mixiユーザー(id:15312249)

2014年04月19日22:22

3 view

〔小説〕八大龍王伝説 【309 反乱と帝國(一) 〜共和の四主〜】


 八大龍王伝説


【309 反乱と帝國(一) 〜共和の四主〜】


〔本編〕
 同日午後二時。ソルトルムンク聖王国の首都であり王城であるマルシャース・グールにおいて、重要な軍事会議が行われた。
 その会議への出席者はわずかに六名。ソルトルムンク聖王国の王であるジュルリフォン聖王。聖王国の宰相ザッド。軍事の最高幹部である三将軍――天時将軍グラフ、地利将軍マクスール、人和将軍ドンク。そして軍事的な事務を司る軍務担当の大臣の六名であった。
「今回は緊急のことで三将軍を招集した。当然、ご承知と思うが、カルガス國の反乱兵の件である」最初に口を開いたのは宰相のザッドであった。
「このカルガス國の反乱は一万人規模であると報告を受けている。前王であるウィップレスト王が処刑されて三ヶ月弱。我が聖王がカルガス國の王城ナゾレク・エクサーズに入城してから数えても六ヵ月になっていないという異例の早さでの反乱である。まだカルガス國が滅亡してから日が非常に浅い。カルガス國の民の間には、國の復活を望む者も多数であろう。
 この反乱は直ちに鎮圧しなければ、どれほどの規模の反乱に膨れ上がるか予想がつかない。むろんこれはソルトルムンク聖王国のみの問題ではないので、他の五ヵ国……、それとクルックスの共和の四主との連携も必要である。それでも、我が國が中心で事を進めるのに変わりはあるまいが……」ザッドがさらに周りを見回しながら話を続ける。
「それで、三将軍が揃われる前に、少し王のご意見を小生が先に賜った。その上での方針を述べる。先ず、我が國はこの討伐軍に三万の兵を動員する。そしてこの王城と周辺地域の防衛にさらに二万の兵を動員する。合計で五万の兵を動員することになるが……グラフ将軍!」
「おぅ!」
「グラフ将軍には二万の兵でマルシャース・グールと周辺地域の防衛をお願いしたい! よろしいでしょうか?」
「承知した!」グラフの返事であった。
「グラフ将軍!」
「はっ!」ジュルリフォン聖王がグラフ将軍に言の葉をかけた。
「今回の王城防衛は前回にも増して重要である。朕には将軍以外に適任はないと思っている」
「ありがたきお言葉。この老骨に鞭をうち、王の期待にお答えいたします」ジュルリフォン聖王の言の葉にグラフ将軍が答えた。
「続いて、マクスール将軍!」
「ハッ!」宰相ザッドの声かけにマクスール将軍が答えた。
 地下の奥深くから聞こえてくるような低くて暗い声色であった。
「マクスール将軍は二万を率いて、南方のゴンク帝國の帝都であるヘルテン・シュロスに向かってもらう。そこでゴンク帝國とフルーメス王国の兵と合流をして、北上することになる。よろしいな。マクスール将軍!」
「承知した!」
 ザッドが続ける。
「マクスール将軍の軍にはジュルリフォン聖王と小生も同行する。王の御前での活躍を期待する」
「承知した!」ザッドの言葉にマクスールはさっきと同じ声色で応じた。
「最後にドンク将軍!」
「ハッ!」
 ザッドの言葉は続く。
「御身は、一万の兵を率いてバルナート帝國の帝都であるドメルス・ラグーンに向かってもらう。そこでバルナート帝國、ジュリス王国、ミケルクスド國の軍勢と併せ、カルガス國のナゾレク・エクサーズの地に向かってもらいたい」
「了承しました」ドンクもザッドの指示に従う旨の言葉を発した。
「それぞれの國への援軍要請は軍務担当の大臣と小生の方で万事行う。各将軍は、それぞれの軍備を整え、半月以内に王城を出立してもらう。火急ではあるが、非常事態である。軍備の間(かん)は、クルックスの共和の四主によるゲリラ活動の力で反乱の拡大を抑えてもらうように要請する。いずれにせよ一刻も早い軍備をお願いしたい」ザッドのこの言葉で、緊急の軍事会議は閉会となったのである。

