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2014年04月27日15:59

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〔小説〕八大龍王伝説 【310 反乱と帝國(二) 〜反乱軍の実力〜】


 八大龍王伝説


【310 反乱と帝國(二) 〜反乱軍の実力〜】


〔本編〕
「ハッハッハッ導師様! それは心配しすぎてございましょう。ソジラールセンは確かに五賢臣の一人かもしれませんが、五賢臣事態が『誤賢臣』と揶揄されるほど、カルガス國を滅ぼした愚か者の俗称になるくらいです。
 いわんやヲーサイトルの十将に関していえば、ヲーサイトル自身は確かに神将と呼ばれる程の者かも知れませんが、しょせんはその将に付き従っているだけの犬に過ぎません。まあ、すぐにでも導師様の杞憂は晴れるでしょう……」そう言うと炎の童子は大声で笑った。
「童子様! 火急でお耳にいれたき儀がございます!!」炎の童子の笑い声が治まる前に、一人の兵士が共和の四主の座っている幕の中に飛び込んできた。
「何だ!騒々しい!! ここが四主の集まる場所と心得てか!」
「炎の童子様! 我が炎の侵略軍が敵の伏兵に囲まれ、全滅しかかっております! カルガス残党の罠に陥りました!! すぐに援軍を……」
「何!! そんな馬鹿なことがあるか!!」炎の童子は、注進した兵を叱り飛ばした。
「炎の六将の率いた軍だぞ! そう簡単にやられるものか!」
「それが……イチエン(一炎)様からリクエン(六炎)様まで、全て敵の矢によって命を落とされました。六将様全てを失った我が軍は、支柱を失い右往左往しております。このままでは本当に全滅してしまいます」
「……」この兵の報告に、さすがの炎の童子も二の句が告げられなかった。
「敵将は?!」山の導師が報告してきた兵に尋ねる。
「はっ! ヲーサイトル十将の一人クルムヲーと思われます」
「十将一の智将と謳われているクムルヲーか! やはりな……ここはわしが出る!」そう言うと山の導師が立ち上がった。
「導師様直々にお出になる必要は……」炎の童子はそう言った。
 それに対し山の導師は、
「いや、攻めに関してはお主の右に出る者はいない。しかしながら、この戦いは、我がクルックスの領土を守るのが本来の目的だ。智将クムルヲーを攻め破るのは、残念ながら我が四主には不可能であろう。
 それならば、六國の連合軍が来るまで、我が領土を守り抜くまでだ! 鉄壁の守りこそ、わしである山の導師の本領発揮のところ。先ずは、クルムヲーの軍に包囲されている炎の軍を救うため、全軍をその地に投入する! (林の)麗姫様! (風の)旅人殿! 兵をお借りしますぞ!」山の導師は、林の麗姫と風の旅人が頷くのを目にするや、この狭い一角を後にして、戦場へ向かっていった。

