「僕たちの家に帰ろう」

中国映画です。
夏休みになっても父が迎えに来ないので、ユグル族の小学生の兄弟は、遠く離れた放牧地にいる両親のもとを目指してラクダに乗って旅に出ます。
兄弟は年齢も近いうえに、親の愛を巡って確執があり、仲がいいとは言えない二人でした。

伝統的に遊牧を行ってきたユグル族は、現在のウイグル族の末裔といわれ、13億もの人口の中国で約1万4000人しか存在しないといわれる少数民族ですが、9世紀には人口30万人を擁する甘州ウイグル王国を建て発展していました。しかし、王国は１１世紀に西夏のタングート族に滅ぼされてしまいました。

古代シルクロードの一部として、かつて繁栄した中国北西部「河西回廊」が舞台なので、カメラは雄大な自然を背景に、中国の秘境「七彩山」や「馬蹄寺石窟」などの名勝も映してくれます。
それらは素晴らしい遺跡なのですが、井戸も川も干上がり、草原は枯れ、村も廃村になっていて、なんとも過酷な旅でした。

酷暑、乾燥に強く、水を見つける天才であるラクダでさえ・・・。
おとなしくて、長いまつ毛のラクダは可愛いく、兄より弟の方が共感できる性格の少年なので、弟とラクダの別れの場面では、弟と共に泣きました。

滅びゆく民族と、かつて栄えた文化への思い、そして現在の経済発展の代償として中国が抱える環境問題、地方の現実を描く映画でしたが、普遍的なテーマでもあります。