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2012年04月28日19:32
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八大龍王伝説 【２０１ 第二龍王跋難陀（二十：�后法 粗宛�０５〜】
八大龍王伝説
【２０１ 第二龍王跋難陀（二十：�后法 粗宛�０５〜】
〔本編〕
「このドンク将軍からの書状でますます聖王国の『誘い』の可能性が出てきた。ドンク将軍は始め、バルナート帝國宰相マクダクルスを偽り、偽の書状を我々によこし、我が軍が出兵したところを攻撃するつもりだ！ いやむしろ我が軍が出兵した後の王城を狙う可能性もある。その証拠にマクダクルスからの書状には彼の自筆のサインがない！」カクバージは自信ありげにそう言った。
「逆ではないかな！ カクバージ殿。もしマクダクルス殿からの書状と見せかけるのであれば、サインをしないというのは逆に不自然だ！」戦略担当のソジラールセンがデンガクに対して援護射撃をした。
「それを言ったら、ドンク将軍の書状にも自筆のサインがないぞ！これはどういうことだ！」外交担当の重臣であるシンキの言葉である。
「少し整理してみよう」そう言ったのは諜報担当の重臣ホウライダンであった。
「考えられるのは……。�［省�の書状がマクダクルスから出ている場合だが、マクダクルスとしては、我が國の援軍を求めているので、偽のドンク将軍の書状を出すのは合点がいかない。�⇔省�の書状をドンク将軍が出している場合だが、我が國の出兵は望まないので、やはり偽のマクダクルス殿の書状を出す意味がない。それに自身の書状の内容が簡潔すぎる。そして�，鉢△両豺隋⇔昭圈淵泪�ダクルスとドンク）から出したように見せかけるのであれば、同じ質の紙、同じような時間、同じくサインのない書状など不審なことが多すぎる。これはやはり別々に出したと考えるべきでは……」
「そうだ。ホウライデン殿の言うとおりだ！ それぞれが本物の書状を出しているか、そうでないかは判断つかない。聖王国軍の動きを見てから判断したほうがよい。あるいは第三の書状が届く可能性もある。とにかくまだ決断を出す時期ではない！」『五賢臣』の次席にあたるカクバージの言葉であった。
このことからデンガク、ソジラールは親バルナート帝國派、つまり出兵賛成論者であり、カクバージ、シンキ、ホウライデンの三人は反バルナート帝國派、つまり出兵反対論者であることが分かる。結局、その後ドンク将軍率いる『東軍』の動向が判明した後も、延々と五賢臣は議論を続け、カルガス國が軍を動かすことはなかった。
書状はむろん二通ともドンク将軍の副官であるシェーレが出したのである。この書状の真偽の程が明らかになることは、実はどうでも良かったのである。いろいろ疑念が湧き、論争の種となる要素が散りばめられた二通の書状。つまり�…症�のサインがない。��同じ質の紙。�０貉�間も間があいていない二通の書状の到着時刻とその内容……。といった諸々の要素で議論が紛糾してくれれば良かったのである。
『重臣同士の派閥争い』と『決断できない王』。この二つの要素を持っているカルガス國は、シェーレにとっては非常に御し易い相手であった。重臣達はもはや國のためではなく、相手の派閥を論破するのみだけに執心し、王はそれらの意見を束ねることができない状態なのである。結局、シェーレの予想通り、北東の中堅国であるカルガス國は、今回のソルトルムンク聖王国とバルナート帝國の最終決戦には一切関わってこなかったのである。
引き続いて（ソ�ぁ法�つまりソルトルムンク聖王国の首都であり王城であるマルシャース･グールの様子を語ろう。
聖王国の王ジュルリフォン聖王が、霧の結界が消滅していると知ったのは、一〇月二〇日午前十時頃であった。聖王がこの日の朝起きたのは午前八時。その段階では霧の結界が消滅していることに気づいていなかった。なぜなら、王城マルシャース･グール内は、シャカラの力で霧が元々発生していなかったからである。
霧の結界が消滅していることは、王城の門番によって、王の元に伝えられたのである。そして霧の結界の消滅を知ったジュルリフォン聖王は、直ちに宰相のザッドを呼び出した。
「ザッド！ これはどうしたことか？」
「霧のことでございますか？」
「無論だ」
「小生にお尋ねになられましても……。この霧はシャカラ様が発動させたものですから……」
「そんなことは朕にも分かっている。そちに聞きたいのは、何故、霧が晴れたかというそち自身の見解と、今後どうすればいいかということだ！」
「これは申し訳ございませんでした」そう言うとザッドは細い眼をさらに細めた。
「小生の考えを述べますが、『霧』が、戦争終結前に消滅したということは、何か悪い兆しのように思えます。シャカラ様の身に何かが起きたのかもしれません！」
「何が起きたというのだ！」
「申し訳ございません。それは小生にも分かりかねます。もう少しお時間をいただければ、現地にいる部下と『天耳・天声』を用いて会話することも可能でしょう。――それより王！ 火急に対処すべきことが一つございます」
