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2015年04月07日15:13

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『帝都物語』(1〜12巻)を読んでみた。

帝都物語〈1 神霊篇〉
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=18627182&id=255264

<以下、レビューページより転載>

※シリーズの「レギュラー作品」と呼べるようなモノが全12巻ありますが、その12冊分をこちらにまとめてレビューしますm(__)m

平将門がマイブームになったのを機に、手に取って読んでみたんですが、当然ながら(?)将門はあまり関係なかったですね。。。いえ、すっごく重要なキーパーソンであることは間違いないんですが。。。(;´∀`)

昭和60(1985)年〜平成元(1989)年にかけて発表された、荒俣宏の小説デビュー作。
昭和62年には、第8回日本SF大賞を受賞。翌63年には映画化されてヒットしました。
わしは、子どもの頃に観たこの映画版の印象が強かったことで、今回、将門→本作を連想して手に取ってみたんですが。。。

巻1/神霊篇
巻2/魔都(バビロン)篇
巻3/大震災(カタストロフ)篇
巻4/龍動篇
巻5/魔王篇
巻6/不死鳥篇
巻7/百鬼夜行篇
巻8/未来宮篇
巻9/喪神篇
巻10/復活篇
巻11/戦争(ウォーズ)篇
巻12/大東亜篇
て流れで物語は続いてゆきます。

わしが観た映画版は、このうち神霊篇(巻1)〜龍動篇(巻4)までを描いたものでした。
ちなみに、本作を読み進めてる間に、映画版も再見してみたんですが、映画版はかなり詰まんなかったです。小説のアウトラインをなぞってるだけでした。
しかし小説の方は、映画の原作となった龍動篇までのところは、かなり面白かったんです。ここまでのテンションで以降もずっと書き続けてくれてれば、レビュー評価の☆は5つ星でもよかったくらい。
ところが、小説の方も巻6あたりから、徐々にスケール・ダウンしてくる印象でして。。。

巻4で、本作を通しての主人公というか敵役(ダーク・ヒーロー)である加藤保憲は、一旦満洲へ渡って主役の座を降り、巻5は、二二六事件の話になって、この事件の裏で暗躍した北一輝が、帝都・東京を滅ぼそうとする「魔人」の役目を、加藤から引き継ぐんですが、まあ、この巻5・魔王篇までは結構よかった。ところが、巻6で加藤が再び戦後の日本に帰って来て暗躍をはじめるんですが、この人物設定が、何か随分と「小者」な感じになってきててですねえ。。。
いえ、「屍解仙」ていう不老不死の術を使って若返り、人の生き胆を食って、、、なんつうところは、相変わらず凄味があってよかったんですが、しかし、その行動が。。。かつては軍部に籍を置きながらも、独力で関東大震災を引き起こしたり、天体異常を発生せしめ地球そのものをも滅ぼさんとした魔人が、なぜ、いまさら自衛隊員になって、学生運動を煽動したりするのか?
それでも、巻7・百鬼夜行篇は、三島由紀夫に関する描写が面白かったのでまあよかったんです。ちょっとツイテいけなくなったのは、執筆・上梓された当時から見たら「近未来」の話を書いた、巻8〜巻10の間の3冊。
加藤もそうですが、それに対抗する人々も、どんどん小粒化してしまい、当初のスケールのデカさはまるで感じれなくなってしまいまして。。。(-_-;)
ただ、巻10で一旦物語が終わってのち、外伝的に書かれた巻11・戦争(ウォーズ)篇と巻12・大東亜篇は、再び時代を遡り、第二次大戦中が物語の舞台になって、またちょっと面白さが復活した感がありました。ただ、加藤の凄味はあまり感じれないままでしたが。。。大谷光瑞がルーズベルトを呪い殺したりする戦争(ウォーズ)篇は、取り分け読み応えがありました!


まあしかし、当初のわしの考えからは大きく逸脱して、平将門のことなんか全然関係なくなりながらも、12冊最後まで読み通せたのは、シリーズ通して及第点以上の面白さがあったからだと思います。
明治時代の末〜昭和73年まで(本作が書き継がれてる時点ではまだ年号は昭和で、本作の設定する近未来篇では、昭和が73年まで続いてる)、約100年にも亘る歴史物語は実に壮大ですし、著者の博識ぶりを窺わせる伏線や興味深いサイドストーリーも満載(特にわしのお気に入りは、関東大震災後の復興事業。東洋初となった地下鉄の敷設にまつわるエピソードとか)でした。また、幸田露伴や寺田寅彦、三島由紀夫をはじめ、渋沢栄一、甘粕正彦、角川春樹、大谷光瑞、大川周明、チョイ役では森鴎外や泉鏡花、石原莞爾など、名だたる歴史上の(毛色の濃い)人物が登場し、物語に絡んでくるのがとても刺激的で。そうそう、「伝説」の部分の描写も含めれば、平将門を筆頭に、安倍清明、役小角、吉備真備やなんかの名前も登場します!
あと忘れてはいけないのが、ヒロインのひとりである目方(辰宮)恵子という女性キャラが凄く魅力的だったこと。このことは、本作に対するわしの評価をグッと引き上げたことを、最後に付け加えておきます。
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