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2014年11月15日09:00

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〔小説〕八大龍王伝説 【340 アトン会談(前)】


 八大龍王伝説


【340 アトン会談(前)】

〔本編〕
「さすがは兄上。しかしそうなった以上、ユングフラは兄上のお命が心配です。ザッドという者、黒宰相というだけあって、暗殺といった卑劣な形で、兄上を除こうとするやも知れません」
「その心配は、今までは必要かもしれないが、今は無用だ!」ラムシェル王ははっきりと言い放った。
「龍人達がいるからだ」
「ドラゴノイド(竜人)がですか? どこにですか?」
「この部屋にだ!」
「まさか?!」フラーク――いやマークの驚きの声である。
「姫! 地上界の竜人ではない。天界に住んでいた龍人だ。それもかなりの実力を持つ者達だ。幻惑の術で、完全に姿を消し、付帯能力(アドバンテージスキル)の『気配遮断』で、完全に気配を消している。
 この龍人(ドラゴノイド)は、シャカラに仕えていたソヤと、バツナンダに仕えていた蜥蜴男(リザードマン)のオルドレンを通じて、天界から派遣してもらった者達だ。これらが、今、ミケルクスド、ジュリス、バルナート三國の王並びに要人達を四六時中護衛している。
 仮にバルナート帝國前帝王ロードハルト殿を殺した天界の者であろう暗殺者を持ってしても余を始めとして三國の要人を除くことは不可能だ」
「安心しました」姫の言葉である。
「しかし……。それではその者達にマークの秘密を知られてしまったのでは……」
「その心配も無用だ」ラムシェルが続ける。
「彼ら――人数は言えないが……。彼らは余のために動く。余の不利益なことはしない。マークの秘密も彼らの胸の内にだけ留めておく。そのような契約をしてある。契約を違(たが)えた場合は、死んで、なおその魂を永遠に闇の世界に繋がれるという究極の約定による契約だ」
「分かりました兄王! ユングフラは何の憂いもなく、大陸南東の地に赴きます。必ずや、ザッド如きの思惑通りにはさせません」
「ああ。たのんだぞ姫! それにマークも姫をよろしく頼む」
「はっ」
 マークはラムシェルのこの言の葉に、深々と頭を下げた。

 年が明けて龍王暦一〇五五年となった。その一月一五日。ヴェルト大陸の北西の小国――ジュリス王国の北の海岸沿いにある小規模な城であるアトン城に数名の者が集まっていた。
「年明け早々、皆様方に集まってもらったの他でもない。昨年(龍王暦一〇五四年)一年間に起こった出来事を、共通認識として整理し、今後の我々各国が対処していく事項を検討するためである。あくまでも秘密裡にことを進めるため、あえてこのような小城に集まってもらった次第である」
 ここに集まっている数名は皆、様々な色のローブを頭から深々と被っている。
「申し遅れました。今回進行役をさせていただきます私(わたくし)は、ジュリス王国宰相を務めておりますベッルルスと申します。ジュリス王国からの会議への参加は、私(わたくし)ベッルルスと、王のユンルグッホ、そしてボールハイン将軍の三名です」
 最初に話しはじめた男は紅いローブのフードを外しながらこう言った。
 それと同時にジュリスのユンルグッホ王とボールハイン将軍も同じ紅いローブのフードを外し、皆に顔を晒(さら)した。
 続いて黒いローブの者が三人、フードを外した。黒のローブ姿の三人のうち、中央の者が話しはじめた。
「余は、ミケルクスド國の王ラムシェルである。ミケルクスド國からの参加は、余とライヒター将軍並びにハリマ将軍の三人である」
「続いて、バルナート帝國です。バルナート帝國からは、ネグロハルト帝王、私(わたくし)宰相のマクダクルス、白虎騎士団のライアス軍団長の三人がこの会議に参加しました」
 バルナート帝國側のローブは銀色であった。
「最後になります。私がフルーメス王国から参加しました宰相のヘラフィです。皆様、初めまして……。我がフルーメス王国は場所の関係から王のヅタトロは出席することはかないません。ご容赦いただきたい」
 蒼いローブを着た男が一人、最後にフードを外した。
 この十名がアトン城の一室に集まった総勢であった。十名とはいえ、そうそうたるメンバーである。
 この部屋で姿が可視である人物は前述した十名の地上界の人であるが、それ以外に数名の不可視の者達がいた。各国の王や要人を護衛している天界の龍人(ドラゴノイド)や蜥蜴男(リザードマン)である。
「ソヤ! オルドレン! この城の内外に不穏な動きはないか?」
「はっ! 城内は私、ソヤが……。城外はオルドレンが指揮して見張っておりますが、今のところ何の異常もございません」
 バルナート帝國帝王ネグロハルトの問いかけに、姿を現した龍人(ドラゴノイド)のソヤが答えた。
「よろしい。後、数名客人が来る予定であるが、少し遅れているらしい。先に昨年である龍王暦一〇五四年の出来事を順番に説明し、お互いの共通認識として確認し合おう」ミケルクスド國のラムシェル王の言の葉である。
「分かりました。ラムシェル王! それではジュリス王国の私(わたくし)が、進行役という役柄からお話ししていきましょう」こう言うとジュリス王国の宰相ベッルルスは語り始めた。
「先ずは龍王暦一〇五四年一月一日のソルトルムンク聖王国の王城で行われたジュルリフォン聖王の昇位式の件でございます」
「しょういしきですか?! ベッルス宰相殿!」
「ベッルルスです。ハリマ将軍殿」
 ハリマ将軍の名前の間違いを軽く訂正してベッルルスは話を続けた。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王)

(神名・人名等)
 オルドレン(跋難陀龍王に仕えていた蜥蜴男)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の聖王)
 ソヤ(沙伽羅龍王に仕えていた龍人)
 ヅタトロ王(フルーメス王国の王。四賢帝の一人)
 ネグロハルト帝王(バルナート帝國の帝王)
 ハリマ(ラムシェル王の家臣。ラムシェルの右脳と呼ばれる人物)
 フラーク(マークの偽名)
 ベッルルス(ジュリス王国の宰相)
 ヘラフィ(フルーメス王国の宰相)
 ボールハイン(ジュリス王国の将軍)
 マーク(シャカラの親友。レナの兄)
 マクダクルス(バルナート帝國の宰相)
 ユングフラ(ラムシェル王の妹。当代三佳人の一人。姫将軍の異名をもつ)
 ユンルグッホ王(ジュリス王国の王)
 ライアス(バルナート帝國四神兵団の一つ白虎騎士団の軍団長)
 ライヒター(ラムシェル王の家臣。ラムシェルの右腕と呼ばれる人物)
 ラムシェル王(ミケルクスド國の王。四賢帝の一人)
 ロードハルト前帝王(バルナート帝國の前帝王。四賢帝の一人。故人)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南の超弱小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。現在はツイン地方のみが国土)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 アトン城(ジュリス王国の北の海岸沿いの小城)

(兵種名)

(付帯能力名)
 付帯能力(その人物個人の特有の能力。『アドバンテージスキル』という。十六種類に体系化されている)
 気配遮断スキル(十六の付帯能力の一つ。自らの気を鎮めることにより、気配を遮断する能力)

(竜名)
 リザードマン(十六竜の一種。竜と人との混血で、人の血が多く混じっている種類。『蜥蜴男』とも言う)
 ドラゴノイド(十六竜の一種。竜と人との混血で、竜の血が多く混じっている種類。『竜人』とも言う)

(武器名)

(その他)


〔参考二 大陸全図〕
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