「この城の守りのことか」
「さすがはご聡明な王。その通りです」
「世辞はいい。それよりそちはその対処方法を考えているのか！ 今、この城には千人に満たない兵しかいないぞ」
「対処方法はないわけではありません。しかし聖王にあらかじめお許しをいただく事柄が一つございます」
「それは何だ！」ジュルリフォン聖王はそう尋ねながらも、直感的にあまり良いことではないと感じ、背中に悪寒が走ったのを感じた。
「魔将軍の軍勢をお借りするのです！」
「マショウグン？！ まさか闇の将軍のことか？」
「御意」
「それはいけない。そのことがシャカラ様の耳にでも入ればただで済まないぞ！」
「生死も分からないシャカラのことより、今は御身の心配が先です」
「お前！ 今シャカラ様のことを『シャカラ』と呼び捨てにしたな……」
「はい！」ザッドは短く答えた。
ザッドの何事にも動じない態度が、矮躯なザッドを大きくみせた。
「シャカラは、この戦争を終わらせると豪語し、聖王国の兵をほとんど引き連れバルナート帝國に進軍しましたが、その途上で霧の結界を消滅させてしまいました。その経緯は分かりませんが、その霧の結界の消滅によって、我が聖王国と聖王は危機に陥りました。このシャカラの体たらくぶりは、神といえども許せない行為であると小生は考えます。そんな神への義理立てなぞ無用でありましょう」
「いやザッドよ。シャカラ様だけではない！ 闇への援軍の申し入れは、我が建国神のウバツラ様。そして他の八大龍王といえども許容しない行為である。朕としては全ての神々を敵に回す行為には、到底承諾しかねる！」
「聖王！ いつ来るか分からないそんな神々の援軍より、確実な闇の援軍の方が頼りになります」ザッドが大声で叫んだ。
ジュルリフォン聖王も普段は静かに話すザッドに、こんな大音声があったかとびっくりした様子であった。
「ジュルリフォン様！ そろそろ我々は八大龍王からの呪縛からは解き放たれるべきです。しかしだからと言って何も闇の力に屈せよといっているわけではありません。天の力と闇の力をうまく利用し、このヴェルト大陸全土をジュルリフォン様のものにするのです。そして、天の力と闇の力のどちらにも関与させない地上界の『人』による支配を確立させるのです！ それができるのは……ジュルリフォン聖王様。あなたしかいらっしゃいません！」
「ザッド。少し考えさせてくれ！」
「はい。しかしお時間はほとんどありません。明日か明後日にも帝國の白虎騎士団か朱雀騎士団が、この王城に攻め寄せてくるかもしれません」ザッドは聖王に深々と頭を下げると、聖王の玉座の間から退出した。
〔参考一 用語集〕
（龍王）
難陀（ナンダ）龍王（ジュリス王国を建国した第一龍王。既に消滅）
跋難陀（バツナンダ）龍王（フルーメス王国を建国した第二龍王。マナシ陣営）
沙伽羅（シャカラ）龍王（ゴンク帝國を建国した第三龍王。ウバツラ陣営）
和修吉（ワシュウキツ）龍王（クルックス共和国を建国した第四龍王。ウバツラ陣営）
徳叉迦（トクシャカ）龍王（ミケルクスド國を建国した第五龍王。マナシ陣営）
阿那婆達多（アナバタツタ）龍王（カルガス國を建国した第六龍王。マナシ陣営）
摩那斯（マナシ）龍王（バルナート帝國を建国した第七龍王。ウバツラを監禁する）
優鉢羅（ウバツラ）龍王（ソルトルムンク聖王国を建国した第八龍王。マナシに監禁される）
（神名・人名等）
ウィップレスト王（カルガス國の王）
カクバージ（カルガス國五賢臣の一人）
ザッド（ソルトルムンク聖王国の宰相）
シェーレ（ドンク将軍の副官）
シャカラ（神としての記憶を取り戻したハクビ）
ジュルリフォン聖王（ソルトルムンク聖王国の聖王）
シンキ（カルガス國五賢臣の一人）
ソジラールセン（カルガス國五賢臣の一人）
デンガク（カルガス國五賢臣の一人）
ドンク（ソルトルムンク聖王国の人和将軍）
ホウライダン（カルガス國五賢臣の一人）
マクダクルス（バルナート帝國の宰相）
（国名）
ヴェルト大陸（この物語の舞台となる大陸）
ソルトルムンク聖王国（大陸中央部から南西に広がる超大国。第八龍王優鉢羅（ウバツラ）の建国した國）
バルナート帝國（北の強国。第七龍王摩那斯（マナシ）の建国した國。金の産地）
カルガス國（北東の中堅国。第六龍王阿那婆達多（アナバタツタ）の建国した國）
（地名）
マルシャース･グール（ソルトルムンク聖王国の首都であり王城）
（兵種名）
（付帯能力名）
天耳・天声スキル（十六の付帯能力の一つ。離れたある一定の個人のみと会話をする能力。今でいう電話をかける感覚に近い）
（竜名）
（その他）
五賢臣（カルガス國の重臣の制度。またはその重臣たちのこと）
朱雀騎士団（バルナート帝國四神兵団の一つ。ナンダが軍団長）
白虎騎士団（バルナート帝國四神兵団の一つ。ライアスが軍団長）
〔参考二 大陸全図〕
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