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2012年05月11日09:26

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5月10日 横浜にぎわい座五月興行「落語四天王の隔世遺伝」

 この会のことは全く知らなかったのだが、直前になって知人から誘われて行くことになった。
 タイトルと惹句がすごすぎる。「70年代に落語界に新風を巻き起こした落語四天王。そのDNAが40年の時を経て、今、覚醒する!」である。しかも当代円楽プロデュース公演。当代円楽がこんなこと企画するんだろうか? 
 まあでも、このところ円楽師匠はいままで以上にかなり落語に力を傾けているように感じる。一門の事実上のトップでもあるし、にぎわい座は貴重な首都圏の拠点ホールでもある。成長株・きつつきを出すためなら名前を貸すくらいするだろう。

●前座 木りん「つる」
 今日一番驚いたのは、この人がかつての大関・清国の息子さんだったということ! 背は高いとは思っていたが192センチあるのだそう。「今日は隔世遺伝の会とのことですが、私の場合は本当に遺伝なんです」 父親に「お父さんも八百長をやったの?」と聞いたら「ウ〜ン、きよくにない」と云ったとか。

●志の吉「紙入れ」
 談志のDNAを受け継ぐ噺家として登場。大師匠・談志とは年に数回会う程度、名前を呼ばれたことはあるけれど、次ぎに会ったときは「ウ〜ン、お前ぇ誰の弟子だ」。雲の上の人、神様と云うより王様みたいな人だったと。長い時間をもらったからなのか、おかみさんと新さんのやりとり、忘れ物を見つけた後の新さんの煩悶をかなりみっちりと演じる。志の輔のお供で大きな会場ではやり慣れているのだろうが、まだこの人ならではという面白味に欠ける。

●きつつき「二十四孝」
 五代目圓楽DNA継承者として登場(笑。本人もそんなつもりはさらさらないと思うが・・・。しかししばらく見ない内にかなり成長した。滑舌の悪さは相変わらずだが、たたみかけるような語り口と客を置いてけぼりにしていくような速度のギャグの連続で、なにかずれた面白さがある。要するに以前と同じなのだが、前は暗中模索、擁護されずに却ってふて腐れて開き直っているの気味があったが、いまは吹っ切れて突き進んでいる感じ。これは大切だ。客から受け入れられているという確かな感触を掴みつつあるのだろう。しかもこの人は古典落語をやっても、何か新作を聞かされているような目新しさがある。落としどころが見えない独自の何かをいれてくるのか? 今回の「二十四孝」も、自分が聞き覚えている「二十四孝」とはいろんな意味で違う噺に。

<中入り>

●朝太「火焔太鼓」
 以前何処で見たのか記憶にないほど久しぶりに聞いたが、秋には菊六と同時に真打ち昇進である。古今亭といえばこの噺だが、どうもさっぱり自分のものにしている風がない。この人は正しくは志ん朝師匠の最後の直弟子で、三年付いた後、死後に故志ん五師匠に預けられたのだそうだ。「(志ん朝の生前)自分は師匠の高座をほとんど見ていなかった。というのも煙草が吸いたくて、師匠が高座の最中だけトイレで急いで吸っていたから・・・」とのことだが、後悔先に立たず。今の朝太みたいなタイプの落語家は寄席の流れの中では必要だろうが、自分の名前で客を呼ぶにはまだまだの感がある。少なくとも今日見た印象だけではそう思える。

●一之輔「鰻の幇間」
 柳朝DNA・・・なのか。自分の先代柳朝師匠の記憶と云えば、故森田芳光の映画「の・ようなもの」に売れっ子落語家役で出ていたやくざな雰囲気しか知らないが、吉川潮の本などを読む限りでは、あの役柄まんまみたいな人だったのだろう。一之輔は良きパパみたいで、あまり破天荒な印象はない。だがその売れ方は大したものだし、最後に一之輔が演じると、やはり前の三名とはまったく次元が違う落語になる。これはトリネタだろうか・・・という軽い噺の印象しかなかったが、一之輔は幇間が鰻屋の座敷に取り残された後のみっともないイヤミをネチネチと長〜く演じる。前半の旦那(と思い込んだ)ヨイショの威勢の良さと後半の対比が凄まじく、しかし人間ってこういうもんだよな〜としみじみと聞き入ってしまうのだ。正直この四人で3000円の価格設定は高すぎるが、最後に一之輔が出てきて締めれば、一席でも1500円くらいは元を取った気分。きつつきで500円くらい。志の吉は今後に期待。朝太は秋に向けてもっと研鑽してください。





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