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2015年10月09日23:18
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『躍動と回帰―桃山の美術』に行って来た。
本日はダブルヘッダー明けの半休。世間様に半日先駆ける形で3.5連休に突入♪
連休初っ端は軽めに、この連休いっぱいで会期が終了してまうこちらの展覧会へ！
出光美術館「日本の美・発見�� 躍動と回帰―桃山の美術」
【展覧会HP】http://
タイトル通り、館蔵の桃山期の美術品を特集陳列した企画展。
工芸は茶陶を中心に約90点、絵画は屏風絵ばかり20点を展示（※工芸は6点、絵画は8点、前後期で展示替があったようだ）。
訪問前、チラシだけ見てた時点では、工芸の方がよさげな気がしてたんだけど（自分の趣味もそうだし、出光の所蔵品の全体的傾向もそのキライがあると思うので）、今回は意外にも絵画がよかった♪
【工芸】
展示数のバランスからいっても、展示構成から見ても、美術館側もたぶん工芸の方をメインに据えて企画を立てたんじゃないかと思う。
ただ、きょうのわしの気分もあったか知らんが、どうにも「作為的なモノ」が多い展示内容に、ちょっと拒否反応が。。。
第1章『「うしろ向き」の創造―歪み・割れ・平らかさ』では、我が国以外の各地域では「欠点」「マイナス要素」としか見なされない「歪み」「ひび割れ」「キズ」「シミ」などを逆に愛でてきた、日本人の特異な美的感覚にスポットを当てる。
そう、最初のこのコーナーがまだしも良く感じられたのは、その「歪み」や「ひび割れ」や「シミ」が、意図的に付けられたものじゃない展示品がほとんどだったからだ。
しかしこれが、たとえば織部に顕著に見られるように、あからさまに作為的な「歪み」や「キズ」になってくると、そこからこちらが感じ取る印象はまるで違ったものになってくる。。。
今回の工芸の展示でステキだと感じ入ったのは、第5章『生のうつわ、水のうつわ―桃山茶陶、その「生気」の系譜』というコーナーの辺りにあった、奈良時代の猿投窯の短首壺や、平安時代の常滑の大壷、南北朝時代の信楽の壺など、今回の特集の桃山期のモノから系譜を遡った先にある、古窯の素朴な作品たちだった。その飾り気のない無骨な姿にキュン♪ となった。
それら古陶磁の作品の隣には、それらを模したような桃山期の作品も並べて展示してあったりしたのだが、どうにも「わざとらしさ」や「衒い」のようなものばかり目についてまって。。。
光悦の『赤楽兎文香合』（重文）ですら、きょうのわしにはちょっと「狙いすぎじゃない？ 何かイヤらしいわ」て感じがしたくらい(；´∀｀)
では、桃山期の作品でよかったモノはというと、、、
素朴な風合いの火襷文がステキだった『備前火襷鶴首徳利』とか、飴釉と海鼠釉の色合いが好みだった『高取割山椒形向付』とか、飾り気のなさが魅力的だった長次郎作の『赤楽茶碗・銘僧正』とか、やはりシンプルで作為の感じられぬ造形に萌えた『信楽筒茶碗』などなど。まさに「シンプル・イズ・ベスト」と呼ぶに相応しいような作品たち。織部焼のようなコテコテした装飾美とは対局にあるような作品たちだ（※色合いに萌えた高取の向付は除く）。
いや、桃山陶の装飾美を否定してるわけじゃない。これはあくまで好みの問題と、そして、自分なりに考えた、次のような原因があるんじゃないか？ と。
つまり、作為的・意図的に造形を歪めたり、わざと「ヘタウマ」みたような風合いを加える試みは、桃山時代から400有余年経った時代に生まれた我々から見たら、もう見慣れちゃてるというか、桃山時代よりずっと技術的にも理論的にもしっかりとして「突き抜けた」近現代の工芸にさえ馴染んじゃってる身であるから、いかにも未熟に、中途半端にさえ感じられるところもあるわけで。。。
