mixiユーザー(id:411965)

2015年05月20日21:33

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「黄泉眠る森」本

『黄泉眠る森』
<ストーリー>
 人気ホラー漫画家の椋が描きかけの原稿を残して姿を消した。担当の新人編集員はかつて椋の担当で今はフリーとなった編集者の醍醐真司に助けを求める。一方醍醐は女帝と噂される大物漫画家と邪馬台国をテーマにした漫画に挑もうとしていた・・・
<コメント>
 作者の長崎尚志は『MASTERキートン』や『PLUTO』などの編集を担当していわば原作者的な位置にあった漫画編集者なので、この作品の主人公の醍醐にはかなりの部分で作者が反映されているように思える。そして様々な漫画が実名で出てくるのだけれども、その分析などが実に的確でそのあたりはさすがと感服させられる。
 長編だった前作『闇の伴走者』に対してこの『黄泉眠る森』は全部で4話で構成されていてそれぞれは微妙にリンクし、第一話の謎が第四話で解けるようになっている。しかし、このリンクがものすごく微妙で果たしてリンクする意味があったのか?とちょっと頭をひねってしまった。だって第二話は完全に“邪馬台国はどこだ論争”だし、第三話は“映画に関連するちょっといい話“となって本筋とはあまり絡んでこないのだ。
 だからまあ、これは短編集というか長期連載の物語で本筋に関係ないエピソードを挟みながら展開していく、という連載漫画的な手法だと思ったらいいかな。
 そう思って読むと実に知的で興味深く話が進展していくのが納得できる。第二話の邪馬台国論争はこれまでも別のミステリで読んだことのあるような感じなので“九州説”としてはイマイチだったけれども、それを新連載を目指す女帝と絡ませることでしっかり読ませてくれるし、個人的には第三話の映画の話が実に面白くて中でも監督ウィリアム・キャッスルや俳優ジョー・ドン・ベイカー、そしてBBCの伝説のドラマ『刑事ロニー・クレイブン』を評価している部分がさすがだと感心してしまった。
 とりあえずこの醍醐のシリーズは続けて読まねば、と思わせてくれるところですっかり作者の術中にはまっているのが悔しいけれどもこの人の担当漫画って全部そうだものなあ。

黄泉眠る森: 醍醐真司の博覧推理ファイル
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=411965&id=3546071
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