mixiユーザー(id:15312249)

2014年10月25日11:16

19 view

〔小説〕八大龍王伝説 【337 六将制度(後)】


 八大龍王伝説


【337 六将制度(後)】


〔本編〕
 七國全てと国境を接している当時のソルトルムンク聖王国において、東西南北全ての国境が戦場でありました。それ故、将軍が全ての戦場に出払っているなどの現象がしばしば起こり、そのような時に新たな敵が侵略してきた場合、或は最前線に援軍が必要な場合など、当時のブーリフォン聖王子がその戦いの現場に向かったと古文書には記されております。
 ブーリフォン聖王は二〇年間の聖王子時代の間にその当時の聖王国軍を全て把握なさったと推察できます。そのような王でありましたため、聖王に即位された時に、戦場を一緒に走り回った有能な人材を積極的に登用していったのです。それが、六人の将軍――六将なのです。
 つまり人材あっての六将制度であり、王と将は戦場を共に走り回った戦友であるため、『鉄の絆』と言われるほどの主従関係であったのです。つまり『人』と『絆』があって初めて可能な制度なのです。六将制度は……。
 いずれにせよ、ブーリフォン聖王に任命された六将は各戦場で勝利に勝利を重ね、ついにソルトルムンク聖王国をヴェルト大陸一の超大国に成長させたのです。南方に位置していたフルーメス王国などヴェルト大陸の地から追い落とされ、大陸南方の小さな島に追いつめられたぐらいでした。
 それが今のフルーメス王国ですが、龍王同士の調整により、滅亡は間逃れましたが、実際に龍王暦一〇五〇年代現在の小国であるジュリス王国、フルーメス王国、ゴンク帝國、クルックス共和国、ミケルクスド國の五カ国は、龍王暦二〇〇年代に国土をほとんど奪われ、龍王同士の調整がなければ滅びていただろうと伝えられています」
「小生は、その当時(龍王暦二〇〇年代)に果たせなかった聖王国の悲願を果たそうと六将制度を提案しているのです。ジュルリフォン聖王!!」ザッドが口を差し挟んだ。
「だから……。宰相閣下! 今の聖王国に六将に値する人材がおられると本気で思っているのか!」
「当てはある! ……その人材の選定は小生にご一任頂けないでしょうか? 聖王陛下」ザッドのこの言葉の冒頭は歴史編纂担当の大臣に、後半部分はジュルリフォン聖王に対して発したものである。
「『鉄の絆』の件はどうなのだ? 宰相!」
「ははっ! 王よ。王の力が強大であれば、何ら問題はございません。そこも小生にお任せ頂ければ、万事安泰でございます」
「宰相様!」その時、ザッドの家来がザッドに近づき耳打ちをした。
「おぉ〜。ウバツラ様から謁見のお許しをいただきました。王並びに大臣方。直ちにウバツラ様の滞在しておられるお部屋までお越しいただきたいと思います」
 そう言うと、ザッドは王を先導するように先を歩き始めた。

 さて、王城マルシャース・グールの一室に、黄金のローブをまとった身長百九十センチメートルを超える大柄な人物と、黒いローブをまとった身長百五十センチメートル程度の小柄な人物が相対している。
「ウバツラ様。お疲れ様ではございませんか?」小柄な人物が頭(こうべ)を垂れながら大柄な人物に話しかけた。
「無事に顔見せも終わったようだな。ザッド、貴様の思い通りにことが進んでいるな」
「ははっ。これもウバツラ様のおかげでございます」小柄な人物――ザッドの言葉である。
「もう茶番はよいぞ。宰相よ。ここにはわしと貴様しかおらぬ。ウバツラなどという天界の糞虫(くそむし)のような名前でわしを呼ぶな!」
「失礼致しました。それではラハブ様。顔見せお疲れ様でございました」
「うむ」ラハブと呼ばれた大柄な人物は初めて笑みをたたえた。
「しかし、神とはいえ天界の神ではなく、地下の闇の世界の神である魔将とは、謁見した者は誰も気づかなかったようだな。滑稽なことである。ハッハッ」
「それは仕方ございません。人は、人と神の違いは、優れた者(人)であれば、それぞれが発する『気』によって覚(し)ることはできます。しかし、神の気を感じても、人ではそれが天の者か地の者かは区別することは不可能です。さらに、ラハブ様は魔界におかれましては、闘神の部類に入ります魔界六将のお一人。『気』の種類からいけば、天の闘神である八大龍王と同じような『気』を有しております。その区別は人の身では絶対に不可能でございましょう」
「なるほど」ラハブと呼ばれた魔将はザッドの言葉に大きく頷いた。
 ところで読者諸君は、このラハブという魔将の名にご記憶はおありだろうか?
 この当時より遡ること二年前の龍王暦一〇五一年一〇月二〇日、第一次ヴェルト戦役の最終戦。ソルトルムンク聖王国のシャカラと、バルナート帝國のバツナンダが、バルナート帝國の帝都ドメルス・ラグーン付近でぶつかり合った戦いで、シャカラの霧の結界が、バツナンダの奇策により消滅した時のことである。
 それによりほぼ全軍を帝都攻略戦に投入していたソルトルムンク聖王国の王城マルシャース・グールは、敵に対して無防備な状態になったのである。その時にザッドが援軍として闇の軍勢を借りる時に頼ったのが、今黄金のローブをまとってウバツラになりすましている神――魔界六将の一人ラハブなのである。
 結局、この時は援軍の必要はなかったが、それ以来、ザッドはラハブとの交流を続けていたのである。
 いや、援軍の話よりかなり前からザッドとラハブの親交は続けられていたのであろう。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王)

(神名・人名等)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の聖王)
 ブーリフォン聖王(龍王暦二一〇年に即位されたソルトルムンク聖王国の聖王)
 ラハブ(魔界六将の一人)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 ドメルス・ラグーン(バルナート帝國の帝都であり王城)
 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)


〔参考二 大陸全図〕
フォト

2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する