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2012年09月22日09:16

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〔小説〕八大龍王伝説 【222 覇王ロードハルト帝(七) 〜最強の双剣〜】


 八大龍王伝説


【222 覇王ロードハルト帝(七) 〜最強の双剣〜】


〔本編〕
「シャカラ! ここからはお互いの得物によって再び語ろう!!」バツナンダそうシャカラに呼びかけた。
 先程までバツナンダが持っていた弓も、口に咥えていた真紅の矢も既になく、代わりに二つの大剣をバツナンダは両手に握っていた。右手の剣は、紅い剣(つるぎ)で、刃の長さが五十センチメートル。刃の幅が狭いところで五センチメートル、太いところで十五センチメートルになる幅広な剣であった。段平(だんびら)をイメージすると大差ないであろう。
 そして、左手の剣は、蒼い剣(つるぎ)で、真紅の剣と色の違いこそあれ、寸分違わない剣であった。ただ、一箇所だけ違うところがあった。それは剣の鍔(つば)の形であった。
 紅い剣は鍔が横に一直線上の先の尖った形であるのに対して、蒼い剣は鍔がS(えす)字型に湾曲している形をしていた。
「後五分もすれば、日にちも変る。その間を利用してこの最強の武器について説明しよう!」バツナンダのその言葉に、体内時計を持たない者は、もうそんなに時間が経ったのかと、改めて感じていた。
 後五分で龍王暦一〇五一年一〇月二四日になるのである。
「ちなみに私も前帝王(ロードハルト)同様、マナシに全幅の信頼をよせている。前帝王の配下になれとは私は言わぬ。シャカラ! お前がここで折れてくれれば、数多(あまた)の無用な戦いが避けられる。どうだ!」
「断る!!」シャカラの即答であった。しかし、既にシャカラの顔は透き通るように白くなっており、先程の怒りはおさまっていた。
「やはりダメか。まあよい、この武器の由来を知ればその考えも変るかもしれない……」こう呟いたバツナンダは、先程の宣言どおり二つの剣について説明を始めた。
「この世には大海の雫(しずく)の数に相当する数の武器がある。その中で最も強い武器――つまり最強の武器だが……。それは何だと考える?」バツナンダは質問調に語ったが、別に誰から答えを求めていたわけでもなかった。
 そのためすぐに次の言葉に穂を継いだ。
「伝説として語り継がれている武器など、その最強という言葉に最も近づいた武器であろう。しかし、どの武器も使用する場所、使い勝手、重さや破壊力、それらの要素を全て兼ね備えた上で最強と呼べるもの……。――と考えると、存在しないという結論になる」バツナンダはここで語りを少しとめ、辺りを見る。
“聴衆は、聖王国がシャカラ、カリウス、ソヤ。帝國がロードハルト、ネグロハルト、マクダクルス、トヤル、オルドレン、そして数名の近衛兵か!”
「しかし、単一(たんいつ)では存在しないが、二つの武器ということになると、最強の武器はこの一組の剣ということになる。『カンショウ』と『バクヤ』という名の二つの剣に……」バツナンダは二本の剣を小型竜(ドラゴネット)のカイザーの背の上で高々と掲げた。
「『カンショウ』、『バクヤ』……。あの双子神の伝説の武器か! 互いを庇(かば)い合うという……」
「さすがは博識のシャカラ! 知っていたか?」
「知らないでか。究極の防衛能力を有する武器。伝説神の中で最強のペアーとして、伝説の神々の中で筆頭の位置に座する双子神であるゼオスとヘラの剣!」
「そうだ! しかし、『庇(かば)い合う』という表現は不適切だな! お互いを『補い合う』とでも言ってもらいたい。『防御は最大の攻撃』という言葉通り……。シャカラ! これでもまだ戦おうとするか?」
「……」シャカラは返答に窮した。
『カンショウ』、『バクヤ』という二つの剣の伝説を知るシャカラ故の無言の言であった。
 さて、読者諸君はこの八大龍王の時代が、我々の時代よりかなり昔であるという認識は既に持っておられると思われるが、今より三万年以上の昔ということはまだ伝えていなかったと思う。
 三万年以上過去の話であるため、古代エジプト文明や古代メソポタミア文明といった我々人類最古といま伝えられている時代も、たかだか五千年程度昔の時代なので、この時代からいうと現代と同じく後世ということになる。 この時代よりさらに一万年以上昔の伝説の神々のうちの双子神ゼオスとヘラは、読者諸君のご推察の通り、古代ギリシア神話の中に出てくる絶対神ゼウスとその妻ヘラのモデルとなった神である。
 ゼオスとヘラが双子の関係から夫婦の関係に変化したのは、これだけの時間を遡れば当然起こって然るべきことであろう。むしろゼオスの名がゼウスと一字だけの変化で伝わったのは奇跡に近いといわねばならないぐらいである。
 そして彼ら(ゼオスとヘラ)の武器である『カンショウ』と『バクヤ』は、名前を漢字に変化させて古代中国の春秋時代の話として伝えられたのである。むろん古代ギリシアも古代中国も、今語っている八大龍王の時代よりは、全て後世なので、どちらも八龍時代のものがモデルになったのは言うまでもない。
 一つの逸話が、部分的に東西両文明に分かれて伝わったのは、非常に面白い現象であるといえるであろう。
「心配するなシャカラ!」シャカラがふと気づくとヴァイスドラゴネットのカリウスが話しかけていた。
「武器が最強かどうかは知らないが、乗っている龍(竜)についていえば、最強の龍を有しているのはこっちだ。簡単に言えば私のことだが……。少なくともナンダと戦ったときに比べたら戦力差は大した差ではない! この程度の戦力差は、私が覆してみせる」
「カリウス!」シャカラがボソリと呟いた。
「たかだか龍の分際で。神を励まし慰めるとは……」その言葉にカリウスはニヤリと笑い言った。
「それでこそシャカラだ。我がマスターとして私の背中を許している龍王だ!」



