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2014年01月25日11:39

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〔小説〕八大龍王伝説 【296 作戦会議(後)】


 八大龍王伝説


【296 作戦会議(後)】


〔本編〕
「どういう意味だシャカラ!」少し怒りの矛先をかわされた奇妙なささくれ立った気持ちでバツナンダは、シャカラに問いただしていた。
「三人で戦うより、ワシュウキツ一人で戦う方がトクシャカへの勝率が上がるという逆転の結論になるのだ。勝率が上がるといっても数パーセントという若干数ではあるがな……」
「はぃ?!」バツナンダは理解できなかった。
 そして、シャカラの言の葉が理解できない自分に対しての別の怒りが噴出し始めた。
「シャカラ! 私を愚弄しているのか?!」
「そんなわけないだろう!……、とにかく落ち着けバツナンダ! 僕はトクシャカの対の龍王であるから気づいている事柄なのだ! ワシュウキツが気付いていることのほうが僕にとっては驚きなのだから……。とりあえず、簡単にそのからくりを話す。これは理屈に合う合わないのレベルの話ではないことを最初に承諾しておいてくれ」そう言うとシャカラは語りだした。
「実は一般的に考えると、二人などの複数で単数の敵に相対するのは、優位に思えて実はそれほど優位ではないのだ。例えば、二人で一人の敵の正面と背面に相対した場合、確かに敵の背面に立った味方は、敵の死角に位置しているわけだが、敵の背中を見ているため、敵の表情は読み取れず、また敵が巨躯の場合、共同している正面の味方が敵に隠れて見えなくなるというデメリットも出てくる。
 敵が達人であった場合、背面の味方の動きに呼応して、体をかわすことによって、正面の味方と鉢合わせという現象も任意に起こすことが可能なのだ。それでいえば、二人より一人多い三人で一人を攻撃した場合、さらに複雑な連携した動きを三人は要求される。
 実際にワシュウキツを僕と君の二人で攻撃したときには、あえてお互いの正面を固定して、複雑な連携を単純化し、複数のメリットを引っ張り出したではないか」シャカラが白い自分の右の眉を右手でさわりながら言の葉を続ける。
「確かに、僕やバツナンダ――君なら、他の龍王二人以上から攻められれば、圧倒的に不利になる。複数の連携の難しさを計算に入れてもだ……。それは僕や君……、というかトクシャカを除く全ての龍王を始めとする『闘神』の神々のほとんどが、神を相手にする場合、基本一対一の闘いを想定して成り立っているからだ。
 それに対しトクシャカは、こと闘うということに関しては、あらゆる可能性を想定されて、そのどの状況下でも勝利できるように成り立っているのだと思う。これは僕らが生を受ける以前からのあり方の問題であるから、能力や考え方云々ではない。
 つまり、トクシャカに三人で挑むということは、こちらは連携の複雑さのデメリットだけがクローズアップされ、トクシャカはそのデメリットを効果的に利用することになる。例えれば、何でもないトクシャカの一撃を、仲間が後ろにいるため、避(よ)けることができないという、複数で挑むことによる最悪の結末も考えられるということだ」
「それでは一人ずつ闘い、後の二人は休息をとるという長期戦を展開するのはどうでしょうか?」カリムが横から口を挟んだ。
「申し訳ございません。神々の会議に思わず口を挟んでしまいました」カリムはハッとして、跪(ひざまず)き、頭(こうべ)を床にこすりつけた。
「構わない! カリム! 神であろうと人であろうと良いと思われる発言はして構わないし、分からないことは質問しても当然、構わない」シャカラは頭を下げているカリムに優しく言の葉をかけた。
「カリムの考えに答えよう。一般的には非常に良き手だ。休んでいる二人は鋭気を養うことができるし、長期戦に持ち込めば、一人の方の持久力がいずれ尽きるだろう。――しかし、神同士になれば持久戦はあまり意味をなさない。人の何万倍もの持久力を有している。『闘神』に限って言えば、それは無限といって差し支えない量を有している。
 そして試合という形式の闘いであれば、休息を有している者は闘いに加わっていないという観点から、基本、敵から攻撃されない。試合にはルールがあるからだ。しかし、単なる闘いにそのようなルールはない。休んでいるのは、その者の勝手で、敵が攻撃を仕掛けてはいないという決まりはない。
 複数で攻める連携の複雑さと同じで、休んでいる者を盾に使われたりしかねない。それよりは三人とも闘っているほうが、まだましなのだ。カリム。そういうことだ」
「ありがとうございます。シャカラ様! 人の愚かな発想でありました」カリムはシャカラの説明に深々と頭を下げた。
「どうやら結論はでたようだな……」ワシュウキツが低い声で話し始めた。
「ステイリーフォン、レナ、カリムの三人は聖王国の首都マルシャース・グールのグラフ将軍の元に送る。そして、わしとトクシャカはここでどちらかが死ぬまで闘う。この条件でトクシャカに約定束縛の呪法を承諾させる。そして、わしとトクシャカが闘っている間にシャカラとバツナンダは天界に向かい、アナバタツタを撃破し、マナシと相対する。これでいいな。バツナンダよ!」
「ワシュウキツの生存率が上がるのであれば、その方がいい」
「よし。後はたのむぞバツナンダ! 他に意見のある者はあるか?」ワシュウキツのこの問いかけに口を開く者はなかった。
「よし……この内容でトクシャカに要求しよう!」六人による作戦会議は約一時間半を有した。



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王。マナシ陣営からウバツラ陣営)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営)
 徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営)
 阿那婆達多(アナバタツタ)龍王(カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される)

(神名・人名等)
 カリム(元ハクビ小隊の魔兵。ステイリーフォン聖王子の妻)
 グラフ(ソルトルムンク聖王国の天時将軍)
 ステイリーフォン聖王子(ジュルリフォン聖王の双子の弟)
 レナ(シャカラの妻。マークの妹)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。滅亡)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)
 マルシャース・グール(ソルトルムンク聖王国の首都であり王城)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)

(武器名)

(その他)


〔参考二 大陸全図〕
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