バーニングマンはその参加者にカタルシスを与えるような経験になりうるが、真性の信者たちにとってはそれ以上の経験である。彼らにとっては、バーニングマンは社会的・政治的運動のようなものでもあると、ラリー・ハーヴィーは現在説明している。バーニングマン組織は最近、世界中のミニ理想郷を支え、その福音を広めることを目的とした非営利団体the Burning Man Projectへと改変した。その政治傾向は左翼派寄りであり、起業家的なリバタリアニズムから堅実なリベラリズム、アナーキズム、(左翼派思想では無いが)我々は実は敵戦線に取り残され人間の体に閉じ込められた宇宙人なのだと私に説明した男性の個人的思想、数々の環境計画やボランティア活動などと様々だ。しかし私は、バーニングマンが社会的・政治的運動であると唱える人に対し疑念を抱かずにはいられない。
バーニングマンは持続可能性の促進に対し、誠実で立派な配慮をしている。そのモットーは「Leave No Trace, Make Your Mark(痕跡を残さず、自分の影響を残せ)」である。しかし、何百もの火を吹く機械を集めた巨大な野外パーティーが持続可能性促進の模範であるとは信じがたい。それ以上に、バーニングマンほど人種に多様性の無いコミュニティーが自らを現在の人間社会の代わりとなりうる社会の模範として装うことは何らかのルールで禁止されるべきである。多様性のあるコミュニティーを経験したいなら、バーニングマンに行くのは止め、ニューヨークの地下鉄かバスに乗ればいい。(有色人種の人々が多数集まり違法薬物を使いながら文明社会の象徴を燃やすイベントを想像出来るだろうか?そんなイベントは1ヶ月と持たないだろう。)
毎年、大勢の人々がバーニングマンに参加し自らの性的意識を再発見し、時には新しい性体験を試す。しかし現代社会において、性的乱交が本当に革新的でオルタナティブな価値観だとは言いがたいだろう。実際には、バーニングマンの理想概念に全く興味の無い人々にも十分魅力的な、言わば実に日常的な価値観なのである。バーニングマンの短期新聞であるBlack Rock Weeklyに記載されていた「Ladies Guide to the Creeps of Burning Man(女性用コラム:バーニングマンで見られる気味の悪い男達)」には、参加者の数が増え続ける「Frat Boy(男子大学生)」が第一位であった。時折バーニングマンのイベントの最中、如何わしい雰囲気を感じることがある。そして時に、事はそれ以上の事態に悪化することもある。今年のバーニングマン後、ePlayaに記載された一母親の苦悩に満ちた記事が多くの注目を集めた:
この事件は恐ろしく、そして啓発的である。違反行為にこれほど専念をしているイベントでは、性的暴行は懸念すべき事態であろう。しかしながら、主催者たちはこのような暗い一面に正面から立ち向かうための準備が出来ていない様に伺われる。San Francisco Weeklyに手痛く非難された際には、将来性的暴行が起きた場合適切な措置を取れるよう準備する事を約束するどころか、批判から話題を逸らした。パーシング郡がバーニングマンの取り締まりを強化しようとしている中、このような事件はバーニングマンにとって不都合に違いない。
しかし、このような事態はあまり公に議論されていない。反対に、バーナーの間で頻繁に述べられている不満は、バーニングマンが観光者だらけになり、穏やかになり過ぎていると言うことだ。傍観者が増え、積極的な参加者が減少している。今年のBlack Rock Weeklyに記載されていたペンネーム「Shutterslut」執筆の過剰な意見記事には、自らのプロジェクトの資金集めにKickstarter(アメリカのクラウド・ファンディング・サイト)を利用し、裕福な寄付者を見返りとしてVIP扱いするといったキャンプを非難した。彼は、このイベントの進化において越えてはならない一線が越えられていることを主張した:
しかしながら、現在これ以上に議論されているのは、「野生生活の体験」はしたいが文明の利器は手放したく無いと、不快な砂漠の環境の中ではなく、エアコンの効いたRVの中で生活をする裕福な参加者のニーズに答える「プラグ&プレイ」キャンプの普及である。バーニングマン短期新聞であるBlack Rock Beaconは、この現状を「Fat Cats in Cash-for-Camps Controversy(金でキャンプを買う金持ちたち)」と、タブロイド風の見出しで報道した。
Black Rock Beacon誌にこのような「プラグ&プレイ」キャンプに対するBMORGの公式方針に関する問いに対し、BMORGの代弁者は「どんな街もそうであるように、ここには様々な所得の人々が存在し、我々はこれらの人々を皆平等に歓迎している」とコメントした(このようなキャンプはその収入の一部をBMORGに支払っている)。このようにしてブラックロック・シティに不平等さが生じているのである。ここで注目すべきは、社会的不平等さとそのコミュニティーの幸福度には密接な関係があると社会科学者たちは観測していることかもしれない。
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