〔参考一 用語集〕
(龍王名)
 難陀(ナンダ)龍王(ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅)
 跋難陀(バツナンダ)龍王(フルーメス王国を建国した第二龍王。マナシ陣営)
 沙伽羅(シャカラ)龍王(ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営)
 和修吉(ワシュウキツ)龍王(クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営)
 徳叉迦(トクシャカ)龍王(ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営)
 阿那婆達多(アナバタツタ)龍王(カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営)
 摩那斯(マナシ)龍王(バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する)
 優鉢羅(ウバツラ)龍王(ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される)

(神名・人名等)
 オルドレン(跋難陀龍王に仕えている蜥蜴男)
 カイザー(バルナート帝國お抱えの小型竜。『皇帝(カイザー)』の名を持つ)
 カリウス(沙伽羅龍王に仕えていた白い小型龍。『ヴァイスドラゴネット』とも『白き小型龍』ともいう)
 シャカラ(神としての記憶を取り戻したハクビ)
 ゼオス、ヘラ(この時代より一万年以上前に存在していたと謂われる双子神。ゼウス・ヘラの夫婦神の原型と謂われている)
 ソヤ(沙伽羅龍王に仕えていた龍人)
 トヤル(跋難陀龍王に仕えている龍人)
 ナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ朱雀騎士団の軍団長。故人)
 ネグロハルト帝王(バルナート帝國の帝王。ロードハルト前帝王の息子)
 バツナンダ(バルナート帝國四神兵団の一つ青龍兵団の軍団長)
 マクダクルス(バルナート帝國の宰相)
 ロードハルト前帝王(バルナート帝國の前帝王。四賢帝の一人)

(国名)
 ヴェルト大陸(この物語の舞台となる大陸)
 ソルトルムンク聖王国(大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅(ウバツラ)の建国した國)
 バルナート帝國(北の強国。第七龍王摩那斯(マナシ)の建国した國。金の産地)

(地名)

(兵種名)

(付帯能力名)

(竜名)
 ドラゴネット(十六竜の一種。人が神から乗用を許された竜。『小型竜』とも言う)

(その他)


〔参考二 大陸全図〕
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