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2014年05月18日20:03

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〔小説〕八大龍王伝説 【313 反乱と帝國(五) 〜八大童子〜】


 八大龍王伝説


【313 反乱と帝國(五) 〜八大童子〜】


〔本編〕
 バルディアーサーが諦めようとしたその時である。
「いや、宰相。バルディアーサーならそのぐらいの事は起こしかねない程の人物と朕は考えるが……」それは、ソルトルムンク聖王国の王であるジュルリフォンの言の葉であった。
「何をおっしゃります。聖王! これは……」
 そう言いかけたザッドを制し、ジュルリフォン聖王は王弟バルディアーサーに問いかけた。
「何故、このような大掛かりな策略を御身一人で行おうとした?」
「聞きたいか?! 聖王!」
「ああ! 実の兄を裏切ってまでの理由は何だ?」
「わしは……」
 バルディアーサーは驚きながらも、それを面には出さずに、ジュルリフォン聖王の流れに乗った。敵であるはずのジュルリフォン聖王が、何故、助け舟を出したかは定かではないが、これに乗るしかゴンク帝國の未来はなかった。
 バルディアーサーは続けた。
「わしは、兄ニーグルアーサーが憎かった。一つ年上というだけで凡庸なのに、王位につく事ができ、わしは、文武両道に優れていると自他共に認められているにも係わらず、軍事のみを預かることしか出来ない臣下の一人となったのである。その差は天地ほどの隔たりがある。何故、一年遅かったというだけでこのような仕打ちを受けねばならぬのか!
 わしにはそれが不満であった。結局、ニーグルアーサーは二度もこの『堅き城』と称されており、難攻不落を誇った帝都ヘルテン・シュロスを陥落させられるという失態を演じた。これぞ愚王の極みというべきものだ。しかし、國がバルナート帝國に滅ぼされ、ソルトルムンク聖王国の手によって復活されると聞き、わしにもチャンスがきたと思った。
 しかし、聖王国はニーグルアーサーを帝位に戻すことしかしなかった。わしにはニーグルアーサーと聖王国を除くことが、ゴンク帝國の帝王につける道と悟ったのだ。これが全てだ。これ以上はない!」
「一つ聞きたい。ゴンク帝國復活前に朱雀騎士団の残党を攻撃せず、バルナート帝國に利する行為をしたのは何故だ!」
「聞きたいか。……それは聖王国よりバルナート帝國の方が能力を重視した正当な評価ができると判断したからだ」
「……よく分かった」ジュルリフォン聖王はバルディアーサーの目をにらみつけ、続けた。
「これはゴンク帝國の王弟バルディアーサーのゴンク帝國及びソルトルムンク聖王国に対する反乱だ! よってバルディアーサーに関連のある者は全て死罪とする」
「王! お耳を……」宰相ザッドが慌てたようにジュルリフォン聖王に小声で話しかけた。
「お人払いをお願いいたします」……と。
 ジュルリフォン聖王はその言葉に頷き、一度玉座の間からザッド以外を退室させた。
 その時、ジュルリフォン聖王は一言皆に向かって言った。
「帝王の無罪は証明された。ニーグルアーサー王の縛(ばく)を解くように」と……。

 さて、ザッドは深いため息の後、口を開いた。ジュルリフォン聖王とザッドしかいないゴンク帝國帝都ヘルテン・シュロスの玉座の間であった。
「聖王。困ります。せっかくの罠が台無しでございます。王! 小生の言ったとおりに行動してもらわないとこちらの段取りが狂ってきます」
「王である朕が、宰相のお前の指示通りにしろというのか?」
「……」ザッドがしばし黙った後、口を開いた。
「それでは言い方を変えます。……我ら共通の主であるリーダーの悲願成就のために従っていただけないでしょうか? ショウジョウビク!」
「ザッド!! いくら誰もいないとはいえその名で朕を呼ぶな!」
「……そうはおっしゃいますが……。あまりにも聖王がお聞き分けないゆえ、我らの序列をお忘れになったかと思いまして……。序列でいけば、ショウジョウビク! あなたより、セイタカドウジの小生の方が位は上なのですぞ! そこのご認識をしっかりもっていただかねば……。」
「分かっている。朕としてもリーダーの意思に沿うべく働いた次第だ」ジュルリフォン聖王は続けた。
「あそこでニーグルアーサー帝王を除くのは容易いかもしれない。しかし、それをすれば、ゴンク帝國全国民を敵に回す。むろん他国も黙ってはいない。おそらく、バルディアーサーのみの処分でも、他国の干渉はあると思うが、それ以上の国家間の軋轢(あつれき)を生む。ここは、ニーグルアーサーを生かし、ゴンク帝國を存続させた方がよりスムーズに聖王国のヴェルト大陸全土制覇がなすと朕が判断したからだ!」
「なるほど! そのような御深遠、御遠謀がございましたとは……。差し出がましい口を挟みまして申し訳ございません。聖王のお心がご理解できましたので、後は小生に処置をお任せいただきたいと思います」
「よかろう。ザッド! 全てそちに任せよう。それにしてもショウジョウビクという呼び方は二度と許さぬ。それだけは肝に銘じておけ!」
「ははっ! 申し訳ございません」ザッドは深々と頭を下げ、処分の再開に向けて、人々を玉座の間に呼び戻し始めた。
 さて、ショウジョウビクとは『清浄比丘』、セイタカドウジとは『制多迦童子』と記す。どちらも天界に存するといわれる伝説の八大童子の名前である。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王。ウバツラ陣営)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営)
 徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営)
 阿那婆達多(アナバタツタ)龍王(カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される)

(神名・人名等)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の聖王)
 ニーグルアーサー帝王(ゴンク帝國の帝王)
 バルディアーサー(ゴンク帝國の王弟であり将軍)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 ヘルテン・シュロス(ゴンク帝國の帝都であり王城。別名『堅き城』)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)
 朱雀騎士団(バルナート帝國四神兵団の一つ)


〔参考二 大陸全図〕
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