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2013年10月26日08:31

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〔小説〕八大龍王伝説 【282 第四龍王和修吉(八) 〜誘い〜】


 八大龍王伝説


【282 第四龍王和修吉(八) 〜誘い〜】


〔本編〕
「ほほぉ〜次はシャカラか! 面白い!! 次はわしの攻撃をお目にかけよう!」
そう言うと、ワシュウキツは地面に突き刺さった青龍刀を引き抜き、代わりに牡牛の盾を地面に突き立てた。
「これは、世間で言うところの青龍刀と呼ばれる武器だが、わしのこの武器はわしが作った最上級の武器だ。ゆえに、わしのカラーにちなんで、『緑龍刀』と呼ぶ。覚えてもらえれば幸いだが……」
「覚えはするが、それを一撃も振ることなく……、ワシュウキツ! お前は負けることになるがな! ちなみにまだ一分間は、お前は僕を攻撃することができない。神同士の約定を破ると、我らに宿っている呪いで、存在を滅ぼされるということは理解していると思うが……」
「ハッハッ! 人の間で契約される約定束縛の呪法と同じというわけだな。理解はしている。まあ一分間でなにができるかは楽しみではあるが……」
「先ずはこれだ……」そう言うとシャカラは口で二、三言呪文のようなものを唱えた。
 その途端、シャカラの足元から白い霧が立ち上がり、一瞬にしてこの大きな広場を覆ってしまった。
「この、広場にはワシュウキツの結界が張ってあったのでは?!」
「バツナンダ! ワシュウキツの結界は、外部に音が漏れないように、広場の外周だけに作用しているのだ。だから内側は、僕の結界が張れる余地があり、張った以上、『陣地作成先敷(せんふ)の優位性』により、僕の霧の陣をワシュウキツは破ることはできない。
 ワシュウキツ! 僕が見えない上に、一分間は青龍刀――いや緑龍刀を僕に向けるわけにはいかない! 神の呪いによって、存在が消える可能性があるからだ。あと、四十五秒ではあるが、その間(かん)、見えない中で、どうやって僕を防げるかな!」
 既にシャカラの声は、霧の影響であらゆる場所から聞こえ、所在を確認する術は、ワシュウキツにはなかった。

 さて、バツナンダであるが、当然、シャカラの霧の結界のため、シャカラとワシュウキツの戦闘を目視することはできない。それでも、音により、その剣戟を聞くことができる。
 そこから導き出される答えは、あらゆる方向からのシャカラの長斧の攻撃を、ワシュウキツは緑龍刀によって、凌いでいるようであった。
 そしてそのバツナンダの想像は正しかった。ワシュウキツは、自身を中心として、方向だけを変えて、シャカラの斧の攻撃を緑龍刀で防いでいるのである。ワシュウキツの攻撃が許されていない時間帯である今は、ワシュウキツにとって、目に見えないところから襲い掛かってくる長斧を防ぐのは並大抵のことではないはずである。しかし、ワシュウキツは目を閉じて、それを完璧にこなしていた。
「シャカラよ! 霧の結界によって、わしの目を封じたまでは上出来だ。しかし、長斧で攻撃するときの気配までは完全に消すことができないようだな。わしは、その気配から、お前の攻撃を防ぐことが出来るのだ!」
「そんなことが可能なのか?!」バツナンダはワシュウキツの言葉を聞き、自分に置き換えてみた。
“確かに、私も気配からシャカラの攻撃は読むことはできる。しかし、それだけではシャカラの攻撃は防げない。なぜなら、私の力量では、シャカラの長斧の最大切断点或いは最大打撃点に対処することができない。そんなことをすれば、私の武器は砕かれ、私の腕は折れてしまう。しかし、ワシュウキツの力と『重バサラ』と思われる緑龍刀であれば、それを受け止めることも可能なのだ!”バツナンダは、そこまで考え、自分自身のその考えに恐怖した。
“それでは、私たちはワシュウキツとどう闘えば……”そして、バツナンダはその時にまた一つのことに気付いた。
“それは、このワシュウキツより強い上級龍王とどう闘うかということであり、さらなる思考をこらさなければいけないということなのか?”
「シャカラ! もうすぐ作戦時間が終わるぞ!!」バツナンダの体内時計がそれを感知し、シャカラに知らせた。
 その瞬間、四方の巨竜(バハムート)の像の炎が青から赤に変わった。
 作戦時間の終了の合図である。
「キィィィ〜ン」何十度目かのシャカラの長斧がワシュウキツの緑龍刀に阻まれた音をバツナンダは耳にした。
 そして……。
「ジャリ!」シャカラの足が地面に軋む音がした。足を滑らしたらしい。
「馬鹿な! 戦闘時間に変わったばかりの時に……」
 バツナンダの思わず発した呟きの中、ワシュウキツは、緑龍刀をシャカラ目がけて振り上げたのであった。