「それで、ソルトルムンク聖王国軍はいつ到着するのだ!」
 今はまだ復活していないクルックス共和国の影の指導者の一人である林の麗姫(れいき)の言の葉である。
「聖王国の宰相の天声によると、軍備を整えるまで最低半月、それからの進軍であるから、カルガスのナゾレク・エクサーズへの進攻は来年の二月ぐらいになると思う」
「二月(ふたつき)以上も我ら共和の四主のみでカルガスの反乱を抑えろというのか? 無茶な話だ!」
 風の旅人と言われる者の回答に林の麗姫は苛立った声で答えた。
 風の旅人も林の麗姫も共和の四主の俗称のようで、むろん本名ではない。さらに顔や体を深緑色の大きな布で覆っている彼らが果たして同一なのか或いは単一なのかも、おそらく四主である本人たち四人以外には全く分からないのである。
 今、龍王暦一〇五二年一二月一二日。元クルックス共和国の首都があったスピュアリューア・ユスィソンクルの一角で四人が車座になって座っている。
 そのうち三人は地面に直接胡坐(あぐら)をかいているが、一人は三十センチメートル程の高さの腰掛のようなものに座っていた。
「いずれにせよ、わしらもカルガスの残党と戦わねば、祖国であるクルックスの地を奪われてしまう。ゲリラ戦を展開して、連合軍の到着を待つほか手はない!」山の導師と呼ばれる者の言葉であった。
「しかし導師様! 今回のミスは聖王国にあるのですぞ!! 聖王国がカルガス國のナゾレク地方に派遣した地方長官が、全く残党軍に気付かなかったという点が……」
「麗姫様! それを指摘したといえ、連合軍の足が速くなるわけではありません。ここは我らの力を大陸全土に知らしめ、一刻も早い我が祖国――クルックス共和国の復活の実現に邁進するのが我らの使命であります」山の導師が林の麗姫をこのように説得した。
「ご安心くだされ! 麗姫様! 導師様! 今、我が軍であります炎の侵略軍が、カルガスの残党を駆逐しております。既に三日間で八回の戦いに勝利し、カルガスに奪われました聖王国所有の城も三つ奪い返しました。あと三日もすれば、カルガスのナゾレク・エクサーズに到達しましょう。そこの残党の首領の首を挙げれば、この戦(いくさ)も終息するでしょう」四人の中で最も体格の良い男が大声で語った。
「炎の童子殿! カルガスの残党を甘くみてはいけない。彼らには五賢臣の最後の一人であるソジラールセンや神将ヲーサイトルの十将の生き残りも従軍しているであろう。……童子殿の報告にはいささか以上に心配である!」



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王。ウバツラ陣営)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営)
 徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営)
 阿那婆達多(アナバタツタ)龍王(カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される)

(神名・人名等)
 ウィップレスト王(カルガス國の元王。故人)
 風の旅人(共和の四主の一人)
 グラフ(ソルトルムンク聖王国の天時将軍)
 ザッド(ソルトルムンク聖王国の宰相)
 ジュルリフォン聖王(ソルトルムンク聖王国の聖王)
 ソジラールセン(カルガス國五賢臣の一人)
 ドンク(ソルトルムンク聖王国の人和将軍)
 林の麗姫(共和の四主の一人)
 炎の童子(共和の四主の一人)
 マクスール(ソルトルムンク聖王国の地利将軍)
 山の導師(共和の四主の一人)
 ヲーサイトル(カルガス國の老将。『生きる武神』の異名をもつ。故人)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 スピュアリューア・ユスィソンクル(クルックス共和国の首都)
 ナゾレク・エクサーズ(カルガス國の首都であり王城)
 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)
 共和の四主(クルックス共和国を影で操っている四人の総称。風の旅人、林の麗姫(れいき)、炎の童子、山の導師の四人)
 五賢臣(カルガス國の重臣の制度。またはその重臣たちのこと)
 三将軍(ソルトルムンク聖王国の軍事部門の最高幹部。天時将軍、地利将軍、人和将軍の三人)


〔参考二 大陸全図〕
フォト

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する