 年が明けて龍王暦一〇五三年一月一八日午前。ソルトルムンク聖王国の人和将軍であるドンクの軍一万は、バルナート帝國を始めとする北方三國の軍と合流するため、バルナート帝國の帝都ドメルス・ラグーンに向けて、北上を続けていた。
「やはりかなり時間がかかったなぁ〜シェーレ! 半月での軍の整備はかなりの難題とは思ったが、まさか、一月以上要するとは思わなかった」
「それは仕方あるまい。先ずは聖王が同行する地利将軍マクスール軍の軍備が最優先され、その後がグラフ将軍の防衛軍の整備だからな。我が軍の軍備は後回しにされるのは当然の結果と言えよう」ドンクの愚痴に副官のシェーレがそう答えた。
 この二人は将軍と副官という間でありながら夫婦である。二人だけの会話では、このような対等な言葉遣いの会話となるのである。
「後一日程度の行程でドメルス・ラグーンには到着するが、手遅れになっていなければいいが……」
「それは大丈夫だ! 私の放っている斥候によると、カルガス反乱軍は、クルックスの共和の四主との間で、膠着状態に陥っているそうだ! どちらも戦力を消耗させているという、我が宰相閣下の望まれている形になっているらしいが……」
「ザッドはクルックス共和国を復活させる気はないのかな?」
「まず有り得ないな! カルガスとクルックスが共倒れになれば、その領土は聖王国のものだからな!」
「一応、自分は聖王国の人間だから喜ぶべきことなのかな? 領土が増えるということで……」
「宰相閣下の敵にさえならなければな……」シェーレがこのような意味ありげなことを言った時であった。
「ドンク将軍! シェーレ様! 前方に軍勢が見えます。およそ二万です!!」見ると二人の位置から五十キロメートル前方に多勢が見えた。
「馬鹿! 何故このような近くになるまで気付かなかった」シェーレが報告にきた兵に罵声を浴びせた。
「申し訳ございません! まさか北方から敵が向かってこようとは思ってもみませんでしたので……」
「過ぎたことは構わぬ! すぐに迎撃体勢に……!!」
「あっ! シェーレ様お待ちください! 味方のようです。旗が確認とれました。旗が二旗確認できました。一つは赤地に白い円が中央にあります。バルナート帝國の国旗です。そしてもう一つが群青地に漆黒の一角獣――ミケルクスド國の国旗です。敵ではありません。友軍です!」北方からの軍の存在を伝えにきた兵士は安心したようであった。
「油断するな!」シェーレの言葉であった。
「確かにバルナート帝國とミケルクスド國の軍には間違いないが……我々を迎えに来たとも思えない。それにバルナート帝國軍の中に朱雀騎士団の軍勢も見ることができる。皆々、戦闘態勢を一刻も早く整えるよう……」シェーレの言は尤もであった。
 バルナート・ミケルクスド國の連合軍二万は、南方以外の三方をからドンク将軍の一万の軍を半包囲し始めたのである。シェーレはドンク将軍を後にして、聖王国の最前に進み、物申した。
「バルナート帝國、ミケルクスド國の両国の軍と思われるが、我が聖王国軍を包囲しようする進軍はいかなる仕儀であるか! 先ずは言葉によってそれを語ってもらおう!」
「人和将軍の知恵袋であるシェーレ殿だな!」ミケルクスド國の軍の中からこのような声が聞こえた。
「そうだ! そう言った御身は?」
「ミケルクスドのラムシェルだ!」
「何? ミケルクスド國のラムシェル王!! まさか!」さすがのシェーレもこれには二の句が告げられなかった。
 その間にホース(馬)に跨った一人の男がミケルクスド國の集団の中から出てきた。茶色の髪にエメラルドグリーンの瞳、そして均整のとれた顔立ち。まぎれもなくミケルクスド國の現王であるラムシェルその人であった。
「お主は、人和将軍の副官であるシェーレ殿だな! 久しぶりだな」
「はっ! ミケルクスドの王よ」ラムシェルの言の葉に対し、シェーレはそう挨拶をした。
「シェーレ殿! 悪いがその一万の軍をドメルス・ラグーンに入城させるわけにはいかない。どうしてもこれ以上進むのであれば、御身共々この軍を我が軍とバルナート帝國の軍で拘束することになるが……」



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王。ウバツラ陣営)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営)
 徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営)
 阿那婆達多(アナバタツタ)龍王(カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される)

(神名・人名等)
 風の旅人(共和の四主の一人)
 クルムヲー(ヲーサイトル十将の一人。十将で最年少)
 グラフ(ソルトルムンク聖王国の天時将軍)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 シェーレ(ドンク将軍の副官)
 ソジラールセン(カルガス國五賢臣の一人)
 ドンク(ソルトルムンク聖王国の人和将軍)
 林の麗姫(共和の四主の一人)
 炎の童子(共和の四主の一人)
 マクスール(ソルトルムンク聖王国の地利将軍)
 山の導師(共和の四主の一人)
 ラムシェル王(ミケルクスド國の王。四賢帝の一人)
 ヲーサイトル(カルガス國の老将。『生きる武神』の異名をもつ。故人)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 ドメルス・ラグーン(バルナート帝國の帝都であり王城)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)
 共和の四主(クルックス共和国を影で操っている四人の総称。風の旅人、林の麗姫(れいき)、炎の童子、山の導師の四人)
 五賢臣(カルガス國の重臣の制度。またはその重臣たちのこと)
 誤賢臣(カルガス國の制度である五賢臣を揶揄した言葉。五賢臣のありようがカルガス國を滅ぼした要因を作ったためである)
 朱雀騎士団(バルナート帝國四神兵団の一つ)


〔参考二 大陸全図〕
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