それまでの長きに亘り、自然に出来た「歪み」や「キズ」をただ有り難がっていたものが、今度はその「歪み」や「キズ」を作者や使用者の意図によってわざと付けるようになるという、この変転。これは陶芸史上において見れば「凄まじく大きな一歩を踏み出した転換だった！」というのは理解出来る。その意味で、桃山時代の茶陶が「歴史的価値」「文化財的価値」が高いのはわかるけど、単純に「造形的妙味」や「味わい」という意味では。。。そんな風に考えたわけだm(_ _)m
あと、会場の最後のとこに展示してあった南蛮蒔絵の特集も、なかなかに興味深く拝見した。
螺鈿とか金蒔絵とか、散りばめ過ぎだろっ！ てツッコミを入れたくなるような、これでもか！ てキンキラ加減(；´∀｀) さすが、派手好みの外国人向け製品である。明治の折に、外貨獲得のため輸出用に造られた超絶技巧のコテコテの品々と相通ずるものを感じたりもした。
【絵画】
いきなり冒頭にあった『竹林図屏風』に心を掴まれた♪
筆者不詳ながら、素晴らしい出来の作品じゃないか！ と。いわゆる「金碧画」の作品（でいいと思う）。竹の緑（緑青）と背景の金地とのコントラストが絶妙だった♪
「筆者不詳」とされる作品は、このほかに3点あったが、ほかは全て「稚拙美」といった風合いのものだったのに対し、本作はかなり「達者な印象」だった。ほかよりうんとテクニカル。
展示作品中いちばん素晴らしいと思ったのは、長谷川等伯筆の2点である♪
一つは『竹鶴図屏風』。いま一つは『竹虎図屏風』。
いずれも竹林を舞台に、2羽あるいは2頭の鳥獣を、それぞれ1匹ずつ右隻・左隻に分けて配した水墨作品だ。
竹鶴図の方は幽玄。墨の濃淡だけでこれほど奥行が出せるのか！ と、思わず唸ってしまった。「日本画は（西洋画に比べて）平坦」とよく言われるが、ここには正規の遠近法は用いられてないにしても、「奥行を感じさせる」という意味においては、あるいはこっちの方が上な気さえした♪
もう一つの竹虎図の方は雄渾。竹の描写も、獰猛な虎の絵柄と相まって力強い。しかし、この時代の虎の図が往々にしてそうであるように、この屏風の虎もどこかチャーミング♪ 顔は厳しくコワモテに描いてあるんだが、動きがやっぱ「猫」なんだよなあ。。。と。そのギャップもまた楽しかったり(；´∀｀)
そして、この等伯の絵と比較して面白くもあった、伝狩野長信の『松に鶴亀図屏風』♪
これは、水墨画の渋みを横溢させまくってた等伯の同画題作（竹鶴図屏風）との比較だけじゃなく、この作品のすぐ隣に展示してあった、筆者不詳のこれも同画題・鶴を描いた作品と見比べてみるのも面白かった。
筆者不詳の鶴図はどこかギクシャクした稚拙美が魅力の作品だったが、さすが天下の狩野派の名の通った絵師の作は凄腕の技巧派。等伯作品と比較した場合には、画面中にガンガン金雲を配し、派手な花鳥を描き、デフォルメしまくった力強い形の岩や木の幹を描き込んで、まさに豪華絢爛。渋みの水墨画とは好対照で面白かった♪
でオーラス。当館に以前からあった、ムンクとルオーの作品を常設する展示室だが、、、
次回の特集展が、日本美術が専門（？）の当館には珍しくルオー展なので、その関係で、宣伝も含め、件の展示室をルオー一色にして、一時的にムンクを外してるのかと思いきや、よく見ると壁面に「ムンク作品の常設展示終了のお知らせ」が貼り出してあった。。。
以前共同で企画した展覧会か何かの縁で、ムンク作品を数多く所蔵するオスロの美術館から、年に数点ムンク作品を借りて来て展示してるというのが、この常設展示室のムンクのコーナーだったはずだ。そのオスロの美術館との提携関係が、どうやら切れたものらしい。。。
いつも、特段熱心に見ることもなく、「飛ばし見」してたこちらのムンク作品ではあるが、こうして終了を知らされると、何だかちょっと物悲しい気持ちになった。。。
