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2012年12月01日01:34

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11月30日 人形町社会教育会館 「夢一夜」

 ここ数日で季節が冬にシフト。天気もはっきりしないし風も冷たい。こういう季節の変わり目には季節に合わせた冬らしい噺が聞きたくなるが、そのへんのニーズにはしっかり応えてくれるミックス寄席仕切りの一之輔、夢吉二人会である。

●前座 吉好「動物園」
 出てきて顔を見たとたん「前も見た」と思ったのだが、名前が思い出せなかった。柳好のお弟子さんでしたね。もう四度くらい聞いているんだっけか。広小路亭の芸協前座はふたり出てくるのでなかなか覚えづらい。今日はホールで時間ももらってのびのび演じていた。珍獣展示会の一番の呼び物が「アサヒを飲むキリン」ってのがおかしかった。顔が老けているのが悩みだそうで、横浜にぎわい座での文治披露の時、前座で出ていたら楽屋入りした市馬がモニターを見て「もう真打ちの師匠が出ている!遅れた!!」と焦ったとか。

●夢吉「殿様団子」
 後から出てきた一之輔が「研精会とかでかけているから夢吉さんをよく聞いている人はポピュラーな噺だと思っているかもしれないけれど、落語協会でこんな噺をかけている人はいない」と云っていた。自分も初めて聞いた。夢吉はよく変化球を投げてくる。持ちネタどのくらいあるのか知りたい。

●一之輔「夢金」
 一之輔では初聞きなのだが、思えば一之輔にぴったりな噺。冬らしい噺が聞きたいこちらの期待にもどストライクだし。登場するうろんな侍はもちろん、大店のお嬢様も全くもって書き割りみたいなあいまいな存在。そもそも侍がかどわかしたお嬢様を手込めにするようなくだりは一切無くいきなり「バラす」と言い出す。そのくせ船に乗るとき熊公の肩に置いたお嬢さんの手のふくよかさ、身体を寄せた時のにおいなどは濃密に描かれる。なぜならこれは熊公の夢の中の人物だから・・・ということがきょう聞いていてよくわかった。寝言でも金に執着する熊公の夢の中の人物だから侍も色より金が大事だし、日頃女に疎い熊公にとっては手込めなんて大事は想像もできず、ときどき芸者を船に乗せる時に肩を貸す程度のエロスしか考えが及ばないというのもうなずける。ただの船頭の妄想世界なのになんて面白いんだ!

〈中入り〉

●一之輔「ふぐ鍋」
 これまた冬らしい噺。今日まで池袋で昼の主任だったそうで「もうトリはさんざんやったから今日は夢吉さんにお願いしました」。「これから打ち上げで鍋なんかもいいかも・・・」 噺の方は登場人物の性格の悪さが浮き彫りになるところが毎度毎度の一之輔流。

●夢吉「睨み返し」
 最初は「掛け取り」かと思ったが違う噺。あれ? 睨みで帰すって聴いたことあるとおもうんだけど ちょっと記憶が曖昧・・・。明治維新後の長屋住民、所謂下層庶民の話などを読むと、貧しい職人などは本当に脅し、騙しまがいの行為に及んで取り立てを逃れることがよくあったらしい。古典落語の多くの成立も明治以降だから、実際にこんなやりとりがあってもおかしくは無い。

「なんだかんだでもう六回目・・・これもオフィスエムズが仕切ってくれるからつづいているようなもの。ふたり会を始めても続けている内に各人の気持ちに温度差が生じてきて続かないことがほとんどだから・・・それは自分も経験しているし、他人の会でも散々見ている」と一之輔の言。そういえば一之輔も天どんとかたけ平とか、ずいぶんいろんな人とやってきたよね。自分より先輩の百栄とはちょこちょこ続いているようだが、まあ一之輔が多忙になりすぎて続けられなくなったというのもあるのではないか。抜擢真打ちは孤高ともなるのか。夢吉ももちろん良いのだが、久しぶりに寄席の主任の後のせいか力が抜けていい塩梅の一之輔の落語を楽しませてもらった。



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