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2014年05月24日07:25

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〔小説〕八大龍王伝説 【314 反乱と帝國(六) 〜声明〜】


 八大龍王伝説


【314 反乱と帝國(六) 〜声明〜】


〔本編〕
 この日より三日後の同年一月一八日。ゴンク帝國の帝王ニーグルアーサーとソルトルムンク聖王国の聖王ジュルリフォン共同の声明がゴンク帝國全土に向けて発せられた。
 その内容はこうであった。
 一つ、ゴンク帝國の王弟であり将軍であるバルディアーサーが、謀反を起こした。
 一つ、その謀反の内容はゴンク帝國の帝王であるニーグルアーサーを除くことと、ソルトルムンク聖王国のジュルリフォン聖王を除き、ゴンク帝國とソルトルムンク聖王国を混乱させることである。
 一つ、そのためにカルガス國の残党と連携をとった。ゆくゆくはバルディアーサー本人がゴンク帝國とソルトルムンク聖王国を併せた領土を支配するためである。
 一つ、それを事前に察したジュルリフォン聖王は、先手をうち、バルディアーサーを拘束。さらにゴンク帝國の帝都であるヘルテン・シュロスを聖王国の兵で占拠した。
 一つ、バルディアーサーとそれに加担した者は全て捕らえられた。カルガス國の残党を鎮圧した暁には、謀反を企てた者全員を死罪にする。
 一つ、この企みにニーグルアーサー王自身は係わってはいないが、一家臣とはいえ、王族から謀反者を出し、かつそれを見抜けなかった帝王の罪は免れない。
 一つ、さらに他国の王の殺害まで考えていた企てであるため、その罪は見過ごし難い。
 一つ、これに対してソルトルムンク聖王国は防衛策として、ゴンク帝國の領土を一旦、聖王国の領土とし、カルガス國の残党を片付け次第、ニーグルアーサーに返還する処置をとる。
 一つ、それまではニーグルアーサーの身柄は聖王国が確保し、帝都であるヘルテン・シュロスも聖王国が占拠を継続する。
 一つ、その関係で、聖王国の軍勢二万全てはヘルテン・シュロスにとどまり、ゴンク帝國の兵二万のみで北上して、カルガス國の残党を討伐する。

 以上のような情報が、これよりさらに三日後の一月二一日にミケルクスド國の王であるラムシェル王の耳に入り、同日、ソルトルムンク聖王国の人和将軍ドンクとその副官シェーレにその情報が披瀝された。
「この聖王国の処置に対し、余は承服できない!」ラムシェル王の言の葉である。
「それは、バルナート帝國ネグロハルト帝王も、ジュリス王国のユンルグッホ王も同意見であるとの確認も余がとり、今後のこの三國の行動は余の一存に任された。従って、バルナート帝國を始めとする三國の連合軍は、バルナート帝國の帝都ドメルス・ラグーンに軍を駐屯させ、これ以上の進軍は停止する。
 そしてドンク殿! 貴殿と貴殿の率いてきた一万の聖王国兵の行動も阻止させてもらう。バルナート、ジュリス、ミケルクスドの三國は聖王国の処置に干渉すべく、カルガス國残党の討伐戦参戦を拒絶する。ドンク殿! 貴殿の家臣からこれをジュルリフォン聖王に伝えてもらう。よろしいな」

「困ったことになったな。シェーレ!」
「ああ」
 一月二一日の夜八時。ドンクとシェーレはバルナート帝國の帝都ドメルス・ラグーン内の一室にいた。二人は一万の聖王国軍の兵から引き離され、この一室に監視つきの状態であった。
 彼らが率いてきた一万の聖王国兵は、ドメルス・ラグーン城内に駐屯させられていた。当然、二万程度のバルナート帝國の兵により、包囲されている状態であった。
「とりあえず、マルシャース・グールのグラフ将軍と、ゴンク帝國の帝都にいらっしゃるジュルリフォン聖王には、この状態を早馬にて伝えたが、この後はどうしようかぁ〜」
「そうだな」ドンクの問いかけに彼の副官シェーレは、気の無い返答であった。
「……どうした! シェーレ。気のない返事だな。さすがのシェーレも打つ手なしか」
「……馬鹿いえ! お前と一緒にするな。少し今後のことを思案していただけだ」
「さすがは俺のシェーレだ。何かいい手が見つかったか!」
「手はあるが……ドンク。お前が、覚悟ができるかどうかだけが心配で、悩んでいた」
 ドンクは首をかしげてそのシェーレの問いかけに答えた。
「俺に覚悟? 俺はお前のためならどんなことも厭わないぞ。……で、どんな覚悟だ?」
「ドンク! お前は私と別れることができるか?」
「……」ドンクは答えられなかった。というより、シェーレの言った意味をよく理解できなかったのである。
「……シェーレと別れる? どういう意味だ。シェーレ」
「言葉のままだ。一緒には暮らせなくなるということだ!」
「……いや。やはり意味が分からない。シェーレ! お前は俺が嫌いになったのか?」
「そうではない! 私はお前が大好きだ。――しかし、長い眼で見るとそうせざるを得ないのだ。今から順を追って説明する」シェーレはそう言うと、ゆっくりと話始めた。
「先ず、今回のカルガス國の残党の決起と、聖王国のゴンク帝國帝都占拠の流れによって、私たちは、ミケルクスドのラムシェル王から疑われ、身柄を拘束されたが、このまま座していたらヴェルト大陸全体を再び戦乱の世に戻してしまうことになる。それはなんとしても阻止すべきだと、私は思う」
 そう言うと、シェーレは一旦、話を止め、水を扉の外にいるバルナート帝國兵に要求した。どうやら長い話になるのだな……とドンクは感じた。
 シェーレが長い話をする前に水を飲むのが通例だからである。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王。ウバツラ陣営)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営)
 徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営)
 阿那婆達多(アナバタツタ)龍王(カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される)

(神名・人名等)
 グラフ(ソルトルムンク聖王国の天時将軍)
 シェーレ(ドンク将軍の副官)
 ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の聖王)
 ドンク(ソルトルムンク聖王国の人和将軍)
 ニーグルアーサー帝王(ゴンク帝國の帝王)
 ネグロハルト帝王(バルナート帝國の帝王)
 バルディアーサー(ゴンク帝國の王弟であり将軍)
 ユンルグッホ王(ジュリス王国の王)
 ラムシェル王(ミケルクスド國の王。四賢帝の一人)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 ドメルス・ラグーン(バルナート帝國の帝都であり王城)
 ヘルテン・シュロス(ゴンク帝國の帝都であり王城。別名『堅き城』)
 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)


〔参考二 大陸全図〕
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