しかしまあ全体としては、本日もいい見学が出来たと満足していますm(_ _)m
連休初っ端は軽めに、この連休いっぱいで会期が終了してまうこちらの展覧会へ！
出光美術館「日本の美・発見�� 躍動と回帰―桃山の美術」
【展覧会HP】http://
タイトル通り、館蔵の桃山期の美術品を特集陳列した企画展。
工芸は茶陶を中心に約90点、絵画は屏風絵ばかり20点を展示（※工芸は6点、絵画は8点、前後期で展示替があったようだ）。
訪問前、チラシだけ見てた時点では、工芸の方がよさげな気がしてたんだけど（自分の趣味もそうだし、出光の所蔵品の全体的傾向もそのキライがあると思うので）、今回は意外にも絵画がよかった♪
【工芸】
展示数のバランスからいっても、展示構成から見ても、美術館側もたぶん工芸の方をメインに据えて企画を立てたんじゃないかと思う。
ただ、きょうのわしの気分もあったか知らんが、どうにも「作為的なモノ」が多い展示内容に、ちょっと拒否反応が。。。
第1章『「うしろ向き」の創造―歪み・割れ・平らかさ』では、我が国以外の各地域では「欠点」「マイナス要素」としか見なされない「歪み」「ひび割れ」「キズ」「シミ」などを逆に愛でてきた、日本人の特異な美的感覚にスポットを当てる。
そう、最初のこのコーナーがまだしも良く感じられたのは、その「歪み」や「ひび割れ」や「シミ」が、意図的に付けられたものじゃない展示品がほとんどだったからだ。
しかしこれが、たとえば織部に顕著に見られるように、あからさまに作為的な「歪み」や「キズ」になってくると、そこからこちらが感じ取る印象はまるで違ったものになってくる。。。
今回の工芸の展示でステキだと感じ入ったのは、第5章『生のうつわ、水のうつわ―桃山茶陶、その「生気」の系譜』というコーナーの辺りにあった、奈良時代の猿投窯の短首壺や、平安時代の常滑の大壷、南北朝時代の信楽の壺など、今回の特集の桃山期のモノから系譜を遡った先にある、古窯の素朴な作品たちだった。その飾り気のない無骨な姿にキュン♪ となった。
それら古陶磁の作品の隣には、それらを模したような桃山期の作品も並べて展示してあったりしたのだが、どうにも「わざとらしさ」や「衒い」のようなものばかり目についてまって。。。
光悦の『赤楽兎文香合』（重文）ですら、きょうのわしにはちょっと「狙いすぎじゃない？ 何かイヤらしいわ」て感じがしたくらい(；´∀｀)
では、桃山期の作品でよかったモノはというと、、、
素朴な風合いの火襷文がステキだった『備前火襷鶴首徳利』とか、飴釉と海鼠釉の色合いが好みだった『高取割山椒形向付』とか、飾り気のなさが魅力的だった長次郎作の『赤楽茶碗・銘僧正』とか、やはりシンプルで作為の感じられぬ造形に萌えた『信楽筒茶碗』などなど。まさに「シンプル・イズ・ベスト」と呼ぶに相応しいような作品たち。織部焼のようなコテコテした装飾美とは対局にあるような作品たちだ（※色合いに萌えた高取の向付は除く）。
いや、桃山陶の装飾美を否定してるわけじゃない。これはあくまで好みの問題と、そして、自分なりに考えた、次のような原因があるんじゃないか？ と。
つまり、作為的・意図的に造形を歪めたり、わざと「ヘタウマ」みたような風合いを加える試みは、桃山時代から400有余年経った時代に生まれた我々から見たら、もう見慣れちゃてるというか、桃山時代よりずっと技術的にも理論的にもしっかりとして「突き抜けた」近現代の工芸にさえ馴染んじゃってる身であるから、いかにも未熟に、中途半端にさえ感じられるところもあるわけで。。。
