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2014年10月11日08:32

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〔小説〕八大龍王伝説 【335 ゴンク帝國とクルックス共和国】


 八大龍王伝説


【335 ゴンク帝國とクルックス共和国】


〔本編〕
 バルディアーサー処刑後、三日目の同年七月二日に、ゴンク帝國の復活に関する事項が、ソルトルムンク聖王国宰相ザッドの口より発表された。
「ゴンク帝國は、龍王暦一〇五三年七月一九日をもって復活する。帝王は元ゴンク帝國の帝王ニーグルアーサー陛下……。」この宣言で始まり、続いたザッドの言葉は驚愕以外の何物でもなかった。
「ゴンク帝國の領土は、現在、ソルトルムンク聖王国の南方の地――ツイン地方とする。そして、帝都は現在、修復中のツイン城。元ゴンク帝國の兵及び住民はツイン地方へ移住するように……。
 そして、元々ゴンク帝國領であったヘルテン・シュロス周辺地域とそれを含む五地方は全て一旦、ソルトルムンク聖王国が接収し、後にバルナート帝國、ジュリス王国、ミケルクスド國それぞれに割譲する。割譲時期は来年の龍王暦一〇五四年二月を予定している。
 尚、ツイン地方に置かれているマルドス、カムイの両城には、我が聖王国の駐在官を当面配置する。以上である」
 この発表がザッドの口から発せられた瞬間、ゴンク帝國の事実上の滅亡が決した。
 読者諸君のご記憶には残っていると思われるが、ツイン地方はこの地方の一割が海岸を持つ盆地で、南方の海岸線を除く三方は山々に囲まれている。
 ここは龍王暦一〇五〇年の九月に、グラフ将軍率いる当時の聖王国の残党軍と、バルナート帝國玄武兵団の軍団長であるヴォウガーが戦った地域である。ここから聖王国軍の反撃の烽火(のろし)が上がるのであるが、当時、ハクビという名前で記憶を失っていたシャカラが参戦していたことを読者の皆様は思い出していただけたであろうか。
 とにかくツイン地方は、ツイン盆地の部分のみが平野部で、その面積は一平方キロメートルに満たない土地で、土地そのものも痩せている地域である。おそらく、山岳部分も併せて一万人がやっと暮らせる程度の食料しか手に入らないであろう。
 住民が一万であれば、兵はせいぜい百がいいところで、すでに國と呼べるかどうかの小規模な組織集団となる。
 この当時、ヴェルト大陸の南方に位置する島国であるフルーメス王国は、ヴェルト八國のうち最も小さい國として『南の弱小国』と呼ばれていたが、そのフルーメス王国ですら百万の国民を有している。その百分の一の人口しかない新生ゴンク帝國がどれだけ小規模か読者諸君は理解できるであろう。
 さらに、そのツイン地方の北の唯一の出入り口にあたる二本の山道の途中に立てられているマルドス城とカムイ城。
 マルドス城は通称山の城、カムイ城はカムイ湖という湖の真ん中の小島に立っていることから通称谷の城と呼ばれるが、どちらも鉄壁の堅城であり、これらの城を攻略しないことには、百人規模以上の人数でツイン地方に入ることも出ることも不可能なのである。
 それらの二城に当面の間とはいえ、聖王国の駐在官と兵が配備されるのである。ゴンク帝國にとっては、領土拡大の機会すら奪われたと考えていいであろう。
「これでゴンク帝國は実質滅んだようなものです。元々のゴンク帝國の五地方のうち、帝都であったヘルテン・シュロスと竜の産地である竜の山脈――ドラッヘゲビルデのあるヘルテン地方と、そこに隣接するゴンク帝國内で最も大きな面積を持つフエテン地方を我が聖王国の領土といたします。
 残りの三地方をバルナート帝國、ジュリス王国、ミケルクスド國のそれぞれ割譲いたしますが、どの地方もそれらの國とは大きく隔てた飛び地となるため、実質的な領土と成り得るとは考えにくいでしょう。その割譲にしても来年の二月と明言はいたしましたが、緩々と引き伸ばし外交により、素直に領土を割譲するつもりはありません。聖王国の強者の理論を用いれば可能な戦略と思われます」
 ジュルリフォン聖王が数名の大臣と共にザッドからの説明を受けているところである。時は龍王暦一〇五三年七月五日にあたる。
「続きまして、クルックス共和国の復活についてですが……」これがこの年に決定されることになる第二の事項である。
「クルックス共和国の首相にユスィソンクルの末裔にあたりますソンバスを任命し、共和国を復活させます」
「ユスィソンクルと言えば、クルックス共和国の首都の名前にもなっているスピュアリューア・ユスィソンクルのスピュアリューアと並び称されるクルックス共和国の共和制に尽力した人物の一人。その人物の末裔を首相に据えるか。共和の四主との激突は必至だな」そこにいる一人の大臣がそう呟いた。
「千年前の龍王暦元年に初代ワシュウキツの両腕となってクルックス共和国の建国に尽力した二人の人物――スピュアリューアとユスィソンクルと言えば、聞こえはいいが、結局クルックス共和国建国から五年で二人は意見を衝突させ、ユスィソンクルはスピュアリューアとの政戦に敗れ、歴史の表舞台から消えた。
 その後、千年以上に及ぶクルックス共和国の首相の座は、スピュアリューアの一族や関係者によって占められており、ユスィソンクルの一族や関係者の首相経験者は五名に満たない。それも龍王暦二百年代のソルトルムンク聖王国が超大国へと発展するきっかけとなった『六将大戦役(りくしょうだいせんえき)』によってクルックス共和国に影の支配者である『共和の四主』が誕生してからは、ユスィソンクルの子孫は首相とはいえ、実質的なスピュアリューアの子孫の傀儡に過ぎない……。なぜなら、共和の四主は必ずスピュアリューアの一族から選ばれるからな」
「そのような経緯の中、あえてユスィソンクルの子孫にあたりますソンバスをクルックス共和国の首相に任じます」ザッドが大臣からの話を引き継ぎ、ジュルリフォン聖王に進言した。
「ソンバスは共和の四主による支配から首相による実効支配を目指している者です。ソンバスに聖王国の兵を貸し与えて、首相に任命すれば、必ず共和の四主との確執が生じるはずです。それを好機として我が聖王国が……」
「軍を動かせば、クルックス共和国領も併呑できると、宰相は言いたいのであろう」
「さすがは聖王陛下。その通りでございます」
「そのように手筈どおり事が運べばよいが……」
「ご心配は無用です。王! 万事、この小生にお任せください」



