現役の東京都議会員。
本書にあるような「ステキな首都」の実現に向けて、努力して欲しい。なんつって、エラそうにスイマセンm(_ _)m

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