それまでの長きに亘り、自然に出来た「歪み」や「キズ」をただ有り難がっていたものが、今度はその「歪み」や「キズ」を作者や使用者の意図によってわざと付けるようになるという、この変転。これは陶芸史上において見れば「凄まじく大きな一歩を踏み出した転換だった！」というのは理解出来る。その意味で、桃山時代の茶陶が「歴史的価値」「文化財的価値」が高いのはわかるけど、単純に「造形的妙味」や「味わい」という意味では。。。そんな風に考えたわけだm(_ _)m
あと、会場の最後のとこに展示してあった南蛮蒔絵の特集も、なかなかに興味深く拝見した。
螺鈿とか金蒔絵とか、散りばめ過ぎだろっ！ てツッコミを入れたくなるような、これでもか！ てキンキラ加減(；´∀｀) さすが、派手好みの外国人向け製品である。明治の折に、外貨獲得のため輸出用に造られた超絶技巧のコテコテの品々と相通ずるものを感じたりもした。
【絵画】
いきなり冒頭にあった『竹林図屏風』に心を掴まれた♪
筆者不詳ながら、素晴らしい出来の作品じゃないか！ と。いわゆる「金碧画」の作品（でいいと思う）。竹の緑（緑青）と背景の金地とのコントラストが絶妙だった♪
「筆者不詳」とされる作品は、このほかに3点あったが、ほかは全て「稚拙美」といった風合いのものだったのに対し、本作はかなり「達者な印象」だった。ほかよりうんとテクニカル。
展示作品中いちばん素晴らしいと思ったのは、長谷川等伯筆の2点である♪
一つは『竹鶴図屏風』。いま一つは『竹虎図屏風』。
いずれも竹林を舞台に、2羽あるいは2頭の鳥獣を、それぞれ1匹ずつ右隻・左隻に分けて配した水墨作品だ。
竹鶴図の方は幽玄。墨の濃淡だけでこれほど奥行が出せるのか！ と、思わず唸ってしまった。「日本画は（西洋画に比べて）平坦」とよく言われるが、ここには正規の遠近法は用いられてないにしても、「奥行を感じさせる」という意味においては、あるいはこっちの方が上な気さえした♪
もう一つの竹虎図の方は雄渾。竹の描写も、獰猛な虎の絵柄と相まって力強い。しかし、この時代の虎の図が往々にしてそうであるように、この屏風の虎もどこかチャーミング♪ 顔は厳しくコワモテに描いてあるんだが、動きがやっぱ「猫」なんだよなあ。。。と。そのギャップもまた楽しかったり(；´∀｀)
そして、この等伯の絵と比較して面白くもあった、伝狩野長信の『松に鶴亀図屏風』♪
これは、水墨画の渋みを横溢させまくってた等伯の同画題作（竹鶴図屏風）との比較だけじゃなく、この作品のすぐ隣に展示してあった、筆者不詳のこれも同画題・鶴を描いた作品と見比べてみるのも面白かった。
筆者不詳の鶴図はどこかギクシャクした稚拙美が魅力の作品だったが、さすが天下の狩野派の名の通った絵師の作は凄腕の技巧派。等伯作品と比較した場合には、画面中にガンガン金雲を配し、派手な花鳥を描き、デフォルメしまくった力強い形の岩や木の幹を描き込んで、まさに豪華絢爛。渋みの水墨画とは好対照で面白かった♪
でオーラス。当館に以前からあった、ムンクとルオーの作品を常設する展示室だが、、、
次回の特集展が、日本美術が専門（？）の当館には珍しくルオー展なので、その関係で、宣伝も含め、件の展示室をルオー一色にして、一時的にムンクを外してるのかと思いきや、よく見ると壁面に「ムンク作品の常設展示終了のお知らせ」が貼り出してあった。。。
以前共同で企画した展覧会か何かの縁で、ムンク作品を数多く所蔵するオスロの美術館から、年に数点ムンク作品を借りて来て展示してるというのが、この常設展示室のムンクのコーナーだったはずだ。そのオスロの美術館との提携関係が、どうやら切れたものらしい。。。
いつも、特段熱心に見ることもなく、「飛ばし見」してたこちらのムンク作品ではあるが、こうして終了を知らされると、何だかちょっと物悲しい気持ちになった。。。
しかしまあ全体としては、本日もいい見学が出来たと満足していますm(_ _)m
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