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王)

(神名・人名等)
 ヴォウガー(バルナート帝國四神兵団の一つ玄武兵団の軍団長。故人)
 グラフ(ソルトルムンク聖王国の天時将軍)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の聖王)
 スピュアリューア(クルックス共和国を建国した人物)
 ソンバス(クルックス共和国の首相。ユスィソンクルの末裔)
 ニーグルアーサー帝王(ゴンク帝國の帝王)
 ハクビ(記憶を失っていた頃のシャカラ)
 バルディアーサー(ゴンク帝國の王弟であり将軍)
 ユスィソンクル(クルックス共和国を建国した人物)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 カムイ城(ツイン城を守る城。通称『谷の城』)
 スピュアリューア・ユスィソンクル(クルックス共和国の首都)
 ツイン城・ツイン地方(ヴェルト大陸最南端の城とその城のある地方)
 ドラッヘゲビルデ(ゴンク帝國の東に位置する山脈。八つの山から成り立っており、大陸で一番 ドラゴンが生息している場所。『竜の山脈』とも言う)
 フエテン地方(元ゴンク帝國の一地域)
 ヘルテン地方(元ゴンク帝國の一地域)
 ヘルテン・シュロス(ゴンク帝國の帝都であり王城。別名『堅き城』)
 マルドス城(ツイン城を守る城。通称『山の城』)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)
 共和の四主(クルックス共和国を影で操っている四人の総称。風の旅人、林の麗姫(れいき)、炎の童子、山の導師の四人)


〔参考二 大陸全図〕
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