 しかし、ワシュウキツは振り上げた緑龍刀を降ろさなかった。
「何故だ?!」バツナンダの呟き。
 それに答えるかのようにワシュウキツが言った。
「シャカラ! その手には乗らないぞ!」
「ばれていたか……さすがはワシュウキツ!」そう言うとシャカラはワシュウキツから数歩離れた。
 既にシャカラの霧は晴れており、巨竜(バハムート)の像をからは青い炎が出ていた。
「まだ……、赤い炎ではない?! シャカラの策略だったのか!」
 バツナンダがそう言ったとおり、シャカラは霧の結界により、巨竜(バハムート)の炎が赤くなって、戦闘時間に入ったと思わせたのである。そしてシャカラ自身が足を滑らせて、ワシュウキツに攻撃を誘ったのであった。
 もし、ワシュウキツはこの誘いに乗り、シャカラを攻撃する行為に出れば、ワシュウキツは神同士の約定を破ったとして、(約定の程度が低いため)死までは至らないかもしれないが、片腕か片足の機能を永久に失うことにでもなっていたかもしれない。
 むろん、これから他の八大龍王と戦うのであれば、それは致命的な事柄であろう。
「何故、分かった!」シャカラがワシュウキツに尋ねる。
「ちゃんと数を数えていたからだ! 炎が変わったときには、作戦時間の四分五十五秒で、あと五秒作戦時間が残っていた。そのような手は通用しないぞ!」



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王。マナシ陣営からウバツラ陣営)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営)
 徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営)
 阿那婆達多(アナバタツタ)龍王(カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される)

(神名・人名等)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)
 カルガス國(北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多(アナバタツタ)の建国した國。滅亡)
 ミケルクスド國(西の小国。第五龍王徳叉迦(トクシャカ)の建国した國。飛竜の産地)
 クルックス共和国(南東の小国。第四龍王和修吉(ワシュウキツ)の建国した國。唯一の共和制国家。大地が肥沃。今は滅亡している)
 ゴンク帝國(南東の小国。第三龍王沙伽羅(シャカラ)の建国した國。ドラゴンの産地。『城塞帝國』の異名を持つ)
 フルーメス王国(南の弱小国であり島国。第二龍王跋難陀(バツナンダ)の建国した國)
 ジュリス王国(北西の小国。第一龍王難陀(ナンダ)の建国した國。馬(ホース)の産地)

(地名)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)
 バハムート(十六竜の一種。陸上で最も大きい竜。『巨竜』とも言う。また、単純に竜(ドラゴン)と言った場合、バハムートをさす場合もある)

(武器名)
 牡牛の盾(ワシュウキツの盾)
 長斧(シャカラの得物の一つ。文字通り長い柄のついた戦斧)
 緑龍刀(ワシュウキツの得物。重バサラでできた緑色の青龍刀)

(その他)
 重バサラ(第四龍王ワシュウキツの造語。バサラを四万度の炎によって加工する。硬度はバサラの三倍以上)


〔参考二 大陸全図〕
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